2006年02月11日
地べたのこと
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地べたと云うのは動物や植物のものだと思っている。アリやダンゴムシやコオロギなどの昆虫は地表の上を這いずり回っているし、トカゲやヘビなどの爬虫類も地面を走り回っている。そして犬や猫が地面に座ったり横たわったりしている姿は日常的に見る光景だ。猫がそこいらにうずくまったり寝そべっている姿は良く見るが、私はそれを称して「猫が落っこちている」と言う事にしている。猫が道端で和んでいる風情は、猫が寝ている、でも、猫が横たわっている、でもなく、いかにも落ちていると云う表現が相応しい。だから猫は落っこちているのである。しかし、最近は10代~20代の若者、男ばかりかミニスカの女子高生までもが、平気でコンビニや街頭などに落っこちている。確かに街はコンクリートやアスファルトで固められていて、土の地表が出ているところなど滅多に見られなくなってしまった。それでも街頭や歩道は本来、「表」であって、座ったり寝転んだりする場所ではない。そうした場所に平気で腰をおろし、酷い時は肘枕で寝転んでさえいる。表と家、内と外との区別も見境もなくなってしまったらしい。思えば1964年の東京オリンピック開催を契機として、街の近代化と美化に努めた結果、街はきれいになった。それ以降に生まれた者たちにとっては、表と云えどもきれいな場所であり、座りこむ事にも何の抵抗もないのだろう。だが、昔の時代に育った私たちには決してそれは出来ない。表とは、外とは汚い場所であったからだ。家の玄関を一歩出れば、そこは土の地面であった。つまり地球の表面である(!) 路地も大通りさえも砂利の敷かれた土道であった。冬には霜柱が立ち、梅雨時には水たまりばかりの泥濘と化し、真夏には埃が舞い立った。そこいら中の路地には小便無用の「鳥居マーク」が描かれていたが、そんな事にはお構いなく、おやぢもガキも立ち小便を平気でした。人がするなら当然犬もした。今のように飼い犬ばかりで、しかもその後始末は飼い主が責任をもって致しましょう、なんて時代ではない。散歩の途中で糞をしようが小便をしようが、飼い主は犬のするままに任せて知らんぷりを決め込んでいたような時代だ。しかも飼い犬だけでなく、昔はやたらと野犬も闊歩していたから、なおさら酷い。人や犬ばかりではない。馬糞や牛糞だって幾らでも落ちていた。私が小学校低学年頃まではロバのパンと云う行商があって、本当に馬がパンを積んだ馬車をひいて売りに来た。ロバのパンとは云うものの、実際には馬がひいていたのだ。当然、馬は公共の場所だから我慢しなくては、などとは考えない。生理現象のおもむくままである。蛇足ながらロバのパンは現在も健在だそうである。但し今では馬がひいたりはしていない。各家庭のトイレが水洗化される以前は、そしてバキュームカー出現以前は、8時だよ、全員集合!(懐かしい…)のコントでもお馴染みの、肥柄杓で汲み出す人力が当たり前であった。そうして汲み出した人糞は畑にまく為に集められる。それを肥樽を満載した大八車で牛が運ぶのである。牛糞は砂利道に転々と小山のようにして残される。犬の糞をうっかり踏み付けてしまう事など子供にとっては日常茶飯事であったが、牛糞となるといけない。第一量が違う、量が…。うっかり踏み付けてしまうと、いくら洗っても暫くは運動靴の異臭は取れなかった。表とは、外とは、かくも汚いものであった。そうした環境の中で育った私たちが、いくら時代が変わり環境が変化したとて、外で座ったり出来ないのはむべなるかな…であろう。私は今でも道、それが歩道であっても、の端っこは歩きたくない。端ほどそうした糞や小便や投げ捨てた吸い殻や噛み捨てたガムや生ゴミ系の落ちている確率が高いからである。いや、そういうものだと思って育って来たからである。だから塀にベタッと寄りかかって、地面にパンツ一枚に等しい状況で座り込める今どきの女子高生の感覚が理解出来ないのだ。汚物も汚水も街中では見る事のない現在の生活は、それはそれで快適だしありがたい。だがたとえ汚くとも、私が子供の時代は自然と共に暮らしている実感があった。今の暮らしにはそれが稀薄である。何だかマトリックスの住人のような錯覚さえ覚えそうな時がある。地べたどころか頭上を見渡してもコンクリートの人造物ばかりがそそり立っている。空は遠く小さい。大空の下でのびのびと深呼吸が出来ないと、時に息が詰まりそうな気さえしてしまう。幸い、私は山にも海にも日常的に接する事の出来る場所に住まわっている。それでも散歩道に高層マンションなどが新たに出現すると圧迫感を感じてしまう。これではとても東京の都心になど住めそうもない。馬や牛とは暮らしたいとは思わぬが、犬や猫の居る環境の中で暮らしていたいとは思う。第一、そうした環境でなくてはロードスターに乗っても気分が良くない。あ、オープンカー、今は持ってなかった…。
投稿者 平野克巳 : 2006年02月11日 17:49
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