「人とくるまのテクノロジー展」に見る二輪先端技術

 5月23日~25日の3日間、パシフィコ横浜において日本最大の自動車関連技術展「人とくるまのテクノロジー展」が開催されました。自動車関連の最新技術が集うイベントということで、会場は一般入場者も含めた多くの来場者で大賑わいでした。また、2輪メーカー各社が開発した、もしくは開発中の技術を知ることが出来るという意味でモーターサイクルファンの注目度も高かったようです。そこで、今回のホビダス・モーターサイクル特集では、当日の会場から2輪関連技術をピックアップしてご紹介します。

英国発の燃料電池バイク“ENV”

二輪関連の出品の中でも一際注目されていたENV。近未来的デザインですが、既に実用的な性能を実現しています。
 これは、英国のインテリジェント・エナジー社が開発した“ENV”という燃料電池式モーターサイクルです。2005年の春にコンセプトが発表され、開発を開始しました。写真はプロトタイプですが、完成度はかなり高く、既に約160キロメートルの航続距離を実現しているとのことです。燃料は高圧水素。通常、燃料タンクが位置する部分に搭載された“コア”と呼ばれるパッケージは、高圧水素タンクと燃料電池を一体化したもので、空気中の酸素を取り込みながら発電します。最高速度は時速80キロ。“コア”を含む車体重量は80キログラムです。6キロワットのブラシモーターで動力を発生し、ベルトを介して後輪を駆動する仕組みです。

 車体そのもののデザインはかなり個性的。軽量な車体に合わせて、自転車用と思われるパーツが流用されていますが、スーパースポーツのようなツインスパーフレームや、リアスイングアームのピボットと同軸になるように搭載されたモーター、リアスイングアームに内蔵された軽量なサスペンションユニットなど、モーターサイクルとして見てもなかなか興味深い設計がなされていると言えます。また、コア自体は車体から取り外すことが出来るため、その外観も美しくデザインされています。近未来のモーターサイクルを予感させる魅力的な1台と言えるでしょう。


①個性的なリアビュー。②小型スーツケースのような“コア”はこの位置に格納。③モーターはスイングアームと同軸になる位置に搭載。④スイングアームには“FOX”製ショックユニットがビルトイン。なんとリンク式!


⑤自転車系パーツ多用したハンドル周辺。⑥フロントにはフローティング・ディスクを搭載。⑦ヘッドライトは2灯式。おそらくLED。⑧コア格納スペース後方の大気取り込み用インテーク。

カワサキの先進安全技術を纏った1400GTR

自社の先進安全技術を積極的にアピールしていたカワサキのブース。主役はこの1400GTRカットモデル。
 カワサキ重工は、現在開発中の最新技術を投入した1400GTRを展示。重力と遠心力から車体のバンク角を計算し、ヘッドライトユニット回転させることで常に路面を水平に照射する配光可変ヘッドランプや、車体のナイトビジョンカメラと連携して機能するヘルメット搭載型情報提供装置、付近の車両と位置情報等を共有して相互の安全をはかる車車間通信システム、タイヤ空気圧警告システムなどが搭載されています。カワサキの場合、「安全技術用EUC」を搭載し、これら安全技術を集中的に統括制御する構想のようです。

 モニターとスピーカーを内蔵したヘルメット搭載型情報提供装置は特に注目されていました。ナイトビジョンの映像や車車間通信の位置情報、各種警報などがヘルメットで確認できれば、我々ライダーは視線を落とすことなく情報を確認できるので、事故防止には非常に効果的なデバイスと言えるでしょう。一日も早い実用化を期待したいところです。

①配光可変ヘッドランプのデモンストレーション。常に水平な照射を維持。②ミラー根元に内蔵されたナイトビジョン用カメラ。③最も注目されていたヘルメット搭載型情報提供装置“HMD”。④タイヤ空気圧警告システムのセンサー。

官能性能を重視したヤマハの先進技術

通常目に触れることはない“YCC-I”の動作が目で確認できるデモンストレーション。1万1000回転で作動。
 ヤマハ発動機のブースでは、新型マジェスティのオートマチック変速システム「YCC-AT」とYZF-R1に搭載されている電子制御インテーク「YCC-I」を展示。 特に「YCC-I」に関しては、実際に作動する様子を見ることができる非常に興味深い展示となっていました。

 「YCC-I」とは、電子制御モーターによる可変式エアファンネル(吸気ダクト)のこと。中低速と高速性能の両立を目的としたデバイスで、エンジンの回転数とアクセル開度が一定域を超えると、中低速では連結されている上下2分割式のエアファンネルが電子制御にて分離され、下にある短い高速用のファンネルから新気を導入する仕組みです。操作してみると、概ね回転数が1万1000回転でファンネルが分離されるようで、これにより全域で滑らかな出力トルク特性を達成しているとのことでした。 また、ファンネルの動きは連続的なものではなく、連結と分離のみのシンプルな2段となっていますが、これは生産性だけではなく、フィーリングの良さも考慮してこの方式に決定したそうです。官能性能“人機官能”を重視するヤマハらしい設計だと言えるのではないでしょうか。


①新型マジェスティのオートマチックトランスミッション“YCC-AT”のデモ。②こちらはYCC-AT”のカットモデル。③YZE-R1の“YCC-I”のファンネルが分離された状態。④分離されたファンネルが分かるYZF-R1のカットモデル。

先進技術を投入したホンダのコミューター

空冷125ccエンジンのコミューターだが、先進技術が活かされている“ANF 125I Innova”。
 本田技研工業のブースでは、タイで生産されている欧州向けモデル「ANF125I Innova」が展示されていました。

 空冷125ccの欧州向けということで、日本ではあまり馴染みのないモデルですが、エンジンオイルからエンジンの温度を計測するセンサーや、キック始動の際に発生する僅かな電力でエンジン始動が可能な新開発の電気回路、システム構造の簡素化により部品の現地調達とコスト低減を実現したフューエルインジェクション、ヒーターレスO2センサーや高性能メタルハニカム触媒などによるEURO-3排ガス規制への対応など、コミューター的なモデルでありながら数々の新技術が投入されているのはいかにもホンダらしい部分と言えるでしょう。

「人とくるまのテクノロジー展」は要チェック!

 「人とくるまのテクノロジー展2007」に出展されていた二輪先端技術はいかがだったでしょうか?ホビダス編集部では昨年もこのイベントを取材したのですが、今回は来場者の多さにビックリ!このイベントに対する注目度が高まっている証拠でしょう。各社のブースでは、技術者ではない一般の方が熱心に質問する様子も多く見受けられました。4輪・2輪に関連した新技術に興味のある方にとって「人とくるまのテクノロジー展」はオススメのイベントです。

●協力:自動車技術会
●記事制作:ホビダス編集部 渡辺