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2005年05月

2005年05月31日

見かけによらない

「あら、トモちゃん。ひさしぶりねぇ」
夕暮れ時の都立大駅前で、俺はギョッとした。

御存知ないだろうが、俺は“トモちゃん”である。
名前が“智之”だから、立派な“トモちゃん”なのである。
だが、都立大駅前にある東急ストアの辺りで、
俺のことを「トモちゃん」と呼ぶ人物に心当たりなどない。
しかも辺りをはばからないような大きな声で、
いかにもオバサンらしい口調で声をかけてくるような、
そうした知人がこの辺りに生息しているという記憶もない。

俺は怯んでいることを悟られないように、さりげなく、
しかし素早く自分の右側に目をやった。
実家の近所に住む長谷さんのオバサンに声が似ていたのだ。
クソガキだった時代から面倒をみてもらってた人だから、
俺のボロいところを彼女はたくさん知っている。
ゴヨーショーのミギリにはヌードだって見られている。
そのうえ長谷さんのオバサンは、声が大きいのだ。
ここは仕事場に一番近い駅。誰もがここを利用する。
俺は瞬間的に「ヤバイ!」と悟ったのだった。

だが、長谷さんのオバサンの姿は見当たらなかった。
大きなハスキー・ヴォイスが聞こえた右隣にいたのは、
ネコ・パブリッシングの笹本社長や
うちのボスである山崎くらいの年代にはグッと刺さる、
八千草薫さん風の美しいおばさまだった。
服の着こなしもほんのりと上品で、姿勢もいい。
俺よりおそらく20歳近くは「おねえさん」だが、
もし20年前に誘われてたら危なかったと感じられるほどだ。
あのダミ声はこの人ではない、と思った。

俺はまだまだ、人を見る目を養わなければならないようだ。
「あら。あんた、おかあさんから聞いたわよぉ。
結婚したんですってぇ? 水くさいわねぇ。
ちゃんと教えてくれなきゃお祝いもできないじゃないのぉ」
女子高生のそれとは異なる語尾の伸ばし方をした
いかにもオバサンらしい口調のその堂々たる声は、
八千草薫さんレプリカのおばさまが発していたのである。

おばさまの前では、ややふくよかな面立ちの
いかにもフレッシュな若奥様らしき20代半ばの女性が、
照れくさそうにニコニコとしていた。
彼女がもうひとりの“トモちゃん”だったのだ。

助かった……と安堵しつつその場を立ち去ろうとしたが、
信号は俺に「すすめ」とはいってくれなかった。
旧知の間柄らしいふたりの女性の会話に興味などないが、
すぐ隣で繰り広げられている会話である。
おばさまの声は嫌でも耳に入ってくる。

「あら! あらやだ! 水くさいわねぇ。もう何ヶ月?
こんなにオナカが大きくなっちゃって。
もしかして、ちょっと早いんじゃないのぉ? 何ヶ月?」
こたえる若奥様の声は、ポソポソとして聞き取りにくい。
「あら。ダメよぉ。わかっちゃうんだからぁ。
ごまかしてもダメ。あたしだって産んだことあるんだし。
ちっとも恥ずかしいことじゃないでしょ?」
若奥様の声は、やっぱりポソポソとして聞こえない。
「あら。なぁーにいってんのぉ。わかっちゃうんだからぁ。
オナカ見たら誰だって判るわよぉ。何ヶ月なの?」

しつこいオバサンである。
本物の八千草薫さんなら、こんな問い方はしないだろう。
そう思いながら何となくそちらに目をやると、
若奥様は照れくささを通り越して明らかに怯んでいる。
それでもオバサンの速射砲は止むことがなかった。

「あら。素直じゃないわねぇ。水くさいわぁ。
教えてくれたっていいじゃないのぉ。何ヶ月?」
若奥様が何かをポソポソと返している。
「えっ? なぁに? 聞こえないわよぉ」
オバサンはニコニコとしながらも勝ち誇ったような声で、
次には若奥様のかぼそい声を蹴散らす勢いで問い返す。
「えっ? なぁに? ハッキリいいなさいよぉ」
頑張れ。負けるな。頑張るんだ若奥様。
「ですから……」
若奥様の声が少しだけ大きくなった。……いいぞ!

だが、オバサンの追求の手は緩まることがない。
「あら、だからなぁに? 早くいいなさいよぉ水くさい」
若奥様は深く息を吸うと、ついに大声でこう切り返した。
「太っただけですってば!」

東急ストア前の信号は、いきなり凍りついた。
ふと周囲をうかがうと、誰もがそれとなく、
オバサンと若奥様の方を向いてクチを開けている。

「あら! まあぁぁぃやだわぁぉぉほほほほ。
そうならそうと早くいってくれなきゃあ。おほほほほ。
悪気があったわけじゃないの。ほんとよぉ。
あらやだもぉまったくぅ。恥かいちゃったじゃないのぉ」

若奥様は伏し目がちにオバサンに会釈をすると、
クルリと背中を向けてスタスタといってしまった。
周囲にいる俺達にできたのは、
少し哀れんだような目で彼女を見送ることだけだった。

だが、オバサンという生き物は逞しい。
なぜかクルリと振り返ると、こういい放ったのだ。

「あんなオナカしてたら誰だってそう思うわよねぇ?」

……なぜ俺なんだ? なぜ俺に同意を求める?
た……頼むからあっちを向いてくれ。頼む。

周囲の視線が今度は自分に集まるのを肌で感じ、
俺はなぜか自分のオナカを手で隠しながら
冷や汗をする以外に為す術がなかったのだった。

投稿者 T.Shimada : 23:37

2005年05月28日

せくすぃーなピンクレディのおかげ

ピンクレディのファイナル・コンサートが、
今日、終わってしまった。
単にティーポの締切だっていうだけでなく、
色々仕事が重なってほとんど溺死寸前の状態だし、
もちろん足を運ぼうと考えてたわけでもない。
ただ、もう観ることは敵わないんだな、と思ったのだ。

ピンクレディは俺達世代の一番のアイドルだった。
確か7歳年上だったはずだから
俺から見ればちょっと「おねえさん」なわけだが、
憧れめいた気持ちでテレビにかじりつき、
彼女達の出番を胸ときめかせながら待っていた
というかわいい小学生時代が、俺にもあったのだ。
……ホントだぞ。

彼女達がデビューをした1976年といえば
まだ笑っちゃうくらいおかたい時代だったから、
ピンクレディの極端に派手な衣装は、
肌の露出の多さばかりを気にする大人達の
非難のマトになり、社会問題みたいにもなった。
おっさん達やおばちゃん達は「子供にはまだ早い」
という解るような解らないような言葉で、
大抵の場合はなぜか伏し目がちで説いていた。
俺達はといえば若干の後ろめたさにフタをして、
短いスカートから伸びて躍動する細く長い脚に
初めて女性の色気というものをおぼろに感じ、
「きっと大人になれば何かいいことが待ってるのだ」
という根拠のない期待感にさらに胸を躍らせたものだ。
「せくすぃー」という単語が一般的になったのも、
彼女達の存在あってこそだったんじゃないかと思う。
そういう時代だったのだ。
同級生が「何てモノを学校に持ってくるんだ!」と怒られ、
先生にプロマイドを取り上げられたことがあったが、
俺はその先生が職員室の机の前で
ニヤニヤしながらそれを眺めていたのを確認してる。
大人ってズルイ……と初めて知ったのも、あの頃だ。

あれからかなり時が経ち、俺もちゃんと
その“ズルイ大人”の仲間入りを果たすことができたが、
大人になったからといって、あの頃に漠然と期待した
“何かいいこと”が待っていてくれた試しはなかった。
まぁその辺りのことについて突っ込まれると
荒れた展開に持ち込まねばならないのヤメにするが、
世の中そんなに甘くはできてないのである。けっ。

大人になってくる課程の中で、俺は少しずつ
ピンクレディの存在を意識しなくなった。
もともと熱狂的なファンというわけでもなかったから、
よくある話といえばそうである。
興味はとっくに他の世界に飛んでいて、
画面の向こう側の存在への関心は徐々に希薄になった。
中には自動車評論家の斉藤慎輔さんのように
真顔で“モーニング娘。”を語れる大人も存在するが、
普通のヒトにはそういうスキルはない。

だから今から2年ほど前に再結成のニュースが流れ、
久々に彼女達の姿をメディアで目にしたときには、
そりゃもう驚いたなんてもんじゃなかった。
40代も半ばとなって今だに美しくキラキラと輝いて、
とても魅力的な大人の女性に思えたのだ。
誘われたら断れないな、と思った。
もちろん誰も誘ってくれたりはしなかったが。

