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2005年11月

2005年11月24日

ヘンシューシャという生き物の習性


編集者ってのは、眠る生き物である。
いや、生き物は基本的には眠るわけなんだが、
この場合の“眠る”というのは、
その前に「どこでも」だとか「隙あらば」だとか
「仕事中でも」だとか「狂ったように」だとか、
そういう言葉が前にくっついた“眠る”なのだ、
と考えれば「なるほど」と納得してもらえるだろう。

そう、編集者は眠る。ところ構わず眠る。

ネコ・パブリッシング・ビルの中は編集者だらけで、
そりゃもう腐るほど編集者がいて、中にはときとして
ほんとに腐ってるのか? ……と思えるほど
こうばしい芳香を放ってるヤツすらいるくらいだ。

とにかく編集者は眠ってしまう生き物だから、
机につっぷして眠るなんてのは当たり前、
右手でマウスを握り、左手で本を押さえ、
そのままの姿勢でコト切れてるヤツだって珍しくない。
椅子に座って、ゴルゴ13に狙撃された遺体のように
コクリと首だけ傾けて眠ってるヤツもいれば、
器用に横になり棚に収納されて眠るヤツもいるし、
梱包用の半透明になってるプチプチに
新巻鮭のようにくるまれて眠ってるヤツもいれば、
明らかに眠ってることは誰の目にもバレてるっつーのに
サングラスかけて腕組みして眉間にシワを寄せ、
考えごとをしてるふりして眠ってるヤツだっている。

そういえば、懐かしのバブルの頃だったように思うのだが、
「ナンノダレベー、○歳。職業、エディター。
恋人、妻。週末、活字を忘れる」なぁーんていう
やたらとハキハキしたナレーションで、
その「職業、エディター」が「恋人、妻」を相手に、
……ん? 「恋人、妻」は見てるだけだったかな?
まぁいーや、とにかくその「職業、エディター」が
テニスだったかスカッシュだったかを楽しんでる、
不気味なくらい爽やかなテレビCMがあった。

……アホか。

いったいどんなリサーチをすれば、
そんな幻のような編集者の姿に行き当たるのだろう……?

そもそも編集屋なんぞは活字ジャンキーみたいなもんで、
常に何かを読んだり書いたりしていることで
ようやく自分のアイデンティティを保てる生き物。
週末にスポーツしたりすることもあるかも知れないが、
活字を忘れることに成功するなんて現実はまずあり得ない。
それどころか、のんびり休める週末は……っつーか、
もしそういう週末があると仮定したらの話だが、
やっと“仕事として接してる活字”を離れて
“最も好きな世界の活字”にのめり込めるわけで、
そのうえ休日だからとのんびり本を片手に横になれば
3分たらずで眠りに墜ちることが解っていても、
ついついそうしてしまう習性すら持ってるものだ。

つまり、編集屋は“読み”と“書き”のオタクなのである。
「萌ぇ〜」とかいってる男達と、
実は根っこの部分では何ら変わりはないのだ。

古今東西、オタクという生き物が美しかった試しはない。
崇高だったことはあっても、美しかったことはない。

あの時代、俺はまだ編集屋にはなっていなかったが、
職業を選択する際に敢行した綿密な調査の結果、
「そんな編集者は存在しない」ということを再確認して
そのうえでこの世界に足を突っ込んだワケだし、
20年前のネコ・パブリッシングの面接のときだって、
今や直属の上司でもある社長の笹本
散々脅しをかけられた。
笹本が当時から脅しにかけて超一流だったのは確かだが、
編集屋が“美しい職業”ではないということは、
その遙か以前からの真実だったのである。
そう、編集屋の世界なんつーのは、有史以前から、
爽やかで煌びやかで知的で美しくてカッコイイ、
という幻想とは最も離れたところに位置していたのだ。

いやいや、またしても話は思い切りズレまくったが、
何しろ編集者というのは眠る生き物なのだ。
俺はティーポ編集部のあった4階から
カー・マガジン編集部のある3階に降りてきて、
挨拶代わりに近隣のデイトナ編集部のスタッフや
オートカーのスタッフが眠っている写真を撮って
それぞれの雑誌別サイトのスタッフ・ブログに
アップさせてみたりしたわけだが、
いやー、それにしても皆、実によく眠る眠る。
“眠り写真”はもはや俺のライフワークになりつつあって、
公序良俗に反するものや嫁に行けなくなるものこそ
表に出すわけにはいかないので我慢してるが、
まぁこれの11月2日のところとか
これの10月27日のところを、見てみるといい。
隠せぬ証拠である。

