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2006年10月27日
昭和プラモデル物語(12)
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国産プラモデルにおけるモーターライズ戦車の第1号は三和模型のM-4タンクであると言われているが、そんな立派で高価な戦車プラモなどとてもでないが手の出なかった幼稚園児から小学校低学年のプラモ少年たちにとって、最もポピュラーで懐かしい戦車のプラモデルは三和のHOサイズ、M(マイクロの略)タンクシリーズではなかったか。三共ピーナツと並んで、国産プラモデルの最も初期の時代を飾った駄菓子屋プラモの典型として、国産プラモデル史を語る上で忘れてはならない存在であろう。今で言えば幼児がトミカのミニカーを欲しがるような感覚で、当時の子供も三和Mシリーズのプラモデルを欲しがった。だが日常的なお小遣いレベルでは中々買うことの叶わなかったのがこの種のプラモデルであって、やはり両親などとどこかに出かけた際にねだって買って貰うプラモデルだったような認識が残っている。ボクの場合もそんな折りに買って貰ったことが多かったと記憶している。
母に連れられて時たま浦和駅前まで買い物に行った。何か特別な用事があったものなのか、近所では済まない買い物があったものなのか、その理由は今となっては皆目見当もつかない。とにかく天野屋でないところでプラモデルを買って貰えるかもしれない、ただそれだけでもう有頂天であったし、ボクの興味はその一点のみに集約されていた。国鉄浦和駅(現JR)周辺は県庁所在地であっただけにとても大きな繁華街で賑わっていた。その近辺でプラモデルを扱っている店鋪には模型店、玩具店、書店があった。しかし、母の買い物に着いて歩いていると、それ以外にも思わぬところでプラモデルと出会った。とても地味な店構えの手芸用品店もそんな店鋪のひとつであった。ガラスの引き戸を入るとガラスケースが数本あるきりで、何ともひっそりとした店内では中年の奥さんがひとりきりで対応していた記憶がある。そしてそこにまるで申し訳程度にプラモデルが置かれていた。それは小さな戦車のプラモデルで、あとになって気付いたことだが三和模型のMタンクシリーズであった。その時、Mタンクのキットが幾つ置かれていたかは思い出せないのだが、確か数個程度しかなかったように記憶している。ただ、その時、ボクの目を惹いていたのはやはり売り物の、モールで作られた小鳥の人形であった。黄色いカナリヤだか何だか、やはり幾つかがボール箱に入れられてケースの上に置かれてあったのだ。未だ小学校低学年であったボクである。正直、小鳥の人形も欲しいと思い、戦車のプラモデルと天秤を計って暫し迷った。それでも結果的にボクは三和のMタンクを選んだのだった。やはりプラモデルに優る物欲の対象はなかったのだろう。そして選んだのがT-98戦車であった。真四角で車体全体を覆うほどにターレットの大きいのが個性的で惹かれたのかもしれない。これがボクが三和のMタンクシリーズを知った最初であった。三和Mタンクシリーズはのちには車体裏側から木ネジで止める接着剤不要のキットとなったが、当初は通常の接着組立方式であった。特徴は車体下部に車輪4個が付いていて、コロ走行するようになっていたことだが、このスタイルがオーストリアのロコ製品の模倣であることを知るのは、もっとずっと後年になってからのことであった。それどころかシリーズの幾つかはモデルそれ自体がロコ製品のコピー(デッドコピーではなく、ロコからコピーマシンで倣い製作したもののようで、大きさ、モールドも異なる)でもあった。だが、その時点ではロコの存在そのものをボクは知らない。
今見ると酷く稚拙なモデルであってどう贔屓目に見ても玩具レベルでしかないのだが、当時のボクにはそれまでになくリアルな戦車模型として映った。キャタピラ(ボクらは履帯のことをそう呼んだが、実は固有商品名である)と転輪が一体成型なのもむしろ精密に思えたものだ。こうして三共のピーナツシリーズと共に、三和のMタンクシリーズはボクのコレクションアイテムの筆頭となったのである。ただこのシリーズはそれほど沢山は集められなかった。もちろん、浦和駅周辺の手芸店で買ったMタンクはこのT98ひとつのみで、その後、天野屋にも入荷するようになったので、あとはもっぱら天野屋で買った。ただボクの生活圏ではこのキットは50円で売られていたから、やはり一寸ばかり高価に過ぎたのである。そけだけに頻繁には買えなかったので、やがてそこかしこの店頭から姿を消し始めると、それと共にボクの熱も冷めていったのだった。
その後数年して、ボクはロコの虜となるのであるが、当時ロコは更に高価で、それこそ数えるほどしか手に入れることが叶わなかった。その代償としてロコのコピーであるマルサンHO米独機甲師団シリーズにも手を出したが、マルサンのものはロコに比較するとモールドが粗雑で切れ味も悪かった。その頃にはとうに三和のMタンクシリーズのことなど忘れてしまっていたが、数十年後の現在、ロコと三和のHOタンクには格別な思いがやはり残っている。
(続く)
投稿者 平野克巳 : 2006年10月27日 23:39
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