2005年07月22日

10cm=8700円也日常生活


photo by K.AKIMOTO(C)

 1年半ぶりにサンフランシスコにやってきた。古き良きアメリカを残したじつにいい町なのだが、同性愛者(♂&♂)が多い、それがこの町の唯一とも言える困った点である。同性愛者を差別するつもりは毛頭ないが、いたってノーマルなワタクシとしては、カフェやダイナーに入る度にネチッっとした視線に囲まれるのが面倒で仕方ない。しかも、困ったことに、ソッチ方面にはなぜかモテる。綺麗なブロンドのネチっとした視線なら大歓迎なのだが、どこへ行っても、なかなかこちらの都合のいいようにはいかないものだ。

 さて、そんな事はどうでもいいのだが、仕事柄、今回のような諸外国への出張は多い。年に数度は必ずある。むろん、異文化に触れる海外出張は、少なくとも目黒区碑文谷で事務机に座っているよりも遥かにマシである。よって、他人を押し退けてでも飛んでいくのだが、困ったことがひとつだけある。……飛行機だ。それも高所恐怖症だとか、閉所恐怖症などの類ではなく、劣悪なる機内環境が心底嫌なのだ。

 残念ながら、ワタクシ程度の役職では海外出張でもエコノミークラスしか利用できない。これが死ぬほどつらい。考えても見て欲しい、身長176cm/体重93kgである。これがあのエコノミークラスのシートに人並み以上にデカい尻を納めるのだ。その上、アメリカ便は年中満席がアタリマエ。さらにアチラでは肥満を悪徳とする風潮が強いにもかかわらず、エコノミークラスに座っているのは、なぜか似たような体形の方々ばかりとくる。この状態で、運悪くBとかEとかFとか……つまり真ん中の席にでも座らされたら最後、おいそれとトイレにも行けないのだ。これはシンドイ。真面目に辛い。

 そんな理由からか、海外出張では必ずフライトの4時間前には空港に入り、非常口の脇だとか、エコノミークラスの最前列だとか(比較的足元が広い)をリクエストするようになった。当然帰国時にもこのリクエストは必須となり、貧しい英会話能力のすべてを発揮し、文法オカマイナシにまくし立て、常にいいシートを獲得することに全精力を費やしてきたのである。

 ところが、この作戦も近年は事前のシートリクエストが広まってしまい、使えなくなりつつある。残念なことに、こっちの航空券は事前のシートリクエストすら受け付けてくれない格安チケットなので、手の打ち様もないのだ。

 事実、今回もフライトの4時間前に成田に入ったのだが、さすがに夏休みである。もはや通路側も窓側も「空きなし」ときた。ワタクシの落胆の程は想像に難くないだろう。まさにこれは死刑宣告である。繰り返すが、機中における着座位置によっては、便意、尿意、放屁など、人間としてごくごく自然な欲求を、10時間以上、監禁・拘束の上、禁止されるのだ。

 空港のカウンターでガックリと肩を落としたのは言うまでもないだろう……。
 が、なんと今回はちょっと違った展開に進んでいった。悲壮感漂うワタクシの顔を見て、地上係員の御令嬢がこう言ったのだ。「お客様、じつは先月からエコノミープラスと言うシートが用意されております。前後に10cmほど余裕を持たせたシート配置となっており、今なら8700円の追加料金でシートを確保できますが、そちらをご利用されてはいかがですか?」と。

 「溺れる者藁をも掴む」とはまさにこのことである。冷静に考えれば、たかが10cmほど占有空間が広がるだけなのだが、これは効いた。まさに刺さった。むろん「これ幸い」とばかりにそのエコノミープラスとやらを購入したのは言うまでもない。残念ながら、シート位置は中央のB席しか残っていなかったのだが、迷わず買った。 

movie window.jpg
 実際に座ってみると、これがなかなか具合がいい。通常のエコノミーシートであれば、前席のシートバックによって足の組み換えもできないはずなのだが、わずか10cmの拡大でも、自由に足が組みかえられる。然るに、地獄のエコノミークラスにおけるフライトも比較的ダメージ軽く、ワタクシは機中で浅田次郎先生の著書を3冊読破して、今まさにサンフランシスコのホテルに着いたというわけである。

 それにしても、ネーミングもなかなかいいではないか、「エコノミープラス」とは。これが「ビジネス○×」ではいかん。あくまでもエコノミーなのだが、「ちょっとだけ広め」という謙虚な気持ちがいい。絶妙なる価格体系も含めて、まんまと策略に乗った肥満中年はワタクシだけではないだろう。

 さて、ブログという世界中どこに行っても追いかけてくる仕事も終わったので、早速ブロンドの熱い視線を探して、ハンバーガーでも食べに行くか……。

コメント (2)

うえき:

同感です。

先月 渡米した時は同じく「B」席でした。

ですが、両側は小柄な日本人女性だったので助かりましたが、

お隣さんたちは気の毒なので、睡眠時間帯は後ろの通路でストレッチしてました。

UAのマイレッジでプレミアにステイタスがあがると、無料で優先的にエコノミープラスにアップグレードしてくれるようになります。いくら機内食が……でもこれだけでUAを選ぶ理由になりますよね。

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