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2005年07月29日
やり方は3つある。正しいやり方、間違ったやり方、俺のやり方だ。

石ノ森です。
先日DVDプレーヤーを新調したのに合わせて、こんなDVDを買いました。『カジノ10thアニバーサリーエディション』。映画『カジノ』の、音声解説つき本編と、撮影秘話を収録したボーナス・ディスクの2枚組です。

『カジノ』は私の大好きな映画の1本で、好きな映画に順位を付けられないものですから「ベストいくつ」とは言えませんが、「一番好きな映画5本」(矛盾した言い方だ)には確実に入る作品です。ですから、制作の裏話は非常に興味をそそられます。面白いです。何度も見てしまいます。
ちょっと前に『タクシードライバー』の事を書きましたが、『カジノ』も同じくマーチン・スコセッシ監督の作品。『タクシードライバー』は影響力の大きい作品ですが、私にとっては『カジノ』が、スコセッシ信者になるきっかけでした。作品の舞台は’70年代のラスベガス。手腕を買われてマフィアからカジノの経営を任された賭博の天才(ロバート・デ・ニーロ)の栄光と転落を、彼の妻となる女ハスラー(シャロン・ストーン)と、親友のマフィア構成員(ジョー・ペシ)との関係を軸に描くというのが、大まかなストーリーです。マフィア映画ですから暴力的なシーンも多いし、感動的なストーリーでもありませんが、全てを失って年老いたデ・ニーロが、眼鏡を外して遠くを見つめながら、「今の俺はこれで満足。文句は無い」と独白し、『カミーユのテーマ』が流れるラストシーンには、何か胸にグッと来るものがあります。
そんな風にメイン・ストーリーの人間模様の描き方も素晴らしいのですが、この作品が凄いのは、映画にまつわる全ての要素が圧倒的な完成度を持っており、さらにそれらが作品の舞台になる世界を完璧に体現しているという事。この作品では、衣装、撮影、編集、音楽の全てが、’70年代のラスベガス、そしてアメリカを表現している訳です。画面は原色を基調にした様々な色が溢れ、光を多用した煌びやかな絵作りで、クラシックからジャズからロック、ブルース、カンツォーネまで様々な音楽が引っ切り無しに流れ、それらがスピーディに、目まぐるしく編集されていますが、これら全て、あの時代のラスベガスの、度を越した、野放図で悪趣味な雰囲気を表現するために必要なテクニックだった訳ですね。で、とにかく何もかもがカッコイイ。最初のシーンを例に取れば、ピンクのスーツで現われるデ・ニーロも、彼が乗り込むガンメタのキャデラック・エルドラドも、背景に写っている建物も、「愛する事は信用する事だ。秘密の鍵さえも渡す。それが愛だ。俺はそういう愛を手に入れたと思っていた」というナレーションも、全部カッコイイ。『マタイ受難曲』をバックに爆炎の中をデ・ニーロが吹き飛ばされるオープニング・タイトルも、ラスベガスに移ってきたジョー・ペシの悪行三昧を描くシーンに流れる『キャンチュー・ヒア・ミー・ノッキング』も、デ・ニーロのかけているバカでかいサングラスも、ジョー・ペシの暴れっぷりとFワードの連発ぶりも、デ・ニーロとシャロン・ストーンのゴージャスな夫婦喧嘩も、証人になりそうな連中が大勢消されるシーンに流れる『朝日のあたる家』も、とにかく作中に出てくる何もかもがビシッと決まっていて、何度見ても飽きない映画です。
真面目な事を言うと、この映画は人間の強欲さと、それがいかに自分を破滅させるかを描いた作品だと思います。というのはスコセッシ自身も語っている通りなのですが、今回久し振りに見たら、その描写が本当に徹底していることに改めて気付きました。主役の3人はもちろん、自分たちの金が手下にくすね取られている事に我慢出来なかったボスたちも、大勝ちしても最後には儲けを全部吐き出した日本人ギャンブラーのイチカワも、勝ち続けたせいでインチキがバレるイカサマ師たちも、カジノの共同経営者だと名乗り出て裁判を起こした挙句に殺されるオバサンも、小さな役の登場人物たちまで全てが強欲のために身を滅ぼしています。こんな風に、見る度に新しい発見があるのも、この作品の良い所ですね。
『カジノ』は公開当時、あまり評価は高くありませんでした。スコセッシには『グッドフェローズ』(’90年)というこれまたマフィア映画の傑作があるのですが、その「二番煎じ」と評されがちだったのですね。しかし最近は、その評価がじわじわと上がって来ているようです。これはスコセッシ達も音声解説で語っている事で、おそらくこの2枚組DVDもそれを受けて発売されることになったのでしょう。私自身は公開当時には「オープニングタイトルのネオンが美しい」等の些末な感想はあったものの、作品そのものはどう評価すれば良いのか分からない感じ(今から思うと、あまりの凄さに圧倒されていた)でしたが、レンタルビデオがリリースされて再見すると「これは間違い無く傑作だ」と思うようになりました。理解するのに少し時間が掛かる作品でもあるのでしょう。それ以後、「時間が経てばもっと評価が高くなるはず」と思っていたのですが、実際そうなってきたようで非常に嬉しい。’90年代のアメリカ映画を代表する1本と言っても言い過ぎではないと思っています。おそらくさらに10年経てば、より評価は高まるだろうと思います。「見たことがない」という方には、是非御覧になることをお勧めします。
投稿者 モデルカーズ 秦 : 2005年07月29日 17:15
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