『ペッパー警部』も『サウスポー』も『UFO』も、
あの頃はちゃんとフリつきで笑いながら歌えたものだ。
だが、今はもうとてもできない。
こんなことでいいのか、俺は……? と思った。
いや、何も短いスカートをはいて踊りながら歌いたい、
というような妖しいことを考えた訳じゃない。
残念ながらそういう趣味はない。
ただ、このままくたびれたオヤジになっちゃっていいのか?
と自分を戒めたいような気持ちになったのである。
何か新しいことにチャレンジしなければ……と。

そして今、41歳を目前にした自分がここにいる。
「がんばんべぇ〜」と「疲れたびぃ」の狭間を行き来する、
中途半端な自分がここにいる。
彼女達はこの2年間で100カ所を越える場所を回り、
4時間にわたるコンサートを繰り返してきている。
実に40万人のファンを動員したという。

おかたい時代に社会現象を巻き起こした
スーパー・レディ達を相手に勝てるとは考えてないが、
素直に「すげーなぁ」と思う。
「少しは見習わなきゃなぁ」とも思う。
もっともっと楽しんでもらえるような本を作って、
皆に喜んでもらえるように努力せにゃあかん、と思った。

これからティーポがどんどん面白い本に育っていったら、
それは彼女達ピンクレディのおかげ、である。

というわけで、まずはこの写真だ。
締切の最中、“調べモノ”という名の現実逃避で
ルノースポールのプレス・サイトを覗いてみたら、
以前ティーポでデビューをお伝えした
メガーヌ・トロフィのマシンの完成版が紹介されていた。
それどころか、どうやら開幕戦も終えてるようなのだ。
サイトには詳細が刻まれてなかったから、
パリ在住の野口友莉さんにお願いして
続報をレポートしたいなぁ……なんてことを考えてる。
このクルマ、乗ってみたくて乗ってみたくて
もうウズウズしちゃうほど興味津々なのだ。

さーて、引き続き仕事仕事っ! でも……ねむい……。

投稿者 T.Shimada : 04:45

2005年05月27日

薔薇色の人生に触れる方法


俺達プレスは、クルマが大好きな皆さんから見れば、
「いいなぁ」なものを与えてもらえることが多々ある。
仕事だから「いいなぁ」とばかり感じてはいられないが、
クルマ好きなら確かに「いいなぁ」なのだろうと思う。
例えば新車の発表の場に居合わせることができる、
というのも大きな「いいなぁ」のひとつだろう。
いち早く新しいクルマをジトジト眺めることができるし、
シートに座ってステアリングを握ってみることもできるし、
その場で脳内仮想インプレを楽しむことだってできる。
メーカーやインポーターも晴れの舞台に工夫を凝らすから、
ときとしてある種のショーを見ている感覚で
その場を楽しんでしまうことすらあるくらいだ。

そんな中で俺がいつも思っているのは、
「ああ、こういうのをこのクルマのファンの人に
どうにかして見せてあげる方法はないのかなぁ」である。
貴重なモノが何気なく展示されていたり、
おそらく一般公開されることのほとんどない映像なども
普通に流されていたりすることが多いからだ。

ここしばらくで最も強くそう思わされたのは、
プジョー407の発表会で流されたビデオ・クリップである。

プジョーの40xシリーズは、代々、まず姿が美しい。
個人的には1935年にパリ・サロンでデビューした402の
まさしく「流れるような」と表現されるべき姿態と、
ラジエター・グリルの中にヘッドランプを埋め込んだ
何ともいえない妖しげな表情に魅了され、
戦前のクルマで初めて「乗ってみたい」と思ったわけだが、
もし現代の交通事情にマッチしたメカニズムを
このボディに組み合わせたリプロ・モデルなど登場したら、
俺はきっとヤバイことになるという確信もある。
以降の40x系も同様で、初めてピニンファリーナの
デザインを取り入れた403も、その後の404も、
総てその時代の中で一際輝く美しいスタイルをしていた。
40x系はプジョーが持っている美意識を
最もよく具現化しているシリーズなのだろうと思う。

その末裔が、407シリーズだ。
正直に白状するならば、写真で見ただけの段階では
あまりにも顔ばかり目立つように感じられて、
いくら猫系に弱い男だとはいえ
素直に「いいねぇ」とは感じられなかった。
だが発表会の会場で実車を見る前にその映像を見て、
あっさりと「407って美しい」と思えちゃったのだ。

ここでその映像の内容について
ウダウダと説明するのはヤメにしておこう。
きっと一般には公開されないのだろうと思っていたが、
実は誰もがそれを見られる状況にあるということを
ほんの数時間前に知ったからだ。
もしかして俺……遅れてる? だったらゴメンな。

『407.jp』。wwwはあってもなくてもオッケ。
そこにアクセスしてMovieの中の
『La vie en rose』を、ぜひ──。
プジョーに興味を持っている人もアンチ派の人も、
きっとその映像の美しさに知らず知らず惹かれ、
根底に流れているプジョーの美意識に
すんなりと触れることができるはずだ。

……お。まるでクルマ雑誌のようなコメント。
んっふっふっ。そういえば忘れてた。
俺は自動車雑誌の編集チョーだったんだっけ。


投稿者 T.Shimada : 01:17

2005年05月26日

ナ・ツ・ハ・ス・グ・ソ・コ

ゆうべのことだ。俺はひとりでステアリングを握り、
伊豆高原を目指して走っていた。
海岸線から大室山を目指す道の途中にある別邸で
母親が体調を崩して動けなくなっている、
という連絡が入ったからである。

自慢の辞書に『我慢』という言葉のない俺と違って、
母親は実に我慢強い人だ。
この時期は俺が締切の最中にいるのを知っているから、
どんなに具合が悪かろうと助けを求めてきたりはしない。
彼女の大事を知って慌てた別の身内が、
なかばパニックとなって電話してきたのだ。

生命がどうこうという状況じゃないことは判ったが、
夜にはほとんど街の機能を失うだろう土地の一軒家に、
身体を動かすことすらつらいだろう母親を
ひとりでポツンと置いておくわけにはいかない。
朝にでも都内のいつもの病院で診てもらわねばなるまい。
仕事がまたベタ遅れになるのは目に見えてるが、
さすがにそれを放っておくわけにはいかないだろう。
そもそも本当のところ状況がどうなのかは
着いてみるまで判らないわけで、不安はやはり拭えない。
右足には、きっとそれなりのチカラが入っていたと思う。

東名高速から小田原厚木道路を終点まで、
そこから海岸線のうねうねをひた走り、
寝静まった熱海の街を抜けて伊東へと差し掛かった。
おそらくここから、あと10km程度──。

だが困ったことに、俺は目的地のありかを知らなかった。
母親が気が向いたときだけ使っているそこは、
あくまでも母親のためのものであって俺のものではない。
実はこれまで一度も足を運んだことがなかったのだ。
カーナビに住所を打ち込んでもヒットしないばかりか、
ある程度の目印は教わってきてはいるものの
全く土地勘がない場所である。
オマケにケータイが通じない。

聞いた覚えのある施設のインデックスを発見し、
俺は迷わずそちらにステアリングを切って道を登り、
見事に迷ってうろうろするはめに陥った。
救いだったのは想像と違って山深い田舎道ではなく、
付近にはいくつかの家々が並んでいたことだ。
季節はずれの別荘地ゆえひと気はないが、
いくつかの家には灯りが点っている。
いざとなったら迷惑承知でチャイムを鳴らせばいい。

しばらく右へ行ったり左へ折れたり坂を上ったり下ったり、
次の目印を探して停まるような速度で進んだ。
暗く狭い鬱蒼とした木々の下を抜けながら、
そう遠くない場所にいるのだとは思っていた。

……あっ! と気づいたときには、
曲がるべき目印のある角を通り過ぎていた。
逆側から入る方が角度的に容易そうなこともあって、
俺は走ってきた細い道をそのまま進み、
別荘と別荘の間の路地に尻を入れてターンすることにした。

街灯のない角とはいえ時間が時間だし、
焦る気持ちもあったから、注意がたりなかったのは認める。
だからテール・ランプの光の中に人影をみとめ、
グッとブレーキを踏みつけたときにはドキンとした。
幸いなことに何かに当たった気配があるわけでもなく、
ブレーキ・ランプで明るさを増した赤い光の輪の奥に、
クルリと向き直って歩き去っていく彼の姿も見えた。
ふぅーっ……わるいことをしちゃったな……。
そう思いながらも、心臓はバクバクしていた。

それからおよそ10分弱で別邸に到着することができた。
母親は確かにつらそうではあったが、
思っていたより遙かに元気そうだったから安心した。
今度はちゃんとヒットする都内の彼女の住所を
カーナビに打ち込んでスタートすると、
さっき来たのとは全く別の道を誘導された。
時計を確認して、朝までには都内に戻れるな、と思った。
その途端、俺はとんでもないことに気づいたのだった。

この午前3時過ぎという常識的とはいえない時間に、
さっきのあのヒトの気配の極めて希薄な、
街灯の1本すらない別荘と別荘の間の暗い路地の角で、
あの『小学生にしか見えない男の子』は、
いったいなぜ『ただ立っていた』のだ?
それにあの後、いったいどこに向かったのだ?