かくいう俺も編集屋として20年以上生きてるわけで、
眠りに関する美談のひとつやふたつくらいは
もちろん持っている。思い起こせば若い頃、
徹夜に徹夜が重なり、仕舞いには徹夜で眠っちゃって、
印刷所の担当さんに絞め殺されそうになったこともあった。

そういえば、近いところでもこんなことが……。

11月12日〜13日にツインリンクもてぎで開催した
ヒストリック・オートモビル・フェスティバル
その最終日のパドックにいた運営スタッフ達の間では、
前夜に宿泊したホテル・ツインリンクの
とあるエレベーターホールにあったソファで、
明け方、深く腰掛けてクチを開けたまま眠りこけてる
俺の姿を目撃した、という証言が相次いだ。
ゲストで来てくれてた日本のトップ・ドライバーのひとり、
一緒に酒卓を囲んだ井出有治選手にまで
「起こそうかどうしようか悩んじゃいましたよ。
あまりにも気持ちよさそうだったから、
よく考えてそのままにしときましたけど」と……。

俺は果たしてあの晩、ほんとにそこで眠ってたのか?
あるいはドッペルゲンガー現象ではないのか?

もしほんとにそこで眠っていたのだとしたら、
あの晩、あのフロアを利用したほとんどの人に、
俺は愛くるしい寝顔を目撃されていたってわけだ。
……うー。
誰かがカメラに収めてたりはしないだろうか。
……うー。
どこかで晒し者になってたりはしないだろうか。
……うー。
俺だけ晒されるのは悔しいから、他のヤツも晒そう。
うんうん。そーだそーだ。それがいい。

写真の男は、今でこそフリーランスとして独立してる
カメライター(カメラマン+ライター)のK藤くん。
彼は以前、ネコ・パブリッシングの編集者だった。
今でも当時の習性が抜けきっていないようで、
担当者がほんの少し目を離した隙に、
イベント当日、もてぎのメディアセンターの椅子を並べ、
まるで砂かけ婆さんの攻撃でも受けたか? と思えるほど
呆気なくコトッと眠りに墜ちたのだという。
知らせを聞いて現場に急行した俺は
その姿を写真に収めて満足したわけだが、
後で「いやー、風邪をひいたっぽい」っていわれても、
そりゃしょーがねーだろ……と頷く以外に手はない。
一部お見苦しいところがあるので
本人の名誉のために目線を入れてみたのだが、
技術不足で今イチ上手にできなかったから、
すまんがこれで許してくれ、近Dくん。うはははは。

考えてみれば、夜中にこんなことばかりやってるから、
寝不足になって“いつでも”眠りに墜ちちゃうのかも……。
うーむ……編集者ってヤツぁ……。

2005年11月 9日

ちっともさえない夜


うむ……。岡っぴき、である。
いやいやいやいや、ごめんごめんごめんごめん。
おもしろくなかったね。うん。さえがないよな。
うむ……。風邪っぴき、である。
どーにもこーにも、風邪っぴきなのである。

目下のところ、37.4度の発熱中。
というと「たいしたことねーじゃん!」なのだが、
俺の平熱は35度+αくらいだから、
36度半ばをちょっと超えると、だいぶキツイ。

先週の火曜日の夜に「これはオカシイぞ」と思い、
翌水曜日にはカクンとダウンして、
文化の日はちゃんと寝転がってるうちに1日が終わり、
金曜日には「もう大丈夫だ」と思ってバリバリ仕事し、
土曜日は再びしっかりヒックリ返ることになって、
日曜日にはやらなきゃならないことがあったから
むりやり出社してモソモソと仕事をし、
月曜日には「もう大丈夫だ」と思ってたのに
夜になったら頭が割れるように痛み始め、
本日・火曜日は頭痛こそおさまりはしたものの、
悲しくもないのに涙目みたいな顔して仕事場にいた。

瞳をキラキラと潤ませているからといって
誰かほめてくれる人や惚れてくれる人がいるわけでもなく、
「茹だってるみたいですねぇ」だとか
「赤いんだか青いんだかハッキリしてください」だとか、
ヒトの顔色の変化を楽しんでるような言葉の
それはもう歳末大売り出しみたいなもんだった。
俺は妙なところで負けず嫌いだから
立場が逆だったら俺のヴォキャブラリィの総てを駆使して
グウの音も出ないくらいにしてやるところだが、
今日のところは負けといてやることにした。
俺は勝てない戦いはしないタイプなのだ。
いや、われながら男らしくないという自覚はあるのだが。

