式場壮吉のポルシェ : モーターファン 1975年7月号

今はなき硬派月刊誌「モーターファン」である。通常の新車紹介やロードインプレッションだけでなく、各モデルのメカニズム解説にも毎回かなりのページを割いていた。この75年7月号では、海外メークス特集としてジャガーを紹介。同社の歴史、レースヒストリー、現行ラインナップ、技術的特徴など50ページ以上におよぶ力の入った特集であった。さて今回この号を取り上げたのは、ジャガーの記事を紹介したかったからではない。

当時モーターファンには必ず中古車販売店とのタイアップ広告コーナーがあり、お店の紹介とそこの目玉中古車のインプレ記事がワンセットで掲載されていたのである。そしてこの号ではポルシェ904カレラGTSが紹介されているのだ。しかもそれは、あのスカG伝説を生み出した第二回日本グランプリで式場壮吉がドライブしたマシンそのものだと書かれている。売っていたお店は京都のトミタオート。ここは冨田義一氏が立ち上げた輸入車販売店で、ランボルギーニやマセラティといったスーパーカーをはじめ、さまざまな少量スポーツカーや高級車を売っていた、いわば伝説の店である。(その後、解良喜久雄氏と組んで「トミーカイラ」としてコンプリートチューニングカーを手がけてゆくことになる) どういうつてでこの貴重なヒストリーを持つ904を販売するにいたったのかはわからない。ただはっきりしているのは、この904が一時的とはいえ、850万円というプライスカードを下げて売られていたということである。冨田社長いわく「お金だけ積まれても売りません。このクルマの価値がわかり、クルマを愛する人で、メカにも詳しい人。そして屋根つきガレージをもっている人・・・こういった条件がそろわないかぎりは、とても売り渡す気にはなりません」とある。それはそうだろう。というか、もし僕が冨田氏だったら売らなかっただろう。ガレージにしまいこんで誰にも見せず独りで悦に入ってたはずだ、間違いなく。あのノーズをクラッシュした跡は(幸か不幸か)少し残っている、とある。ちなみに当時の初任給は約9万円。850万円は今のお金に換算すると、約2000万といったところか。あの歴史ごと買えると考えたら、決して高くはない金額だと思う。昔も今も僕には買えそうにないけど。