彼は異様に夜更かしか、信じられないくらい早起きの、
何てことのないただの小学生だったのだろうか。
それともこれは、よくある怪談なのだろうか。

いずれにせよ、夏はもう近くまで来ている。

投稿者 T.Shimada : 01:07

2005年05月24日

不可思議な心理

仕事が立て込みすぎて煮詰まってきたりすると
気づけば普段と違った自分になっている、
という人はきっと少なくないんじゃないだろうか。
例えば解りやすいところでいうならば、
普段は穏やかなのに急にキレたり、
いつもは前向きなのに急にグチっぽくなったり、とか。

この編集部の中を見渡しても、合点がいく。
ここは世間的に見れば、落伍者の集まりのようなもの。
性格的に9時から5時の勤めが無理だったり、
ネクタイを締めることに恐れを抱いていたり、
トイレに入ると出てこられなくなったり、
見ればいつでもモグモグと何かを喰ってたり、
そりゃもうおかしな人間のデパートみたいなもんだ。

だから当然のごとくその変化の仕方も、並とはいえない。
例えばマタンキ〜はいきなり何の前触れもなく
エレキギターを掻き鳴らして叫び出すし、
ウエっちは「あれ? 今日もいないなぁ」と思うと
大抵は後から「合コンに突如として乱入してきた」
という証言が業界のどこかから流れてくる。
310は夜の編集部の雰囲気を恐れるかのように
普段よりも早く家に帰りたがるようになり、
タンク植草は悟りきったような表情をして
連泊態勢で社内の端っこに専用の寝床を組み始める。
ヘルメット坂上は、クチを半分開けたまま
ヘラヘラヘラヘラ薄ら笑いをして半目状態だ。
アナリュ〜に至っては普段はノンベンダラリンなのに、
なぜだか急に冴え渡った“できる男”になり、
バリバリ仕事をこなし始める。
唯一たいして変化がないのはナパくらいなもの、
相変わらず常に喰ってるか寝てるかトイレに入ってるかで、
その悠然とした姿には大物の風格さえ漂って見えるが、
いったい何しに仕事場に来てるのかには疑問が残る。

以前、誰かと話をしてるときに俺がこの仕事場を
「まるで『ワクワク動物ランド』みたいだ」と漏らしたら、
「違うでしょ。『動物奇想天外』だってば」と返された。
ここは、そういう場所なのである。

それじゃオマエはどうなんだ? と問われれば、
煮詰まってくると普段できないことをやりたくなって
身体がウズウズしてくるという癖がある。

今日もそうだったのかも知れない。
ガソリン・スタンドに立ち寄って給油してるときに、
急激にその欲望が鎌首をもたげてきたのだ。
目の前にある「あの場所に入ってみたい!」と感じ、
どうしても抑えることができなかったのである。

おつりを持ってきてくれた店員さんに、お願いしてみた。
「すみません。やっぱ洗車もお願いしたいんですけど」
「はい。かしこまりました」
「……あのぉ……中にいてもいいですか?」
「……はい?」
「いや、だからそのぉ……洗車機かけてるときに……」
「わはははは」
「いやぁはははは、すみません。いやぁ、申し訳ない」
後でよくよく考えてみたら
悪いことしてたわけでも何でもないのだが、
ひょんなことで手に入ったチャンスに軽い興奮を覚え、
俺はワケもなくついつい詫びてしまったりした。

そのときに撮った写真がコレである。
前方からガーッとブラシのついたアーチが向かってくる。
水がブシャーッと噴射される。
えらい勢いで回転してるブラシが窓の上を叩き、
ルーフを越え、トルクフルにリア・エンドに進んでいく。
その間ずっとゴーッともウォーンともつかない
妙に閉鎖的な音が車室内を支配していて、
俺は初めて体験する洗車機の動きや音に、
ちょっと新鮮な気持ちに浸っていた。

今度は後ろからアーチが帰ってくる。
ゆっくりと前方の定位置まで戻っていく。
よし、そろそろ2発目が来るぞ。うはははは。
あれ? どしちゃったん?
ん? なにぃ? もしかして、もう終わり?
たった1回だけ? 卑怯だぞコノヤロー!

くっそー。ケチらずに水洗い洗車じゃなくて
洗剤つきの洗車にすればよかった。
そしたらきっと、もう1回ゴーッてのがあったのに……。
水滴を吹いてもらってる間、待合室で煙草に火をつけ、
俺は軽い後悔に苛まされたのだった。

興味のある人はぜひ体験してみたらいいと思う。
なんだかスッキリした気分になれるから。
それにこれからの季節、涼をとるのにも最適だし。

いや、ただそれだけなんだけどね。
しょせん俺など、その程度のシンプルな人間なのである。

投稿者 T.Shimada : 23:57

2005年05月23日

回り道の悦楽

クルマの雑誌の撮影地といえば、大抵が箱根である。
その理由は至極単純でありながら順当なモノ。
都内から1時間半程度でアクセスでき、
高速道路も一般道もワインディングも走行できて、
現地に到着したら空抜けの絵も緑バックの絵も狙えるし、
走りのシーンは何パターンも選べる。
まとめて何台もの撮影だって楽勝だ。
箱根は俺達にとっては観光地ではなく仕事の現場なのだ。
この業界、週に何度も箱根を往復しているくせに、
観光で遊びにいったことが一度もないヤツは山ほどいる。

かくいう俺も、まだこの業界に入って日の浅い頃、
当時なりのワケありで温泉に入りにいったはいいが、
翌朝チェックアウトをしようとしたら
カウンターに顔見知りのメーカー広報の人達の姿が見えて、
慌てただけじゃなく出るに出られなかったことがある。
そこのホテルでプレス向け試乗会が行われるということを、
俺はうっかりぽっかり忘れていたのだ。
それ以来、箱根になんか2度と遊びにいくもんか、
と固く心に誓っている。……くそっ!

そんなわけで箱根は自動車雑誌のメッカなのだが、
あまりにも同じような絵ヅラばかりが誌面に並ぶと
さすがに寛容な読者さん達も飽きちゃうだろう。
だからカメラマンも編集者も、
できるかぎり箱根に見えないように抜き方を変えたり
立ち位置を変えてみたり、工夫には余念がない。
だが、やはり限界というものはあるのだ。

だから俺達はごくごく自然な習性として、
違う絵が狙える場所を常日頃から探すことになる。
都内を普通に移動してるときに裏道に入ってみたり、
いい場所があると聞けば寄り道してみたり、
買い物にいったデパートの駐車場の奥や
知人とお茶をするために待ち合わせたホテルの敷地の隅や
通りかかったトンネルの中や公園の遊歩道や
神社の境内や建設中の建物の前や明け方の商店街や
オフィスビルの入り口や歩道橋の下や……、
そりゃもうありとあらゆる場所に目を光らせるわけだ。

編集者なんてどちらかといえばまだまだ甘い方で、
プロのカメラマンになると目の光らせ方は半端じゃない。
神村聖カメラマンなど、一緒に地方出張に出ると、
もしかしたら二度と来られないかも知れない土地なのに
助手席からキラリンと目を光らせて、
ここは! と思った場所を自前の地図にマーキングし、
特徴までメモ書きしたりしている。
最初は何かヤバイ性癖でもあるのか、
それともワケあってのストーキング行為かと疑ったが、
実はこの絶え間ない努力が美しい写真に結びつくのだ。
ほとんどの場合が無駄に終わるかも知れないのに、
その地道な努力には本当に頭が下がる。

