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初代編集長 平野克巳の「猫の耳に大仏」湘南鎌倉便り


モデルカーズの生みの親、平野克巳氏による目からウロコの模型小噺。さぁどんな話が飛び出しますか。乞うご期待。

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2007年03月20日

昭和プラモデル物語(34)




 今では遠い追憶の彼方となってしまったスロットレーシングが大ブームとなったのは、今を去ること40余年の1965年/昭和40年のことであった。あの時分、小学校6年生であったボクも今では50を超えた立派なオヤヂとなってしまった。それでもあのブームを、そしてあのモデルカーたちを忘れられないのは何故だろう。今にして思えば大したメカでもない「ちゃちな」玩具でしかなかったのだが、そのシンプルさゆえに直情的に遊び心を揺さぶったのかもしれなかった。とにかくストレートにダイレクトに興奮と感動をもたらしてくれる遊びであったように記憶している。
 あの時代にスロットレーシングのモデルカーキットを買うことは、今の感覚で言えばラジコンモデルを買うにも等しく、おいそれと手の出る代物ではなかった。ボクが最初に手にしたのはコグレ1/24ロータスフォードであったが、その後、タミヤが参入するとタミヤのキットも随分と買った。最初に買ったのは恐らく1/24ロータス30であったろうと思う。ロータス30などという実車の存在は全く知らなかったが、モデルを初めて見た時には「カルチャーショック」のような衝撃を受けた。こんなにも地を這うような「ペッタンコ」なクルマがあるのか! まるでSF漫画に登場する未来社会のクルマのように思えた。何とカッコイイことか。一瞬にして魅了されたボクではあった。しかし、それはボクのみならず、スロットレーシングファンの多くがそうであったようだ。とにかく当時のベストセラーとなったやに聞いているが、実際、発売になって直ぐ
馴染みのサーキット場に行くと、8コース全部にこのロータス30が走っている、なんてことさえあった。コーナーでそのままシューンと真直ぐコースアウトしてしまうマシーンも多かったけれど(当時を知っている向きならご理解いただけよう…) 当時のこととて走っているのは大抵がクリーム色の車体であった。要するにモールド色のままということだ。当時はそうそうボディを塗装したマシーンはサーキットに走ってはいなかった。それにコクピット横のボディに貼られたコンペティションナンバー(実車に則したものを貼る感覚など無かったから、みんな各々の好みの番号を勝手に貼っていた)のサークルに、どれもが3箇所くらいの切れ込みが入っていて、それがちょっとカッコ悪かった…。
 やがてブームは終息し、ボクの手元にはくたびれ果てたロータス30が残った。ボクは他にもタミヤのキットはエルバマクラーレン、フォードGTスパイダー、フェラーリ330P2、ランチャフェラーリ、プリンスR380も買ったが、何故かロータス30だけがずっと無くならずに手元にあった。その後、随分と時を経てからモーターライズのロータス40も手に入れたが、やはりロータス30にこだわりがあったのか、改めてボロくなったロータス30のリメイクを一度敢行している。スケールモデルに手直ししようとして、上げ底のコクピットを切り取り、リアカウルのエアファンネル部に穴を開けたりした。しかし結局は完成することなく放置されてしまい、現在もそのままの醜態を晒している。今となっては後悔しきりである。こんな半端に手を加えるなら、そのままにしておけば良かった…どうにかダイキャストシャーシもFT-36モーターも残っているのだから。この状態を今度は逆に当時のオリジナルに戻すにはえらい手間である。なにしろタミヤのスロットカーは現在では超プレミア価格となってしまっていて、とてもでないが新たに入手するなど困難の極みである。取り分け人気車種のロータス30は「お小遣いで手に入る」ような代物ではなくなってしまった。
 ボクは仕事においても残念ながら実車のロータス30には巡り会えなかった。シャパラルの2シリーズの現存車は全モデル見ているが、それでもなおロータス30を見られなかったのは心残りになっている。まあ今となっては乗ってみたいとは余り思わないから、タミヤのモデルカーで充分である。しかし、この思いだけは未だに叶わない。仕事上の都合は別として、ボク個人の物欲だけで物を申せば、スロットカーはタミヤ1/24ロータス30だけで成仏してしまうだろう。それほどに願望の強いモデルなのである。仕事の上でもあちこちでニアミスしているから、なお一層のこと悪い。かくも永くフラストレーションを抱えていると健康にも障る。心が病める身が細る…「たかが玩具で何言ってんだか…」 恐らく世の女性ならそう言ってせせら笑うであろう。かくも男とは大人になれない生き物である。少年時代の思いを何時までも引き摺って生き続ける生き物である。ふと冷静になり客観的に見つめると「煉獄に捕われた哀れな罪人」のようにさえ感じる。こんなんでいいのか、自らにそう問いかけてみる。でも玩具にこだわり続ける人生なんて、おばかな生きざまもあっても良かろう。そんな風にしか生きられないのなら、真実一路、ただ突き進むのみである。(続く)

投稿者 平野克巳 : 2007年03月20日 12:57

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