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初代編集長 平野克巳の「猫の耳に大仏」湘南鎌倉便り


モデルカーズの生みの親、平野克巳氏による目からウロコの模型小噺。さぁどんな話が飛び出しますか。乞うご期待。

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2006年03月15日

昨今のクルマ事情に疎い


机の中にこんなん転がってた…そんなんばっか後生大事にとっとくんぢゃねーよっ!


 自動車がステータスでなくなって既に久しい。今や小型セダンかミニバン、あるいは軽四輪ばかりが幅をきかせている時代だ。クルマはテレビや電子レンジと同じ家電扱いとなりつつある。スポーツカーなぞ遠い追憶の彼方の存在でしかない。ならばクルマの模型はどうなのか。家電品のプラモデルなど余り欲しくはないしテンションもあがらない。だからすっかり低迷を続けている。プラモデルにステータスを求めるなら昔のプラモデルにしかない時代だ。セドリックやクラウンがステータスであった時代。鳥の羽根の着いたチロルハットとツイードのオドジャケットの山村 聡が「いつかはクラウン」などと言ったのは何時の事だったろう。大企業の役員クラスでないと乗れない高級車は確かにステータスではあった。誰もがそんな社会的地位と自分とは無縁と考えていた頃、やはりクラウンは生涯乗る事の出来ないクルマだと漠然と思っていた。そう云う意味においてステータスであった。ヤマダのセドリックや三共のクラウンとはそんな時代のプラモデルだった。やがてスバル360やパブリカ700、カローラ1100やサニー1000が登場し、もしかして我が家にも自家用車がやって来るかもしれないと淡い願望を抱くようになった時代 。夢がちょっとだけ現実味を帯びただけ、むしろステータスとなった。アオシマやオオタキのパブリカ、三共1/32のサニーなどはそんな時代のプラモデルだ。やがて国産車が日の出の勢いで世界を席巻し始めた時代、自動車の社会的地位は公用、企業を超え、更には一家の自家用車である事も超え、個人の為のプライベートカーにまで到達した。バンダイ1/20セリカGTやニチモ1/20マーク2GSSなどはそうした時代の産物だ。世の中が実態のない好景気バブルに躍り、フェラーリやランボルギーニが社会的勝者の象徴となった時代、エキゾチックカーはステータスとなった。マルイ1/24ランボルギーニ・カウンタックLP400などはそんな時代のプラモデルだ。その後、バブルがはじけて世情は混迷した。今もその延長線上のままのような気がする。昨今はクルマもステータスに彩られるような存在ではなくなってしまい、その分、古いクルマにそれを求める傾向が強まったように思える。スカイラインGT-RだのフェアレディZだのが改めて脚光を浴びるような時代だ。それらのキットを求めて一時は昔のプラモデルに人気が集中したが、最近では1/24スケールでそうした所謂“国産旧車”が次々と新しいキットとなって登場して来ている。それを喜んで良いものやら悲しんで良いものやら、思いは複雑で微妙ではあるのだが、少なくともヴィッツだマーチだイストだワゴンRだムーヴだ…などが店頭で群れを成しているよりはナンボかましのような気はしている。
 ところでその昔、街中を走る自動車の車名が分からなくなったら老人だと思っていた。自分にそんな事は起こらないとも信じて疑っていなかった。だが最近分からない…昨今の大衆セダンやミニバンは見分けがつかない。更に弱った事にはリアに車名のエンブレムさえないものが多い。メーカーズエンブレムとて単純にトヨタ、ニッサン、ホンダ、ミツビシ、マツダ、スズキ、ダイハツの時代ではない。やれネッツだのレクサスだの一寸気を抜いていると見慣れぬものが増えていたりする。更にありゃ何だあ? などとよくよく見れば韓国製だったりと、すっかり浦島太郎状態である。これぢゃあ、うっかり事件でも目撃してしまったらエラい事になってしまう。え〜っと白っぽい、うしろが角張ったクルマでした…自動車を生業にして生きて来た人間が、警察や報道の聞き込みにこんな証言しか出来なかったら恥曝し以外の何者でもない…。嗚呼、どうか事件の目撃者になぞなりませんように…。もう暫く前の事であるがトヨタ・マークⅩが発売になった時、自動車屋(ジドウシャ屋の、である)の友人とこんな会話を交わした。「あれってマーク・テンなの、それともマーク・エックス?」「知りませんよ、そんなこと」「例えばX型サブフレームの補強があるとか…」「さあ、最近のクルマのことは…」「何でいきなりツーからテンに飛んじゃったんだろうねえ」「RA273からいきなりRA300になっちゃったようなモンぢゃないんですか」…この会話の相手である自動車稼業の男(彼の名誉の為に実名は伏せる。決して某シゲタ博士などと暴露したりは…)は私よりもひと回りほども若い。しかも自動車業界人の現役である。86レビンでサーキットを走らせればブッちぎりに速い男である。でも最新自動車事情にはとんと興味がない。そんなもんだよね。一線から身をひいてはや10年、歳だって50過ぎのロートルだよ、オレは。ヤツが知らないんだからオイラが知らなくたって、ぢえーんぢぇん不思議はないよねえ〜、と妙な納得の仕方をする私ではあった…。しかし、だからと言って、自分の時代、自分の守備範囲と云う殻に閉じ篭る訳にはいかない…とか言いつつ、だって仕事なんだも〜ん、の苦しい言い訳と共に古典キット倶楽部の世界に今日も逃避する私ではあった…。だめぢゃん。

投稿者 平野克巳 : 2006年03月15日 16:18

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