だから、思わぬ偶然で「おおっ!」と思う場所に出ると、
嬉しくてたまらなくなる。誰にも教えるもんか──と。
俺は絵心を身につけるため、駆け出し時代に
ひたすら美術館に通って名画を見て回った男である。
「見た」だけだったが。
けれど、その地道な努力のおかげで、
俺は芸術的才能をもってないのを思い知ることができた。
自分に何ができて何ができないかを知るというのは、
実はとっても大切なことなのだ。
男というのは打ちのめされるだけ打ちのめされて、
痛みを覚えて大人になるしかないのである。
振り返れば俺はあまりにも打ちのめされすぎだから、
もうこれ以上は勘弁だけど。

いや、話はそれちゃったのだが、
つまり俺は芸術的才能には恵まれなかったが、
そのぶん“場所”には並ならぬこだわりを
しっかりと持つ人間になれたということだ。
こだわってるだけなんだけど。

だが、そんな些末なことはどうでもいい。
この森の中をすっと綺麗に貫いている並木道はどうだ?
まるでヨーロッパのカントリー・サイドであるかのような、
シンプルだけど実に美しい光景だった。
エキゾチックなスーパーカーだって
欧州の小粋なスモールカーだって、
ここにはすんなり似合うと思わないか?
しかもここ、箱根にアクセスするのと同じような条件で、
簡単に辿り着くことができるのだ。
幾重にも仕事が重なっての慌ただしい日々の中、
回り道のようなことをしてみて本当によかった。

つくづく男という生き物には回り道が必要なのだと感じる。
回るだけ回って、誰かに出逢い、眺めに惑い、空気に触れ、
強く逞しい、少しばかり優しい人間になれるのだ。

何となく、気力が漲ってきたような気がする。
自分の生き方が間違ってないようにも思えてきた。
ボケのきついMacのおかげで進めることができなかった
山積みの仕事にもまっすぐに向かっていけるように思える。
よーし! いっちょ、やるか!

あらためて回り道の大切さに気づいた俺は、
さっそく今夜は回り道をして帰ることに決めた。
ビールと出逢い、煮込みに惑い、シシャモに触れるのだ。
よーし! 俺はやるぞ!
もちろん仕事だってバリバリと……明日から。

投稿者 T.Shimada : 23:00

2005年05月20日

秘密兵器を忘れてた

このコーナーはWeb Tipoの計画段階から、
なにがどうしてそうなったのかはさっぱり覚えていないが、
とにかく「毎日更新!」ってことに決まっていた。
始めてみると毎日のデューティがひとつ増えたみたいで
時間的にかなり喰われて大変といえば大変なのだが、
今のところ楽しみながらすることができている。

時間が喰われるのはひとつひとつが長いからで
それはオマエ自身の問題だろうという声もありそうだが、
ネコ・パブリッシングの社内でも
「いくらなんでも長すぎる!」と問題視されているが、
旧い友達に至ってはわざわざ忙しい時間を割いて
「もしかして、これって新型のイヤガラセ?」
とメイルを送ってきてくれたりもするわけだが、
まぁいーじゃん長いブログがひとつくらいあったって、
みたいな気分でキーボードをチャカポコ叩いてる。
だってさぁ、今日はどこどこに行ってなになにを食べて、
仕事をして仕事をして仕事をして忙しかったです、
みたいなモノはほかにもたくさんあるわけだしねぇ。
そう、愛煙家の俺が目指すところは、
ジャスト煙草1本分で読める与太話なのである。

まぁそんなことはどうでもいいとして、
さーてこれからいまだに不調を訴えるMacを騙し騙し
ブログでもするべさと自宅に戻ったら、
ケータイ電話の請求書がひとつ余分に届いてた。
ボーダフォンである。
普段はドコモのFOMAを使ってるのだが、
海外出張用としてボーダフォンの3Gも契約してる。
そのボーダフォンの請求書が、ひとつ余計なのだ。

突如あることを思い出した。
そう、2通届いていて間違いないのである。
およそ1ヶ月ほど前、渋谷をプラプラ歩いてて、
発作的にもう1台ボーダフォンを手に入れ、
旧い方の契約解除をするのを忘れていたのだった。
それどころか、何せ頭の中がやたらと忙しかったので、
買ったばかりの新しいケータイの存在すら忘れてた。

新しい方は、ノキア製の702NK。
デビュー当時からデザインが結構気に入っていたし、
もちろん以前から使っていたモノと同様に
日本国内でも海外でも普通に使える。
パソコンの通信環境が日本より遅れている海外では
このケータイに備わってる機能を活用すれば
メイルの読み書きも楽勝で可能になるし、
何よりBluetoothが搭載されているから
俺のパソコンとワイヤレスで結んでメイルもネットもOK。
それが何と! 1円で売っていたのだ1円で!
この衝動買いを責めることのできる人はいないだろう。
実に正しい衝動買いだった、
と今さらながら笑い出したい気分になった。

俺は毎日東京にばかりいるわけではない。
出張で家や仕事場をあけることも少なくないし、
実家のある埼玉の越生町に帰ることだってある。
通信環境が整っていない場合だって少なくないのである。
そんなときにこれさえあれば、
ブログを毎日更新することができるじゃないか。
俺は確か、そう考えたのだ。……意外とマジメでしょ?

請求書が届くまで存在を忘れていたのはマヌケだが、
俺は急遽セッティングに取りかかって
試しにコイツを使ってブログをアップしてみよう、
とチャレンジ精神に燃えていた。
新しいおもちゃを手に入れた子供みたいなモノで、
何だかとっても嬉しい気持ちになっていた。

だが、俺はいきなり出鼻をくじかれた。
このケータイ、さすがは北欧デザインだけあって
見た目が変わってるのはいいとして、
実はインターフェイスも大きく違っているのである。
日本製のこれまでのケータイみたいに、
ひょひょいとセッティングができちゃうわけでもない。

それでもメゲたりせずセッティングに励んでいた俺は、
ついに恐ろしいことに気づいてしまった。
セツメー書にはこう書かれていたのである。
「Windows 2000およびWindows XPで使用可能な〜」

俺は、まるで“ちびまるこちゃん”がそうであるみたいに
緞帳が落ちてくるような顔面蒼白を自覚しつつ、
唖然として溜息をつくしか術を見つけられなかった。

このBluetooth、Macだと使えないんじゃん……。
しかも今、またMacが動きを止めた。
カーネル君の登場である。

Macを再起動して改めてキーボードに向かった俺は、
たったひとつの言葉だけ刻んで
グラスに安っぽいジンを注ぎ込むことに決めた。

「もうイヤ……」

投稿者 T.Shimada : 23:58

2005年05月19日

電車は嫌いだ!

珍しく電車に乗って外出しようかと考えた。
どちらかといえば、3軒先にもクルマでいきたい性分ゆえ、
電車は好きじゃないし飛行機も船も好きとはいえない。
だって自分で運転することができるわけでもないし、
鼻歌をうなっても誰にも嫌な顔をされない
パーソナルな空間が約束されているわけでもない。
やむを得ないときにしか電車も飛行機も船も使いたくない。

だが、だからこそたまに乗ることになったりすると、
思わぬ新鮮な発見があったりして興味深いこともある。
そういえば、あの時もそうだった。

東京メトロの某駅の通路に貼ってあったポスターの前で、
20代前半とおぼしき若いカップルが立ち止まった。
「俺さぁ、今は金ないんだけど、このクルマ、欲しいんだ」
髪を無造作に立てた、今どき風ハンサムくんがいう。
「へぇー。これ、なんていうクルマ?」
彼女の方はミディアム・ショートのキリッとした美人で、
もう少し上背があればモデルさんにでもなれるような
プロポーションのよさが印象的だった。
「アルファ・ロメオっていうんだ。知ってる?」
「ロミオとジュリエットの“ロミオ”?」
「あはは。違うんだけどね」

彼はひとしきり引き締まったフロント周りがいいとか
エンジンが気持ちいいとか音が最高だとか
日本の道に大きさがピッタリだとか、
セレスピードっていうよくできたオートマだから
ミーコ(という名前らしい)だって楽に運転できるとか、
ポスターの中で輝いているアルファ147の
いいとこ自慢を繰り広げはじめた。

「おい。熱く語りすぎてるぞ。だいじょーぶか?」と
俺はクルマ好きゆえの失敗を瞬間的に懸念したが、
どうやらそれは全くの杞憂だったようだ。
彼女は愛らしく小首をかしげながら、
ニコニコと彼を見つめて話を聞いているのである。
……おお、ブラーヴォ!

