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約束の時間よりひとあし早く付いたこともあって、広報ディレクターと雑談しているところへ、イアン・ロバートソンが颯爽と現れた。われわれは挨拶もそこそこに、話を聞くことにした。ロールス・ロイスは新型ファントムで世界をあっと言わせ、“世界最高のクルマ”を作るブランドという称号を力強く再度たぐり寄せることに成功したといっていいだろう。そして、いま、ファントムのエクステンディド・ホイールベース(延長軸距型)をリリースして、この東京に持ってきた。スタンダード・ファントムではまだ満足しない超高級指向の顧客へ向けた、パーフェクトなこれは回答といっていいだろう

どうもいまひとつぱとしないイメージをファントムで見事に覆したロールスだが、訊きたいのはこの方向へと導いたのははたしてロールス自身なのかそれとも親会社のBMWなのか、ということだ。

「ティームです。BMWはロールス・ロイスがどういうものか、どうあるべきかということについてよく知っています。100年以上に及ぶ歴史についても深く認識しています。歴史を振り返ってみれば、ロールス・ロイスは大胆に突出した存在となるクルマを幾度も世に送り出しています。ヘンリー・ロイスは優れたエンジニアでもあったわけですが、彼はひとびとの想像を遥かに超える領域に到達するような技術的な冒険と、そして比類ない完成度を幾度となく実現して、ロールス・ロイスに超越的なポジションを築いたのです。われわれBMWとロールス・ロイスの混成ティームは、いまこそヘンリー・ロイスの眼鏡にも適うようなところへとブランドを再構築するべき時だという結論に到ったのです。ファントムはデザイン、運転したときのキャラクター、そして独特のシートポジションに到るまで、ロールス・ロイスでしかありえないクルマです。しかも、そのスキンの下にはアルミスペースフレームの技術が隠れています。巨大なボディと装備を思えば、その軽さは驚嘆すべき領域にあるかと思います。捩じり剛性もフォーミュラワンの水準に達しています。BMWがブランドの価値をよく知っていることを示す例をあげましょう。BMWはロールス・ロイスとは対極にあるミニについても、“ミニ”そのものがすでにブランドなのだと、誰よりも強く認識していました。だからこそ、いまのミニがありえたのです。本題に戻ると、BMW傘下で最初に出た世代のロールス・ロイスにはBMWは深く携わってはいませんでした。エンジンは供給しましたが、設計全体に直接的な関与があったわけではありません。でも、ファントムは違います。これこそBMWとロールス・ロイスの混成ティームによる成果なのです」

訊けばなるほど、と頷かないわけにはいかないのだった。

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