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2005年6月 9日

HARRYさんとスピットファイア

他人のクルマのトラブルというのは楽しいものだ。
わが身に降り掛かってくるのがこんなに嫌なものもないが、
昔の人はいいことをいったもんだと思う。
──人の不幸は蜜の味。いっひっひ。

クルマ好きがふたり以上集まって、
誰かが「この前いきなりクルマ止まっちゃってさぁ……」
と口火を切れば、不思議なモノで次々と、
「実は俺も○×の交差点で立ち往生しちゃって」だの
「シフト・レバーがポキンって折れちゃった」だのと続く。
ひどいのになると「この前、駐車場でドアを閉めたら
ミラーがポロッと落ちちゃった」という、
まるでドリフのコントみたいな話まで飛び出してくる。

これ、何の興味もない人がそばにいたなら
「コイツら故障の自慢ばかりし合ってアホなんちゃう?」
と訝しがるのかも知れないが、それはちょっと間違ってる。
故障を体験したヤツは、語るしかないのだ。
語って誰かに笑ってもらう以外に道はないのである。
聞いている方は聞いてる方で
他人の不幸に「ふへへへ」と笑みを浮かべる一方、
実は自分の体験を思い出して切なくなったりするから、
次にはついつい自分の不幸譚をとっぷりと語って、
誰かに「おぉおぉ、それ解るよ解る」とばかりに
笑い飛ばしてもらいたくなるのである。

テレビの刑事ドラマなんかでは“落としの○△”みたいな
異名を持つ名物刑事が、容疑者の肩をポムと叩き、
「おい、そろそろ全部ゲロして楽になっちまえ」
とカツ丼をチラつかせながら誘惑にかかるわけだが、
それに似てるといえば似てる心理がここにも働いている。

切なかった出来事を語って誰かに笑ってもらうことで、
不思議と気分がスッと楽になるのだ。
互いが互いを笑い飛ばし合うことによって、
実は助け合ってるのである。なんと良くできたシステム!

その心理の動きを正しい日本語に置き換えると、こうなる。
──開き直り。

石川啄木のように“ぢつと手を見る”ことで
人生に深く深く思いを寄せることも時には大切だと思うが、
そもそも深く考えたらクルマ好きなんてやってられない。
一発思い切り笑い飛ばすことで、
強く逞しくクルマ好きとして明日も生きようという意志が、
ここにはしっかりと根を張っているのである。

写真のちょっとかっこいいカフェ・レーサー風の
トライアンフ・スピットファイアの持ち主も、
きっと日々そんなふうに過ごしてるんじゃないかと思う。

この黄色のスピットの持ち主は、HARRYさん。
クルマ業界では、東京FMの名物番組のひとつ、
『Driving Navigator by ADVAN』を受け持っている
FMパーソナリティとして知られる人だ。

HARRYさんは、俺が先導車をつとめた
『ジャパン・ヒストリックカー・ツアー2005』に、
このスピットファイアを駆ってエントリーしていた。
『Driving Navigator by ADVAN』の取材を兼ねて、
やはり番組の名物である“Yディレクター”とともに
録音機器を積んで走っていたのである。

だが、HARRYさん達のヒストリックカー・ツアーは、
ちょっとばかし生半可なものではなかった。
下側の写真の立ち姿や背中が語るとおり、
あっちで止まりこっちで立ち往生しを繰り返し、
やっとの想いでゴール地点まで辿り着いたのである。

「ある時は3分間待てば何事もなかったように復帰し、
ある時は自分達でパーツを交換し、
ある時はツアーに同行した著名なMメカニックに救われ、
ある晩はかかりつけのメカニックに東京から
修理に来てもらって徹夜で作業してもらい……」
といった具合に、3日間で13回!
実に13回もトラブルで止まりながら走りきったのだ。
なんというツワモノ!
しかも、やはり彼らはプロだった。
ただ困ったり凹んだりしていたわけじゃない。
その故障の模様はしっかりと録音されて番組に生かされた。

「えー、今、山の中で止まっています。うん。……ふぅ」
みたいな具合のHARRYさんの声の向こう側で、
長閑にカエルが泣いてる声が聞こえてきたりする。
次の瞬間には「……フォーーーン!」と、
フェラーリと思しきスーパーカー系のサウンドが
すぐ脇を勢いよく走り抜けていく。
沈黙の間に「キンッ」というジッポ・ライターの
フタを開ける切ない音が聞こえてきたりもする。
解るっ! 解りすぎるくらいに解るっ!
こんなときには煙草をふかすしかないのである。

ふっ……ふはははは。ふははははははは。
やはり、人の不幸は最高の御馳走だ。
だって、この出来事ひとつで一晩、
一緒に酒を酌み交わすことができたわけだから。

いきなりなぜこんな話を持ち出したのかというと、
そのときの模様を収めた番組が、
今週末と来週末の2回に分けて放送されるからだ。
これ、クルマ好きとして幸せな気分になりたいなら、
絶対に聞き逃しちゃダメだよ。うははははははは。

なぜこんなことを知ってるのかといえば、
HARRYさんのとこに遊びにいってきたからである。
そこで現場の切ない音を聞かせてもらい、
どんな具合に使われるかを教えてもらったのだ。
ついでになぜか、第2回目の放送にちょっとだけ
顔っていうか声を出す話になったのがナニだが、
そっちのほうはどうかサラッと流して欲しい。
どうせロクなことしゃべれた試しはないのだし、
オカシイのはちゃかしてる俺なんぞじゃなくて、
あくまでも真剣だったHARRYさんのほうなのだから。
とにかく……あっはっはっはっは。

●ヒストリックカー・ツアー編 第1回目
6月10日(金) FM広島→16:00〜16:30
         FM大阪→20:00〜20:30
6月11日(土) FM愛知→12:30〜13:00
         FM仙台→12:30〜13:00
         FM福島→18:00〜18:30
         FM北海道→19:00〜19:30
         FM福岡→19:30〜20:00
         FM静岡→19:30〜20:00
         東京FM→18:00〜18:30

●ヒストリックカー・ツアー編 第2回目
6月17日(金) FM広島→16:00〜16:30
         FM大阪→20:00〜20:30
6月18日(土) FM愛知→12:30〜13:00
         FM仙台→12:30〜13:00
         FM福島→18:00〜18:30
         FM北海道→19:00〜19:30
         FM福岡→19:30〜20:00
         FM静岡→19:30〜20:00
         東京FM→18:00〜18:30

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