それどころか、こんなオマケまでついていた。
「……だからさぁ、頭金つくるんで貯金はじめたんだけど、
ちょっとの間デートがせこくなっちゃったらゴメンな」
「じゃあ私がゴチソーしてあげなくちゃね」

うおおおおおっ! 何て素晴らしいっ!
君達はルックスだけじゃなくて総てがお似合いだっ!
若いが、いい男にいい女だ。俺が認める!
今日の日を忘れるな! 絶対に幸せになれよ!
いつまでも幸福に暮らすんだぞ!
生きるために一番大切なのは、愛なんだからな!

俺は感動していた。猛烈に感動していた。
若者のクルマ離れが進んでるといわれ始めて久しいが、
こんな素晴らしい、しかもカップルがいるじゃないか!
よーし! 気合いが入ってきたぞ! よーしっ!

何か気配を感じたのか、彼女の方がふと振り返った。
俺はおそらくニッコリと微笑んでいたと思う。
失敗を繰り返してきたひとりの大人の男として
そうするべきなんだろうと感じたし、
いい光景を見せてもらってありがとう、な気分でもあった。

だが、何を思ったか彼女は慌てて彼に向き直り、
彼の腕を引っ張って「いこっ!」と歩き始めた。
お似合いのカップルはヒソヒソと耳打ちし合いながら、
ときどきふたりしてチラチラと俺を振り返りつつ、
スタスタと早足で歩き去っていく。

……おい。ちょっと待て。頼むから待ってくれ。
俺は怪しいモノじゃない。違うってば。
君達に感動させてもらって、君達を応援したい気持ちの、
俺はどこにでもいる普通の一般人なんだってば。
誤解だ。全然違う。おい。頼むから違うんだってばぁ。

何が「誤解」で何が「全然違う」で
自分がどう思われたのかすらさっぱり解ってなかったが、
俺は若者ふたりの背中を目で追いながら、
慌てて頭の中でひたすら弁明を繰り返していたのだった。

……やっぱり電車はヤメだ。今日は外出もヤメた。
俺はこう見えて、実はとっても傷つきやすいのだ。

投稿者 T.Shimada : 23:52

とってもカーネル・パニックな1日

いやぁ、まいった。マジでまいった。
もう疲れ果てて気力が在庫切れしてる気がする。
だって、このMacの調子悪さったら半端じゃない。
修理に出してあがってきたのにコレなのだから。
もう見てのとおり、見事カーネル・パニックの嵐なのだ。

念のためにいうが、カーネル・パニックは
ケンタッキーフライドチキンの
カーネル・サンダースおじさんとは関係ない。
サンダースおじさんがパニックに陥る代わりに
俺がパニックに陥る恐ろしい現象なのだ。
まぁいうなれば“フリーズ”の一種である。

『ジャパン・ヒストリック・カー・ツアー2005』の
先導車のドライバーをつとめるための出張で
土曜日から月曜日まで走り続けていたわけだけど、
その出張の間に治してもらおうと、金曜日の夜、
俺は銀座のアップル・ストアにMacを持ち込んだ。
月曜日に修理があがったとの連絡をいただいたので、
火曜日の夕方に引き取りにいったら、
動作確認をしてるときに恐るべき不具合が再び発生。
持って帰ることができなくなっちゃったのだった。

アップル・ストアのスタッフの皆さんが
その日のうちに再び手を入れてくれて、
日付が変わりそうな時間帯にわざわざ届けてくださった。
自宅で起動してみたら、問題はなさそうだった。
これなら明日は大丈夫だろう、
と喜びながらベッドに転がり込んだ昨晩。
まさか今日という日がこれほど過酷な1日になるとは
文字どおり夢にも思わなかった。

そう、今日は出社してから今の今まで、
ずぅーっとMacにかかり切りなのである。
仕事? いや、ほとんどしてない。
だって一番の仕事道具がトラブルだらけなんだもん。
ちょっと調子よく動き始めたと思ったら突然ダメになる。
ちょろちょろイジって「もう大丈夫だろ」と思ったら
あざ笑うかのように“落ち”まくる。
これまで何の不具合もなくがんばってきてくれたのに、
おいMac、いきなりどうした? おまえに何があったんだ?

アップル・ストアのスタッフの方が
おおよそ原因として考えられるパーツというパーツは
総て交換してくれた。
OSもしっかり入れ直してくれている。
もちろん作業終了後にはチェックしてくれている。
なのに、どーしてマトモに動かなくなる?
もう頭の中はクエスチョン・マークの嵐である。

こういうときに間の悪いヤツというのはいるもので、
Windowsユーザーのヘルメット坂上がこういった。
「だからMacはダメなんですよぉ。
早くWindowsに替えましょうよ」
ヤツはその瞬間、何の苦もなくあっさりと、
見事に俺の“いたぶるリスト”の頂点に立った。
普段はそれほどクチの回るタイプではないが、
こういうときの俺のクチは速射砲にだって負けてない。
「これだけはいわれたくない」という類の言葉を、
注意深く選び、だが素早く断続的に絶え間なく投げ、
グゥの音も出ないほど徹底的に成敗してやった。
しかも、俺はいいヤツだけど根に持つタイプなのだ。
メットめ、これで終わっただなんて思うなよ。けけけけけ。

俺はWindowsを否定する気はない。
むしろ優秀なんだろうなぁとすら思ってる。
けれど一部のWindowsユーザーの
Macをナメきった小馬鹿にしたような態度だけは許せない。
確かにMacには大なり小なり問題はあるかも知れないが、
俺はそんなの承知でつきあってるのだ。
Macの楽しさ、Macに触れる喜びは、
一度つきあってみないと解らない。
俺はMacを愛してるのである。

考えてもみて欲しい。
「そんなカス車に乗ってるからおまえはダメなんだよ」
「あんなどうしようもない女はヤメて他の人を探せよ」
そんな台詞を吐かれたら、君は黙っていられるか?
俺は許さない。絶対に許さない。
相手が謝るか泣くかするまで戦って叩きのめす。
笑ってやり過ごせるほど大人じゃないのだ。
40歳にもなってナニだけど。

いいところもダメなところも、俺は解ってる。
それでも俺は、Macを愛してる。
誰に何をいわれる筋合いもない。聞く気もない。
Windowsに浮気をすることなど、考えたこともない。
……どこが悪い?

思わぬ場面でMacへの気持ちを再認識した俺は、
もう今日は家に帰って軽く一杯引っかけよう、と思った。
ワケもなく嬉しいような気分になったからだ。
……いや、問題が何ひとつとして
解決してないのは解ってるんだけどね。

投稿者 T.Shimada : 01:39

2005年05月17日

魔法の王国売ります!

いや、何も俺が魔法の王国を持ってて
それを君に売ってあげようってわけじゃない。
『魔法の王国売ります!』という名の本を読み終えたのだ。
こう見えて、俺は読書家なのである。

アメリカのファンタジー系ベストセラー作家、
テリー・ブルックスさんの長編小説。
欧文タイトルは『Magic Kingdom for Sale──Sold!』。

物語の主人公は、ちょうど俺と同い年だ。
最愛の奥さんを亡くして数年経っても立ち直れず
現実の世界に絶望してるチューネンの弁護士が、
「魔法の王国売ります!」という
まともな神経があるなら黙殺するような広告にひかれ、
夢の国を買い取ろうかとボンヤリ考えるところから始まる
疲れた大人のためのファンタジーである。
もっと単純にいうなら、
疲れ切ったおっさんがヤル気を取り戻して
再びがんばれる自分になるまでの、
ある種のグローイングアップ・ストーリィでもある。

舞台となった“魔法の王国”には、
ドラゴンはいるし魔女もいるし魔法使いも妖精もいるし、
ゴブリンみたいなヤツも出てくれば
木の精も伝説の騎士とやらも出てくる。
何でもありのオールスター・フル・ラインナップだ。
普通ならあまりにも陳腐すぎて
大人には耐えられないモノになりがちなんだけど、
この小説、作中世界の構成が実に緻密でほつれは少ないし、
ストーリィはシンプルなんだけど
大抵の大人なら身に覚えがあることの延長上で
ワクワクすることができる。
何より主人公が「こりゃ馬鹿げた話だ」と思いながらも
段々と魔法の王国への期待感にのめり込み、
つい買ってしまうまでの彼の心理の動き。
そこには主人公くらいの年齢=俺くらいのおっさんなら
誰しもが「おお、そうだよな」と
素直に共感させられちゃうようなリアリズムがある。
よくありがちな現実逃避型の安っぽい与太とは、
こいつはちょっと違うのだ。見事だなぁと思う。
おかげで今、俺は猛烈に眠くてたまらない。

