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初代編集長 平野克巳の「猫の耳に大仏」湘南鎌倉便り


モデルカーズの生みの親、平野克巳氏による目からウロコの模型小噺。さぁどんな話が飛び出しますか。乞うご期待。

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2007年04月10日

昭和プラモデル物語(37)




 大きなことは富の象徴であり贅の極みと考えられていた時代、やはりプラモデルにおいても大きなキットはスペシャルでデラックスな存在であった。100円のキットをようやくの思いで手に入れていたような時代であったから、巨大で高価で贅沢なキットには溜め息が出るほどに憧れた。そうしたキットの筆頭にあったのが日本ホビー1/250戦艦大和だったろう。なにしろ「世界最大の戦艦模型」のうたい文句には抗しきれない魅力があった。プラモデルでありながら全長は1mを越す巨大さである。手の平に乗るような大和しか知らぬ身にとって、それは想像を絶する未知の領域であった。少年雑誌の広告や紹介欄でその存在を知って以降、ともかくその大和が欲しくて仕方が無かった。勿論、簡単に手に入れられるような代物ではなかった。近在の駄菓子屋や模型屋では見ることが出来ず、街の大型模型店でないと置いていなかった。しかも決して手の届くようなところには陳列されていなかったから、どうしようもなく遠い特別な存在でもあった。箱もその頃の一般のプラモデルとは意匠を異にしており、まるでマニア向けの無線操縦用の飛行機や艦艇のようなパッケージであった。キットに対する夢と期待は嫌がうえにも脹らんでいった。
 国産プラモデルの草創期、日本ホビーは子供向けというよりは大人向けの、マニアックなイメージの強いメーカーであった。同社のマンモス戦車などは防衛庁協力による実車取材を売り物にしていたし、九七式中戦車も「当時の三菱重工業主任設計技師の協力を得て」などと、取り分け考証の確かさが強調されていた。こうした文言は当時の純真な子供たちにとっては極めて説得力が高く、そのまま鵜呑みにしては「日本ホビーを殊更神格化」していった。この1/250戦艦大和が登場した際のメーカーの言を借りれば、

本当に正確な大和の模型が欲しい。川や湖で安心して無線操縦出来るプラの大和はないかとの御要望に応えて当時の造船技術将校各位の御指導のもとに、世界最大の戦艦模型が出現しました!!

と謳われ、更には、

理想としては、1/100でなければ模型としての精度は、出せない…。しかしそれでは、大和の全長は、263メートルだから、なんと2.63メートルの模型になってしまう。理想としても、現実にはどうにもならない。そこでしかたなく1/250にとどめましたが、それでも全長1.05メートルの大型になりました。全型に使用された鉄の重量4.5トン。プラ模型としては、外国にも例をみない世界最大のものと確信します。

と自信満々なアピールが続いた。しかも「ダンゼン組立て易い! 小学生にも充分組立てられます」の但し書きも添えられていたから、このセールストークにプラモデル少年の誰もが夢中になった。
 ラジコン搭載可能なのが最大の見せ場であるのは当然のこととして、他には測距搭(測距儀)が回転し、サーチライトが点灯するのも特徴となっていた。動力用にはマブチ55モーター2個、測距搭旋回用にはマブチ35モーター、電池は単1を4本使用する。当時の価格は2,900円。銀メッキ版もあってこちらは3,700円であった。実際にキットの蓋を開けてみると、一体成型の船体の大きさに度胆を抜かれるが、艤装パーツ自体は意外とシンプルで確かに組み立てはさほどには難しくなかった。だがパーツ精度は決して良くはない。小さなパーツは折れにくいポリプロピレン製であるが、その為に塗装が出来ず困ったことを昨日のことのように記憶している。後年、童友社で再販された際にはポリプロピレン製パーツが全てスチロール成型に変更されたので、むしろ作る際には再販キットが適している。尤もモールドが変更になっているので、日本ホビーのオリジナルにこだわる向きには残念な部分かもしれない。主砲と副砲の砲身基部を被う防水カバーは、当時、艦艇のプラモデルを作る際には「やってみたいこと」の際たるものであったが、パテなどの知識が無かった当時のこととて、半永久的に乾燥硬化することのないプラスチック粘土で仕上げたものである。弛みや皺も再現出来てボク自身は大満足であったのだが、いつまでもペトペトした感触のままなのには閉口した。その後、最大の戦艦プラモの地位は日模1/200の大和に奪われたが、当時を知る向きにとっては日本ホビー1/250の大和により強い愛着を現在でも感じてしまうのではないだろうか。(続く)

投稿者 平野克巳 : 2007年04月10日 14:37

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