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2006年02月14日
本のこと
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私がモータースポーツ専門雑誌に興味を持った初めは小学校低学年の頃だったように記憶する。通っていた耳鼻咽喉科医院の待合室で、大学生くらいの若者が平凡パンチを読んでいて、その特集グラビアに世界のスポーツカー、クラシックカーが掲載されていた。私はクルマが大好きであったので、早速母にあの本を買って欲しいとねだったところ、あの特集のページだけ切り取るなら買ってあげても良いと言われた。当時の事とて女性のヌードグラビアやSEX関係の記事ばかりの本のように母には思えたに違いない。結局その本は買っては貰えなかったと思う。それから暫くして、近所の行き着けの書店(文具店、模型店も兼ねていた)で初めてカーマガジンと云う雑誌の存在を知った。現在、ネコ・パブリッシングから刊行されているカーマガジンではなく、ベースボールマガジン社から刊行されていた初代カーマガジンである。それは1966年のタルガフローリオがリポートされた号であった。モノクロのグラビアで見るポルシェ906に魅了された。そして、何よりもそのポルシェ906が走る光景が私の琴線に触れた。牧場の柵のようなものを背景とした牧歌的背景の中を、最新のレーシングカーが疾駆する光景に心震えた。何て美しい情景なのだろう。まるで映画の中の美しいシーンを切り取ったように、そのグラビアは私に新鮮な感動を運んで来てくれたのだった。すっかりそのカーマガジンに魅せられた私は、母を拝み倒して翌月から毎号、定期購読するようになった。もうそれからと云うものは発売日が待ち遠しくてたまらなくなった。学校から帰るや否や、ダッシュでその書店へと走った。眼鏡のおばさんに「来てるわよ~」と言われる瞬間の、どうにも興奮して高揚が止まらぬ気持ちは今も忘れない。袋に入れて貰って後生大事に小脇に抱えて家まで走る時の、早く開けて読みたくてたまらない逸る気持ち。今月はどんなだろうと想像するだけでアドレナリンが全身を駆け巡った。ルマン24時間のフォードGTとフェラーリ330P4の激闘、その背景にチラチラと写るマーコスミニへの興味。ニュルブルクリンクのジャンピングスポットで宙を舞うジャック・ブラバムのブラバムF1。ホンダRA273の衝撃デビュー。銀と黒のベルのジェットヘルを被ったギンガムチェックのカッターシャツ姿のリッチー・ギンサー。いかにもイタリアの伊達男を彷佛とさせる風貌のロレンツォ・バンディーニのポートレート写真。赤いロータスでインディ500を制したジム・クラーク。オートマチック・トランスミッションと可変式フリッパーで話題をまいた白い怪鳥シャパラル。現在へと続く私のモータースポーツへの思いの原点がこのカーマガジンには詰まっていた。
そして1968年のある日、いつものように書店に駆け込んだ私は、カーマガジンの廃刊を知った。「なんか入って来なくなっちゃったのよねえ。本、なくなっちゃったみたいよ」 眼鏡のおばさんの声が私の頭の中で虚ろに木霊していた。ショックだった。あんな素敵な本がなくなるなんて…。その時、私は初めて売れないモノはなくなる、と云う世の中の商売の道理を知ったのだった。だが捨てる神あれば拾う神あり…喩えが違っているような…である。今度はオートスポーツと云う専門誌を知った。そんな訳でオートスポーツ誌は1968年から1980年代まで毎号欠かす事なく購読した。しかし時代が情報のスピード化を求めるようになり、それに対処する為にオートスポーツも月2回発行となると、内容が稀薄になりつまらなくなった。そして遂には購読をやめてしまったのだった。私はオートスポーツイヤーと称したイヤーズブックも大好きであったのだが、こちらのほうは私が買うのをよしたのではなく、本自体が発行されなくなってしまった。最も後期のものは内容自体も偏ったものとなり面白くなくなっていたのだが。10数年前まではオートスポーツ誌も資料として大切に保存していたのだが、転居を繰り返しているうちにやがて邪魔になって古書店にまとめて引き取って貰い今はない。1970年代からずっと購読したカーグラフィックも同様である。
本と云うものは、取り分け雑誌はたまると重くガサばるものである。一時は書庫を作ったり、一部屋をまるまる本の保管庫にしたりもしたのだが、古い借家で一部屋の床が抜けて以来、雑誌を後生大事に維持保管する事はよしにした。それでも文庫本や雑誌の類いは気がつくと収まりきらずに溢れていたりする。必要と思われるページのみ切り取ってファイリングするなどを試みた時期もあったのだが、世の中は意外と予想に反していて、捨ててしまったページがあとから必要になったりするのが常であった。なので馬鹿馬鹿しくなってファイルもやめてしまった。そんな訳で、最近の私は仕事の度に資料を求めては右往左往している。MC編集部に「資料庫になにそにの資料が掲載された本ない?」などと助けを求めては鬱陶しがられている日々である。だが模型も本も個人で全ての要を成すほどに完結させるのは容易な事ではない。そのくせ資料に頼っては不明点をグダグダとボヤく日常である。「分かんなきゃ想像でやっときゃいいぢゃん」古くからの模型仲間のそうした言動が心底羨ましく思える今日この頃ではある…。
投稿者 平野克巳 : 2006年02月14日 22:20
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