まぁそれはいいとして、この魔法の国、
アメリカやイギリスのあまり人が住まないエリアを
舞台設定のベースにしたんだと思うけど、
広大な緑の平原とそこを縫うように流れる川や
大小の湖や沼が点在する湖水地方、密度の濃厚な森林地帯、
火山の噴火跡が残る荒れ地や崖のそびえる山岳地帯など、
ありとあらゆる自然がとにかくテンコ盛り。
魔法の王国の新しい王となった主人公は
ひと癖もふた癖もあるちょっと間抜けな従者達を連れて、
端から端まで徒歩や馬で3〜4日かけて移動するのである。

だが、俺の頭の中ではどうしても、
彼らが英国製の逞しい4WDに乗って移動する姿が
ずっとチラついて消えなかった。
最初にその王国の名前を読んだときに、
パッとイメージしちゃったのが間違いだった。
何度も何度も登場するその国の名前を目で拾うたびに、
果てしなく古くさい生活を残すおとぎの国の中を
縦横無尽に「ンガーッ!」と勢いよく駆け抜けていく
最新型のディスカバリー3が頭にポムと浮かんできて、
そこに完全に居座ってしまうのだ。
そりゃもう最後まで恐るべき違和感に苛まされて、
作中世界はこてんぱんのダイナシである。

王国の名は『ランドオーヴァー』。
いや、解ってる。クルマにもメーカーにも責任はない。
悪いのは俺だ。すべて俺が悪いのだ。
スリコミ効果に弱い俺の小さな脳味噌が諸悪の根元なのだ。
だけど、「オ」と「ロ」が違うだけじゃないか……。
いやいや、自分が悪いのは自覚してるってば!

投稿者 T.Shimada : 22:32

2005年05月13日

エンツォのダイエット効果

この仕事をやっていて最大の役得といえるのは、
ちょっと普通ならこの目で見ることすら難しいクルマ達の
ステアリングを、時として握れることだろう。
生産台数わずか数台のスペチアーレなんてのも、
過去に何度か体験させていただいた。
幸せなことだと心から思う。
40歳にもなって仕事場に寝泊まりするのは嫌だと考えて
徒歩3分のところに部屋を借りたにも関わらず帰れない、
なんてことが月に何度かあってもまぁいーかとすら思える。

が、もちろん「楽しい」「嬉しい」ばかりではない。
お借りするクルマ達はオーナーの方々の“心”そのもの、
細心の気づかいで運転させていただいてるつもりだが、
ほんの時々ではあるが仕事が終わった後で
「……もうぐったり」
なんて気分が残ることだってあるのだ。

このエンツォは、その筆頭ともいえる1台である。
いや、コイツが嫌いなわけじゃない。
運転しにくいなんてことも、これっぽっちもない。
気むずかしさなんてどこにもないし、フレキシブルだし、
この種のクルマとしては乗り心地もいい。
本気で踏んでいったらビビリが入るほどの、
どんなクルマと比較しても無敵なマシーンなのに、
その乗りやすさ、転がしやすさといったら、
そりゃもう呆気にとられるほどなのだ。

だが、ぐったり……なのである。いかんせん、デカすぎる。
全長4700mm、全幅2035mm。
長さはともかく、全長が2mオーバーってのが厄介なのだ。
普通の5ナンバーのクルマは1700mmまで、
3ナンバーでも常識的な線でいえば1800mmちょいだ。
2m超っていえばジャイアント馬場といい勝負、
4tトラックじゃないんだから勘弁してくれ! と思う。
しかもコイツ、視界はトラックほど良好じゃないのだ。

参考までにニュー・ミニと比べてみると34.5cmも幅広、
旧型ミニと比べたら実に59.5cmも幅広である。
59.5cm=編集部で最も太いナパの腹の厚み程度。
するってーと、エンツォで走るっていうことは、
旧型ミニのボディ・サイドに
ナパをくくりつけて走るようなもの、ともいえる。

エンツォで混んだ都会の道を走るときは、季節に関係なく
最初から最後まで冷や汗かきっぱなしになる。
旧型ミニにくくりつけたナパであれば
多少こすろうが当てようが耐久性にも問題はないし、
俺としてもそれほど心は痛まないが、
何しろコレはお借りしてる大切なクルマである。
んなわけにゃいかない。
それにコイツ1台で23区内に一戸建てが買える。
コイツに突っ込んできた人がいたら、
その人の人生はほとんど破滅である。
そういう意味でも、んなわけにゃいかない。

……おおお! 横のトラック! こっちに寄るなっ!
うおっ! セルシオのオヤジっ! 無理に合流してくるな!
あああ! おばさん! ちゃんと横もしっかり見てよ!
おっさんおっさん! ハンドルちゃんとまっすぐ持てよ!
んおっ! 斜め後ろのゼットぉ!
気持ちはわかるけどこっち見てないで前見て走れよぉ!
うわっ! ダンプぅ! 頼むから砂利を落とすなぁ!
跳ねてボディが傷ついたらどうすんだよ!
こっちは表面積も広いんだから当たる確率高いじゃねーか!

──こんな感じでティーポ5月号の撮影を終えたときには、
ゲッソリとしてマイナス1.5kgの減量を果たしていた。
俺はエンツォがダイエットにも効果があるってことを、
世界で初めて実証したのである。


投稿者 T.Shimada : 03:00

2005年05月12日

iPodの話 其の弐

そーゆーわけで、毎日のように
俺は喜んでiPod miniを活用してるわけだ。
近頃ではクルマの中で「ほんにゃ〜♪」と
鼻歌をうなるためだけではなく、自宅でも使ってる。
床の掃き掃除をするときにロックンロールをかければ
やたらと調子よくリズミカルにとんとこ進むし、
眠る前の一杯を飲りながら本を開くときにクラシックを
静かに流せば穏やかな気分でページをめくれる。
キッチンでタマネギの皮をむいてるときに
シャッフルで聴いてて想い出の曲が流れてくれば、
泪がこぼれそうになったりもする。

中に詰め込んである曲は特別でも何でもない。
カビの生えたようなブルースやR&Bから
和洋を問わない俺達世代にとってのナツメロ、
クラシックにオペラ、
ジャズにスタンダートにフュージョン、
ロックンロールにドゥワップ、
ハード・ロックにヘヴィ・メタル、
ブルガリア民謡に沖縄の島唄に和太鼓のセッションと、
あらためてチェックしてみたら
あまりに節操がないんで自分でもビックリしたが、
4MBの容量はとっくにギリギリになっていて、
新しい6MBに電池18時間のヤツが羨ましいほどだ。

だが、やっぱりメインとなる使用場所はクルマの中。
あっちに乗ってこっちに乗り換えてが日常だから、
昨日ここで紹介した
『iCarPlay Wireless-FM Transmitter』は
ほんとに役立ってくれてるのだ。

しかし、実は問題が少々あった。
iPod miniを車内で固定する方法がないのである。
クルマとiPodは1本のコードで結ばれてるだけだから、
放っておけば横Gや縦Gで
あっちにいったりこっちにきたりである。

この可愛らしいピンクのボディを傷つけたくない。
そう思った俺は、クルマで使い始める直前に
再び銀座のアップルストアへ足を運んだ。
iPod mini用のケースを買うことを思いついたのだ。

ものすごーくたくさんあった中からチョイスしたのは、
シリコンゴムでできたクッション性の高そうな、
手応えのない半透明のヤツだった。
2000円とか3000円とか、そんなもんだったと思う。
これ、素材が素材だから
コンソールに置いても滑り落ちにくいし、
何かに接触してもボディにキズはつかない。
おまけに装着したまま
トランスミッタをガチョンとつけられるし、
そのままクリックホイールを操作することもできる。
選択としてはベストである。さすがは俺。

だがある日、スタッフのアナリュ〜がこう叫び出した。
「うわっ! 嶋田さん、マジすか!?
iPodにコン○ームつけてる。だせーっ!」
「なにぃ!?」と俺。
続いてマタンキ〜まで同調しはじめた。いい年して。
「あっ! ほんとだ! だせーっ!
やぁーい、コ○ドーム!」
「な……なにぃーっ!?」と俺。
返すべき言葉がひとつも見つからないのだ。
いったい何てことだ。
コイツは便利だけどダサかったのか……。
もう……とにかくガッカリである。

