ハンド・ツールの素材について その2
前回の特集でハンド・ツールの素材、「鋼」のお話をしましたが、今回の特集はその続編、「熱処理」のお話です。多くの「鋼」に熱処理が施されていることは、ご存知の方も多いと思いますが、ハンド・ツールの場合、想像以上に多くの工程を経て熱処理が完了するのです。
「ヤキを入れる」とは・・・
「ヤキを入れる」というとなんだか物騒な話に発展しそうですが、その「焼き入れ」こそが「鋼」の熱処理において最も重要な工程なのです。実は「鋼」の熱処理は大別すると、「焼きなまし」、「焼きならし」、「焼き入れ」、「焼きもどし」の4つに分類されるのです。そして、「鋼」を硬くする上で、最も重要な工程が「焼き入れ」というわけです。
「焼きなまし」とは・・・
「焼きなまし」は、別名「焼鈍(しょうどん)」と呼ばれ、「鋼」の分子を調整し、整える工程です。この工程を経ることで、「鋼」は硬くなるのではなく、逆に柔らかくなります。なんだか逆効果のようですが、これがこの後の工程で非常に重要な意味を持つのです。
「焼きならし」とは・・・
「鋼」を熱処理工程の途中で、一旦普通の状態に戻すことが必要になります。この工程を「焼きならし」と呼びます。
「焼き入れ」とは・・・
いよいよ、「焼き入れ」です。「焼き入れ」は「鋼」を硬くするために行う熱処理を意味します。具体的には、「鋼」を炭素濃度から割り出された所定の温度まで加熱し、そのままの状態を保持、その後急速に冷却するのです。ちなみに、加熱保持する時間は対象物の大きさ、冷却速度は鋼の含む特殊元素によってほぼ決定されるのです。
「焼きもどし」とは・・・
製品として仕上げるには、実は「焼き入れ」だけでは、不十分です。というのも、「焼き入れ」したままの「鋼」は、硬いのですが、脆いのです。この状態の「鋼」に「粘り」を加え、丈夫にする工程を「焼きもどし」と言うのです。したがって、「焼きもどし」は、製品として完成させるために必要不可欠な工程なのです。
工具の基本を押さえていれば・・・
使用中に割れたり、極端にたわむようでは、工具として使い物になりません。そればかりか、ネジをなめたりして、作業を完了できないばかりか、危険ですらあります。工具の製造段階で、材料の吟味や複雑な熱処理工程が施されるのは、製品に必要な精度と耐久性・強度を確保するためなのです。国内外の信頼できるメーカーの製品には、にじみ出る「美しさ」があるものですが、これは単にメッキが丁寧に施されているからではなく、このような素材の吟味、複雑な工程を経るうちに、醸し出されてくるのではないでしょうか。
●記事制作:ホビダス編集部 渡辺