しっかし、散々な1週間である。
「完治しないうちに出歩くほうが悪い」という声もあろうが、
この風邪のタチの悪いところは、
バタリと伏せって立ち上がれないほど悪化することもなく、
「これならもう大丈夫そうだな」
と思えるようなボーダー・ラインを浮き沈みしながら
退屈の苦手な俺を揺さぶってくることである。

そもそもこのタチの悪い風邪は、
カー・マガジン編集部で最も屈強そうに見えるサバシが
ラリージャパン取材の北海道で保菌してきたものを、
帰京してから編集部中に撒き散らし、
スタッフがかわるがわる感染して苦しんだ後、
巡り巡って俺まで到達したもの。

1日だけ寝込んでから出社したサバシは、
その翌日には最もいかした兄ちゃん風なナリなのに
実は最もオタクであるウカイをやっつけ、
そのまた翌日には最も若いエンガクを血祭りに上げ、
さらに数日後には最もエロなフジワラを綺麗に葬り去った。
この季節ですらウチワが必要なほどの暑がり、
ということは最も食べ物の好き嫌いが激しいくせに
最も代謝が良いといえそうなサワムラを除けば、
編集部内での感染率は見事100%。
うーむ。サバシ菌、おそるべし……である。

サバシ。どうだ? 満足したか?

比較的いいヤツだが根に持つタイプでもある俺は、
さっきまで「サバシめー、覚えてろ。
これからおまえのことを“菌類”だとか
“ウイルスくん”だとか“細菌放射器”だとか呼んで、
永遠にイヤガラセしてやるからなぁ。
そもそも、そんないかついナリをしてるのに
まつげが長いってのが圧倒的に許せん!」と
ワケのわからない怒りの感情に支配されていたが、
今では完全にシオシオのパーとなり、
ベッドにヘタヘタと沈み込む寸前である。

こんなときは心を安らかにしてくれる音楽でも静かに流し、
穏やかな眠りが訪れてくるのを待つに限る。
そう考えた俺は、CDの山をガチャゴチャと漁って、
何枚かの候補を選び出した。

『ブルガリアン・ヴォイス』。うむ。妥当ではあるな。
『グレゴリオ聖歌』。おお、これもいい。
モーツァルトの『レクイエム』。
うーむ、綺麗は綺麗だけど、意味合いがちょっとな……。

……お。これだこれだ。これがいいじゃん。
スラヴァの『アヴェ・マリア』。よし。これにしょう。

驚くほど澄み切った高音を持つロシア人オペラ歌手、
スラヴァことヴィチスラヴ・カガン-パレイが
12人の作曲家の作ったそれぞれの『アヴェ・マリア』を
自らの編曲とシンセサイザーの演奏で唄う、
何とも静かで穏やかで美しい、心に優しいアルバム。

俺は自分のチョイスに大きく満足しながら、
ケースを開けてCDをプレイヤーにインサートすると、
再生スイッチを押してベッドに横たわった。
だが、次の瞬間にガバッ! と跳ね起きることになる。

チャラリーン♪ 鼻から牛乳♪

かっ……嘉門達夫じゃねーか……。

俺の頭の中に、あるひとりの男の顔が浮かんできた。
……やろー、CDを入れ間違いやがったな。
そう。3ヶ月前にこのCDを貸してやった友達は、
おおよそ信じ難いほどの、果てしない粗忽者だったのだ。
おかげでとても“心穏やか”なんて気分ではない。

しかも、今になって時計を見たら、
まだ1時間も経ってないような気がしてたのに、
この『随筆』を書き始めてから知らぬ間に5時間経過だ。
確かに頭も指先も異様に動きが鈍い自覚はあるが、
まさかこれほどまでに感覚がバカになってるとは……。
こんなんじゃ熱だって下がるはずはない。
おまけに……さえない。ちっともさえてない。
書き始めからして「岡っぴき、である」ときた。

何だが、熱がまた上がってきたような気がする。
俺は明日、仕事場に向かえるのだろうか。
それとも……。
そう。それは、神のみぞ知る──なのである。

お? そういえば『神の味噌汁』ってのがあったなぁ。
……ダメだ。もうダメだ。

何だか今夜は、てんでさえない。

2005年11月 1日

熱い気分になってきた!