写真の白のiPodに白のケースはナカジーのモノだが、
こっちは硬いが操作性も悪くない。
こーゆーのが売ってたらよかったのにぃ。
もう……ガッカリである。

投稿者 T.Shimada : 00:42

2005年05月11日

iPodの話 其の壱

今さらかよ……と思う人もいるだろうが、
このところ最も気に入って毎日使ってるオモチャ(?)は、
このiPod mini。
去年の夏の発売日に手に入れた……というか、
若手スタッフのアナリュ〜君が列に並んで
買ってきてくれたというのが正確なところなんだけど、
そのピンクのiPod miniである。
……うむ。優しいスタッフに恵まれたもんだ。んふふふふ。

愛らしいピンクの色とシンプルなフォルムが気に入って
しばらくは自宅のデスクの上に飾っておいたのだけど、
それはあくまでもカッコイイから飾っておいたのであって、
使い方を覚えられないから放っておいたってワケじゃない。
断じてない。ない……と思う。

だが、あれこれとクルマを乗り換えるのも仕事のうち、
車内にCDを持ち込んだまますっかり忘れて降り、
「ん? あのCDどこいっちゃった……?」のせいで
CDラックがずいぶん寂しくなっちゃったから、
いよいよ重い腰をあげることにした。
念のためにいっておくことにするが、
重いというのは“太ってる”ってのとは違うぞ。

車内で使うには、FMトランスミッタが必要になる。
Griffinというメーカーの『iTrip mini』ってヤツを
買うつもりで、銀座のアップルストアまで出掛けた。
iPod miniにガチョンと取り付けたときに
一番スタイリッシュにピタリと決まるのがそれだからだ。

だが、実際に買ったのはMonsterというブランドの
『iCarPlay Wireless-FM Transmitter』というモノだった。
シガーライターのソケットに根っこをグッと差し込んで
iPodの下側に頭をガチョンと差し込んで、
あとはコードの真ん中あたりにある選局ボタンで
6つ用意されてる周波数の中からどれかひとつを選び、
車内のFMラジオをそれに合わせればオッケ! なヤツだ。
このコード1本でiPodの充電までできるのがありがたい。
値段は8379円。『iTrip mini』より1300円ちょい高いが、
充電ケーブルとかを買わずにすむから割安である。

だが、何といってもコイツに決めた最も大きな要因は、
アップルストアで仕事をしてる
iPodのプロといえる人達の何人かにコッソリと
「どっちを使ってます?」と聞いて回った結果による。
俺は仕事以外でもちゃんと取材をするのである。
どうやらこっちを使ってる人の方が多いようだったのだ。

ってなわけでクルマに乗るたびに使ってるわけだけれど、
これ1本! ってところが実に便利でいい。
見た目はそれほど美しいとはいえないが、
他のスタッフに使わせてみたところ音質の評価も高い。
タンク植草なんて速攻で同じモノを買いにいったほどだ。
主体性のないマネっ子坊主め。

おかげでCDが行方不明になることはなくなったが、
ほんの数日前、コイツとiPod miniをつないだままの状態で
クルマを返却しちゃいそうになったから慌てた。
今度はiPodの行方不明を心配しなきゃならないようだ。


投稿者 T.Shimada : 23:58

2005年05月10日

デジカメさまさま

昨日っつーか今朝に引き続き、沖縄ネタで恐縮至極。
前回レポートしたとおり、妖怪ぬらりひょんのような
カメラのオミヤの写真を撮ったりして
その日のデューティを意外とマジメにこなした後、
夕食までの間、少し部屋で休む時間をもつことができた。
こうした泊まりがけの試乗会っていうのは
日帰りの試乗会よりも時間がたっぷりしてるように思えて、
実は走る距離が長かったりすることもあり、
意外やゆとりなくバタバタと過ごすことの方が多い。

だが、アウディ・ジャパンの広報スタッフの皆さんは、
粋な計らいをしてくれた。
スケジュールの中に、何もしないでいることのできる
空白の時間を密かに用意してくれていたのだ。
まるで狙い澄ましたかのように……っていうか、
間違いなくこの瞬間を狙ってくれてたんだろうけどね。

テラスにあった椅子に座って、
珍しくゆったりした気分で煙草をくゆらせながら
そのときに見とれていた光景がこれである。

夕暮れ時。東シナ海の遙か向こうに沈もうとする陽。
それを見送るかのように、てんでに広がる雲。
ほっぺたを撫でていく、初夏をすら思わせる3月の風。
空と海とがひとつの濃紺に混ざり合う間際の、
わずか10数分の間だけ出逢うことのできる、
どれほどの芸術作品を持ってきても絶対に敵わない
大自然のスペクタクル。
ひとりで見てるのが申し訳ないような気がしてきて、
そわそわとシャッターを押したのだった。

……んっふっふっふっ。
つくづくデジカメってすごいなぁって思う。
だってさぁ、この写真、
ただペシッてシャッター押しただけだよ。
何も考えず、シャッター以外にはどこも操作せず。
それでもこれくらいには撮れちゃうのだ。
しかも、どれを選ぼうかマジメに悩んじゃったくらい
何枚もちゃんと撮れてる写真があった。
偉いぞ、リコー・カプリオG4ワイドっ!
もう旧型になっちゃったけど。

新旧のクルマにあれこれ乗っても常々感じることだし、
この日の新型A4とS4からも同じことを感じたけれど、
いやぁ、技術の進歩ってのは本当にすごいもんだよね。
ひとむかし前なら、こうはいかなかったもん。

おかげですっかりとアーティスト気取りになれた俺は、
「自信を持ってこのブログを続けていけるぜ」と、
今、再びデジカメをバッグに放り込んだのだった。
さあ、街に出て何かを探そう。
楽しいモノを。美しいモノを。
全身をアンテナにして、目を大きく見開いて。
気の向くままに、軽やかに。

……明日からね。
今日は会議ばっかで疲れちゃったから。

投稿者 T.Shimada : 21:08

犯人は俺じゃない!

数日前に「MacはOS Xになってからフリーズしない」と
自信満々に述べたというのに、突然……来た。
今日になってアプリケーションはやたらと落ちまくるし、
画面が何度も半透明の黒になってフリーズしたうえ
ごていねいにも「再起動しろ」と命令を出してくる。
まるまる1日かけてあれやこれやと手を尽くし、
いや、より正確にいうならMacにだけは
異様に精通してる若手スタッフのアナリュ〜君に
あれこれ手を尽くしてもらってどうにか動くようになり、
んーでもって明日からの仕事にちゃんと使えるように
必要なモノを今度は自分でインストールしてたら、
こんな時間になってしまった。

だが「毎日更新なんて嘘じゃねーか!」といわれるのも
ちょっとばかり悔しい気がするので、
日が変わって数時間経っちゃったけど更新することにした。
まだ街が眠ってるから昨日のうちだ、と自分を慰めながら。
そう、俺はやるときにはやる男なのだ。
やらないときにはちっともやらないが……。

それにしても昨日の東京は本当に暖かかった。
まるで夏みたいだ、と思った。
Macが動かなくなる数時間前、
仕事場に向かってのほほんと平和に歩きつつ、
俺は2ヶ月前に同じ気分を感じたことを思い出していた。
3月の沖縄は、まるで初夏のような気持ちよさだったのだ。
写真はそのとき、アウディA4の沖縄試乗会でのヒトコマ。

……いや、早とちりしないで欲しい。事故じゃない。
地面に転がってるのは俺が跳ね飛ばした熊なんかじゃない。
なにせ俺はレース中であろうが「お先にどーぞ」
の精神を忘れない安全運転モノなんだから、
こういう事故は起こさない。

……といって、とても普通の状態にも思えないだろう。
こんなカタチで地面にビロ〜ンとのびてる動物なんて、
日常生活の中ではあまり接することがないはずだから。
これはどこからどう見てもダダをこねて泣き疲れた子供か、
昼間から泡盛を喰らって全身グンニャリな酔っぱらいか、
空腹のあまりクルマに辿り着く前に力尽きた欠食オヤジか、
そんなふうにしか考えられないだろう。
あるいは南国の暖かい陽の下で
暢気に過ごしてるうちに浜に打ち上げられた巨大ナマコか、
ボールの曲芸に失敗してイジケてるアシカのミヤちゃんか、
出る場所と出る時間を間違えて
地面に伏せて全身で恥ずかしがってるだいだらぼっちか。

