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2006年12月05日
昭和プラモデル物語(22)
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ボクが人生で初めて買ったレコード(勿論CDではない訳で…)はザ・ベンチャーズの10番街の殺人であった。11歳の時である。45回転EP盤シングル、通称ドーナツ盤と呼ばれたもので、いわゆる赤盤であった。それ以前はソノシートを良く聴いていた。ちなみにソノシートとは朝日ソノラマの商標で、一般名称はフォノシートが正しいそうである。ソノシートは本になっていて写真やイラスト、物語や解説と共に楽しむ形態が主流であった。書店では忍者部隊月光を買ったのが唯一だが、スーパー(自宅の近所に初めてスーパーマーケットが出来た)のワゴンセールでは、映画名曲集だとか西部劇映画集、戦争映画集、世界のポップス集などを買った。スーパーのレジ近くのワゴンで売られていたのだが、いわゆる捨て値サービス価格だったから買って貰えたのだと思う。既にレコードの時代となって、ソノシートが衰退しつつあった頃なのだろう。このソノシートによってボクは北京の55日、バッファロー大隊、禁じられた遊び、地上より永遠に、海ゆかば、逃避行など、アメリカンポップスから映画音楽や軍歌まで幅広い音楽に親しむこととなった。そしてソノシートを聴いた一番最後は、月刊モーターサイクリストだったか月刊オートバイだったかの付録についていた、ヤマハXS1などの国産ナナハンクラスのエグゾーストサウンド集だったと記憶している。現在では書籍のおまけもCDが当たり前のご時世であることを思うと、まさに隔世の感がある。
さて、ザ・ベンチャーズによってもたらされたエレキサウンドのブームは、当初インストルメンタルが主流であった。ベンチャーズやスプートニクス、国内では寺内タケシとブルージーンズなどによって“テケテケ”サウンズは流行り、やがてビーチボーイズの登場によってひとつの頂点を極める。それはビートルズとローリングストーンズの英国ロック二大巨頭出現以前の創世記であった。それまで精々が青春歌謡どまりであった若者の音楽は、ロックの台頭によって大きくはじけ土着文化から洗練されて垢抜けたものとなったのだ。スロットレーシングが突然のように出現し大ブームとなったのはまさにそんな時代であった。専用に設えられたサーキットで1/24スケールのモデルカーを走らせて遊ぶスロットレーシングは、アメリカのレベル社によって日本にもたらされ、その国内代理店であった郡是産業との共同事業によって一大ブームを現出させた。スロットレーシングブームの波はある日突然のようにやって来た。そして朝目覚めるとまた新たなサーキット場がひとつ街に増えている、まるでそんな感じであった。1965年/昭和40年初夏のことである。
ボクはそのブームの出現を多分ボーイズライフで知ったのだと思う。そしてやってみたくて行ってみたくてたまらず父に懇願して東京のサーキットへと馳せ参じたのだった。初めて行ったのは後楽園だったろうか。その後、東京タワー、有楽町交通会館などに何回も通った。どこのサーキットだったかは覚えていないが、フロアのディスプレイにスポットの照明を浴びてIMC1/25フォードGTの完成モデルが飾られていた。前後カウル、左右ドアが全て開け放たれており、コクピットやエンジンがまるで実物のように再現されていた。そんなプラモデルを見るのは初めてであった。驚愕し、そして感動した。その時、フロアにはパイプラインやウォークドントラン、ダイヤモンドヘッド、キャラバンなどがBGMとなって流れ、若者文化最先端のただ中に居るのだということを全身で強く感じ取っていた。だからあのスロットレーシングのブームを回想する時、ベンチャーズのサウンドは無くてはならないものとなり、今ではまるでサーキット場のテーマ曲であるかのようにさえ感じている。そしてボクが初めて買ったスロットカーはコグレ1/24ロータスフォードで、40年以上を経た現在にあっても「マイフェバリットワン」であり続けている。
もう今では若い頃のようには音楽に熱中することもなくなってしまったが、単にオールディーズで懐かしむというのとは違って、輝く一瞬の煌めきにも似たスロットレーシング場の賑わいと華やかさを思い出す時、頭の中にはあのベンチャーズの旋律が自然と溢れ出す。エレキギターとスロットレーシングカーがもたらした'60年代最大の若者文化は、大きなうねりとなって日本列島を北から南まで全てを覆い尽した。しかし、それはまるで津波のように一瞬で通り抜けて行ってしまった。余りにも呆気無い終焉、当時を知る者にはそんな感傷ばかりが残っている。ボクに残されたのは幾つかのシャシーとモーターとボディだけだった。もう二度とサーキットを疾走することもないモデルカーたち。それでもなおボクらはスロットカーを愛して止まない。あのベンチャーズのメロディーとリズムと共に。(続く)
投稿者 平野克巳 : 2006年12月05日 19:50
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