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初代編集長 平野克巳の「猫の耳に大仏」湘南鎌倉便り


モデルカーズの生みの親、平野克巳氏による目からウロコの模型小噺。さぁどんな話が飛び出しますか。乞うご期待。

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2007年06月12日

昭和プラモデル物語(46)




 5月に「王様のアイディア」が廃業閉店した。最近ではその名を知る向きも減っていたかもしれないが、かつてはユニークでナンセンスな雑貨を売り物にしたギフトショップとして広く親しまれていた。未だ「おもしろ○○」とか「キモカワイイ」などといったフレーズが巷に氾濫していなかった時代には、悪戯っぽく茶目っ気のある「おちゃらけ感覚」を一手に担う商品構成で、一部の遊び心に長けたマニアには人気のショップであった。1965年/昭和40年から東京駅八重洲地下街に店鋪があって、ボクも少年時代からつい最近までそのショーケースに陳列された「おもしろグッズ」を冷やかしで眺めるのが好きだった。だからといって買ったことはないので、ファンを自認して今回の閉店を惜しむ資格などはない。改めてホームページを検索してみると、廃業というよりは業務形態の転換であるらしく、今後はお洒落なサングラスを取り扱うショップへと生まれ変わるらしい。大体からしてこの企業の母体は金鳳堂であるのでそれもむべ成るかなである。そういえば金鳳堂の名も久し振りに聞いた気がする。その昔には「眼鏡の金鳳堂」のTVCMを良く目や耳にしたが最近ではすっかり忘れていた。こんな時、昭和という時代が確実に遠くなりつつあることを改めて実感する。
 王様のアイディアで扱っていた商品で最も印象に残っているものがふたつある。ひとつはフランケンシュタインの人形。電動仕掛けでスイッチを入れるとズボンがストッと落ち、フランケンが恥ずかしさに顔を真っ赤に紅潮させるという玩具だ。そしていまひとつは小銭のコインを置くと、箱の中からゾンビの手が出て来て小銭を引き込んでしまう貯金箱。名称は「ミステリーバンク」だったろうか。お金を置くとスイッチが入り、内蔵するメカがやおらジージーと音を立て始めたかと思いきや、いきなり片手がカパッと飛び出し小銭を持ち去るギミックが面白かった。現代では子供向け玩具であっても吃驚するようなメカが珍しくないが、その昔はゲームといえばボードゲームくらいだったので、「電動からくり」にはとても興奮したのであった。このミステリーバンクは王様のアイディアの定番商品として随分と永く売られていたように記憶する。ボクが大人になってからも「へええ~未だ売ってるんだ」と感嘆したことを懐かしく覚えているからだ。ただ、それも貯金箱の衰退と共にいつからか消えてしまったらしい。そして、ミステリーバンク(?)がそっくりプラモデルになったのが、有井製作所/アリイのゴーストボックスだ。このキットが一体いつから在ったかは覚えていないが、これもやはりロングセラー商品で永く市場に留まり続けていた。それだけにボクにとってはアリイといえばこのキットを連想するほどに強く印象に残っている。まあ当時から「色物、際物」の類いとしてプラモデルファンからはそっぽを向かれ、何だか良く分からないけど孫のお土産にプラモデルを買っていくお爺ちゃんやお婆ちゃんからさえも敬遠され、ずっとプラモデル界の異端として四面楚歌の中に置かれ続けたキットである。
 キットは木箱の中からミイラのような左手が出て、台に置かれたコインをかき込んでしまうというもので、そのギミックの仕掛けはゼンマイ駆動による。王様のアイディアでもロングセラー商品となっただけに、このアリイのプラモデルも定番商品となったようで、随分と永い期間、模型店や玩具店の店頭で見られた。のちには新設計のモーターライズ版も登場するなど、極めて息の長いプラモデルキットとなった。
 ミステリーバンクの最も古いものは本体がブリキ製で、コインを掴んで取り込んでしまう手が仄かに光る蛍光樹脂製だったような記憶があるが、既に遥か昔のことなので判然とはしなくなってしまった。そのアクションが面白いと思えたのは多分小学生の時分で、その後は王様のアイディアで見かけても先に書いたように「今も作られている」ことへの驚きしか感じなかったように思う。そしてアリイのゴーストボックスに対する思いもまた似たようなものでしかなかった。取り分けスケールモデル以外は「真っ当なプラモデルではない」と思い込んでいた時代には尚更であった。しかし年齢と経験を重ねることで精神的な余裕が出来た結果なのか、思考と感性がより柔軟になり許容の度合が増すにつれ、こうしたキットも面白いと思えるようになった。ただ、それをして人には「変なモノ好き」とか「色物マニア」とか呼ばれる。まあ、そうかもしれぬ、と独りごちつつ、人生型にはめたら詰まらんでないの、世の中には妙ちきりんなものや変てこなものだって在っていいのよ、それが潤いってものぢゃねいの、などと自ら納得してもみる。王様のアイディアは無くなったけれど、世の中からB級感覚が消えた訳ではない。ボクにとってはこれもまた愛すべき世界なのである。(続く)

投稿者 平野克巳 : 2007年06月12日 20:16

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