うむ。惜しいが、どれもハズレである。
地面に転がっているこの丸くて太い不可解な物体は、
うちの元スタッフにしてフリーランス・フォトグラファーの
オミヤこと宮越孝政なのだった。
宿泊先でもあったブセナテラスの敷地内にある
沖縄サミットが行われた由緒正しい建物の前にA4を置き、
ロー・アングルから撮影しているところなのである。
振り返ったら無言でペシャンコになってるものだから、
「コイツはいつだって喰ってばかりだけど
また何か悪いモノでも腹に入れたか?」と心配したものだ。
皆さんにはふざけてるようにしか見えないだろうが、
この男はこれでも真剣なのである。

ロー・アングルの写真がクルマ雑誌に掲載されてたら、
カメラマンがこんなふうに苦心しながら撮影してるんだな、
と彼らの仕事ぶりに想いを寄せてみて欲しい。
そう考えて、ここで紹介することにしたのだ。
カメラマンっていうのは、実はかなりの重労働なのである。
まぁこのオミヤの場合はどこからどう見ても
おおよそ沖縄のリゾートには似合うようには思えないし、
この姿、ゲラゲラ笑っちゃうほどおかしかったから、
こっそりデジカメで撮ってみたってのが真相なんだけどね。
だってコレ、どう見ても跳ね飛ばされた沖縄熊か、
ダダこねて泣いてる子供だよなぁ。わはははは。

投稿者 T.Shimada : 05:11

2005年05月08日

コーヒー・ブレイクの憂鬱

時代にそぐわないことはよーく解ってるが、煙草が好きだ。
習慣ではなく大好きだから吸ってるわけで、
吸わないでいようと思えば我慢できないこともない。
気がのらなくて1本も吸わないでいる日だってあるくらいだ。
でも、コーヒーはダメだ。中毒だと思う。
コーヒーの飲めない1日なんて、考えただけでイライラする。

朝、目覚めて最初にするのは鶴口のケトルに湯を沸かすこと。
ドリップでていねいに“本日最初の1杯”を淹れるのだ。
寝過ごしたり豆を切らしてたりしてコレができないと、
どうにもあまり機嫌がいいとはいえない1日を過ごすことになる。
16の頃からの習慣というか習性というか、
ほぼ毎日やってきた行為をなかったことにするわけにはいかない。

そういうわけだから、仕事場でも当然コーヒー漬けである。
ティーポの編集部のあるフロアのエレベーター横に、
コインを放り込んでボタンを押すと
紙コップにチョボチョボとコーヒーが落ちるタイプの
どこにでもあるヴェンディング・マシンが設置されている。
コーヒーを自分好みに美味く淹れる能力にだけは自信があるから、
いくら挽いた豆をドリップで落としているとはいえ
紙コップのコーヒーに味など期待してないが、
それでも俺はこのヴェンディング・マシンの最大級の顧客である。

──ある日のこと。俺はいつもとちょっと違った気分で、
2杯分のエスプレッソ風味を買っていた。
もちろん“濃いめ”の選択ボタンをプッシュして、である。
実はその前日にコルヴェットの試乗会で、
『CORVETTE』のロゴ入りタンブラーをいただいていたのだった。
蓋付きのステンレスとプラスティックの二重断熱構造で
保温効果バッチリのそいつにコーヒーを移し替えておけば、
電話がかかってきても急に打ち合わせが入っても大丈夫、
冷める時間を思い切り引き延ばせると密かに喜んでいたのである。

容量的には、紙コップちょうど2杯分。
1杯めの紙コップをタンブラーに注ぎ込んでニヤリとし、
2杯目の紙コップを注ぎ込んでいたとき、
姉妹誌『パーフェクト・ボート』のスタッフ、
イトーがトイレから出てきて俺の前を通り過ぎていこうとした。
2つの空の紙コップとタンブラーの中身を瞬時に見比べ、
あまり愉快ではなさそうにこうつぶやきながら──。
「ったく、金にモノをいわせて……」

ヴェンディング・マシンのコーヒーは、
福利厚生の一部のつもりらしく他より大幅に安い1杯80円。
2杯ということは、計160円。
これで“金にモノをいわせて”と誹りたくなる男。
「う……」と、軽い後悔に言葉を失う男。
ティーポをつくっているクリッパーという会社のスタッフは、
しょせんはこんな具合に小さいのである。

投稿者 T.Shimada : 17:40

2005年05月07日

いきなり……の暗礁

しばらく前から、俺は愛機PowerBook G4-1.33の
12インチ画面を睨みつつ、ずっとフリーズしたままなのだった。
MacはOS Xに変わってからほとんどフリーズしなくなったが、
代わりにこうして自分が凍ってる。まるで身代わり地蔵である。

……うーむ。ジコショーカイって難しい。
だってさぁ、まるっきり特別な人間でもなんでもない自分の、
いったい何をどう説明したらいいんだ?
この“ぶろぐ”ってのを始めて2日目にして、
いきなり暗礁に乗り上げた感じである。

誰が書いたかプロファイルのところに客観的な説明が刻まれてる。
本人としては喜ぶこともできないが、反論することもできない。
だって少なからずそう見える、ってことだからね。
もちろん反省なんかしないけど。
俺はわりといいヤツだが比較的根に持つタイプだから
密かに犯人捜しは続けてイジメに走ることに決めてるが、
だけど「もうこれでいいじゃん?」とも思うのだ。
だってただ雑誌をつくることを仕事にしてるだけの人間の、
ヒトカドのジンブツでもなく日々あぽ〜んと過ごしてる男の、
いったい何が知りたい?

俺の場合は実力がどうとか頭脳がどうとかそういうのと違って、
言うなればトコロテン的ナリユキでグニュッていうか
商店街の歳末大売出の福引きひいたら当たっちゃったっていうか、
そんな感じのただの流れで編集長になった人間なわけだから、
他の出版社で編集長をやってる皆さんのように
才気溢れる「できる男!」ってわけでもないし、
内に秘めたる“何か凄いモノ”を持ってるってわけでもないのだ。
ついでに言っておくと、気骨もなければ根性もない。
うはははは。ごめんねー。

──というわけで、なんとかパッと見では「おお、やってるじゃん」
に見える程度の文字を羅列することに成功した俺は、
何とか2日目も無事に切り抜けたぜ、と胸を撫で下ろすのであった。
ちなみに写真は著者近影。

投稿者 T.Shimada : 21:48

2005年05月06日

ふつつか者の三日坊主、見参!!

ちぃーす! ティーポ編集チョーの嶋田でーす。
ティーポ本誌でも予告したとおり
『ブログ』ってヤツを始めることになりました。

電脳世界に明るくない僕としては今イチこれがどういうモノなのか
うまいこと理解できてないのですが、
とにかく「何でもいいから好きなことを書け!」と
担当スタッフから脅されたり泣き落とされたりしたこともあって、
まぁ思ってることを書き殴るだけでいいなら何とかなるだろう、
とばかりに手を染めてみることにしたわけです。
何せモノを書くのは読むのと同じくらいに好きなもんでね。

だから普段は「コレ書きてーなぁ」と思っていても
雑誌のその号のテーマに合わなくてヤメにしちゃうようなモノも、
あるいはお金を出して買っていただく雑誌の中で
書くようなことじゃなかったりするモノも、
ここではバンバン書いちゃっていいってわけですな。ふはははは。
紙の方のティーポが表なら、こっちのティーポは裏。
ってことは、多少ヤバめの話だとかウラ話もオッケなわけでしょ?
なるほどぉ。楽しくなりそうじゃん。んっふっふっふっ。

今日は初日ということもあって結構かしこまって書いておりますが、
明日からはクルマにまつわるあれこれ、
クルマに関わる人にまつわるあれこれを軸にすえて、
自分流に気楽に不作法に進めさせていただこうかと考えております。

写真は過去に発見して目をひんむいた、
パリにある世界的に超有名な誰でも知ってるはずの教会の
エントランスにあった歓迎のタペストリィ。
やたらと気合いだけ先走ってこんなふうになっちゃわないように、
あんまり頑張らないことをここで皆さんに誓っておきましょう。
コンセプトは『痛快! ナリユキ進行』。
言っておきますけど……長いですよぉ書き始めると、きっと。
それでも我慢して読んでいただけますぅ?

──ん? なに? 最初は自己紹介しなきゃならなかったの?
そーゆーことは先に言えってばぁ先に。
……ということで明日は自己紹介です。



投稿者 T.Shimada : 17:56



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