●世界転戦記☆第153話~白く年老いた表情のフェラーリ
燃えるフェラーリから飛び降りて、私は一目散にコース脇に走っていった。
マシンが爆発するかもしれない・・・・
車内の匂いからしてガソリンが漏れていたかもしれないと思い、マシンから離れると、
「消火器!消火器!」
と叫ぶ友人レーサー。
その間に燃えるマシンは鈴鹿サーキットのメインストレートを前進していた。というのも、通常、レーシングマシンにはサイドブレーキはついていない。本当はギアを1速に入れておけば良かったのだけれど、炎を見た瞬間あまりにもびっくりして飛び降りてしまった。だからマシンはニュートラルの状態で、下り坂であるメインストレートをマシンがすこしずつ前進し、まさに転がる火の車だった。
しかし幸いそこはメインストレート。たくさんの人が迅速に対処してくれて、あっという間にマシンから出た火は消し止められ大惨事は免れた。
ピットガレージに運ばれた赤い跳ね馬は、消火器の粉で真っ白になり、後部が一部焦げていた。火が出た原因は、古くなった管にクラックが入り、オイルがにじみ出たことだった。レーシングドライブで温度が上昇したエンジンやそのまわりの熱さから引火したようだ。
このマシンは、私で4代目の乗り手。代々の素晴らしい乗り手と共に数々のレースで活躍してきた中古のフェラーリなのだ。だからレースなどの激しい走行をしていると、予期せぬクラックなどはあり得る。
私の方はと言えばなんともなかった。マシンを飛び降りた瞬間、猛烈に熱くて背中が燃えているんじゃないか?と思ったが、事なきを得た。しかし、自分の相棒であるフェラーリF355チャレンジが一部分だけでも焦げて白い粉をかぶっているのを見たら、何だか痛々しくて涙が出そうだった。
また、レースデビューして2レース目にしてこう言ったアクシデントを経験し、モータースポーツに挑む以上、もっと気を引き締めて取り組まなければいけないと、深く自省した。
その日の夜は、眠りにつくと、何度でも燃えている夢を見てすぐに飛び起きた。
こうして残念ながら、第2戦はリタイア。英国のレーシングスクールで学んだことを試すことはできなかったが、こういったアクシデントを最初の頃に経験することによって、後の世界転戦では、マシンの異常や不調を敏感に感じ取ることができるようになった。
第3戦は岡山TIサーキット。この地で初めて、レースの醍醐味を知る。
to be continued・・・・
☆今までの連載ストーリー←レースクイーンからレーサーに転身して世界を転戦。目標を達成するまでの「カーレーサー井原慶子すっぴん世界転戦記