俺のこのコーナーはあくまでも『随筆』であって、
「今日はこんなことがあってこんなことをしました」
なんちゅー日記形式のブログをしてるつもりなんてない。
だってさぁ、フツーのサラリーマンの日記なんて、
みんなだって読みたくなんかないでしょ?

そーゆーわけで、日々更新を目標としつつ、
心に移り行くよしなしごとをそこはかとなく書きつくろう
と思ってるワケなのだが、禁を破る日が来てしまった。
うはははは。だってとてもじゃないが無視のできない
出来事が、今日、明らかになったからである。

鈴木亜久里さんが、F1チームの立ち上げを発表した。
その名も『SUPER AGURI Formura 1』。

過去、日本人F1ドライバーとして初めて表彰台に登った
鈴木亜久里さんを知らない人もいないだろうが、
世界に通用するレーシング・ドライバーの育成を目指した
彼がプロデューサーを務めるARTAプロジェクトは、
スーパーGTシリーズでGT500、GT300の両クラスともに
目覚ましい成績を残すトップ・チームであり、
アメリカン・レーシングの頂点であるIRLシリーズにも
日本人ドライバーを送り込んで戦っている。
これまでも何度か亜久里さんがチームをつくって
F1グランプリに殴り込みをかけるという噂は流れたが、
それがようやく現実になったのである。

レースの世界は、金さえあればどうにかなる、
なぁーんていう甘いもんじゃない。
もちろんそれがなければスタート地点の“ス”の字にも
立つことはできないのだけど、
予算があるだけではどうにもならないことってのが、
レースの世界には山とあるのだ。
ちょっと一般の人の想像を遙かに超える厳しい現実が、
そりゃもうごちゃまんと存在してるのである。

アマチュアのサンデー・レースにエントリーする
ということひとつとってみても、
クリアしなきゃならないものってのがあるでしょ?
F1グランプリにチームとして参戦するってことは、
その何億倍の予算が必要になるってことであり、
その何億倍の交渉ごとが必要になるってことであり、
その何億倍も用意しなきゃならないものがあり、
その何億倍も悩まなきゃならないことがあり、
その何億倍も……いやいや、もうヤメとこーな。
要するに、だ。ひとことでいうなら、
何億倍ものエネルギーが必要になるってことだ。

発表の内容は、こんな内容だった。
「10月26日にFIAに対して、新しいF1チーム
『SUPER AGURI Formura 1』を立ち上げ、
2006年からF1世界選手権シリーズに
参戦するための参加申請を行った」
つまり来シーズンからの参戦が確定したわけではなく、
可否は12月初旬のFIAの回答まで待たねばならないが、
こうして発表があったということは、
チームとして来シーズンからの参戦の目途はほぼ立った、
というふうにとらえていいんじゃないかと思う。

……すげーなぁ。
……よくぞここまでっ!

俺のようなズブのシロートがモノ申すのもナニだが、
チラ見しただけでもアブノーマルと感じられるくらい、
恐ろしく特殊で異様に厳しい世界であるレース界の実状。
これがどれほど凄い出来事かってことは
ちょっとやそっとじゃ言葉に変換することはできない。

緊急発表の場となったのは、東京・青山にある
ホンダ・ウエルカムプラザ。……とうことは
噂になっていたホンダのセカンド・チームの発表だな、
と多くのプレスは思い込んでいたわけだが、
おそらくホンダが有形無形のバックアップをするだろう
と見られてはいるものの、
あくまでも独立したチームとして活動していくという。

現時点では、まだ発表されていることは多くない。
というか、シャシー名が『AGURI』、
エンジンが『ホンダV8』ということが明かされた以外、
ほとんどの興味の的となる部分はヴェールに包まれている。
期待していたドライバーの発表もなし。
BARホンダとの契約が切れた佐藤琢磨選手か?
という噂については「交渉中」とのことで
候補としての最も太い線であるようだが、
今のところは発表できる段階にはないようだ。

ともあれ、俺は今日、妙に喜ばしい気分なのだ。
あくまでも私感であるが、
おそらくSUPER AGURI Formura 1チームは、
佐藤琢磨選手とともに
F1グランプリを戦うことになるだろう。

琢磨選手がF1にフル参戦する前年の秋の3日間、
今年ももうじきツインリンクもてぎで開催する
『ヒストリック・オートモビル・フェスティバル』
彼がコーンズ所有のフェラーリF1をドライブしたとき、
俺は彼の露払い役みたいな立場で同じ現場にいた。
「佐藤琢磨、来季F1参戦!」のニュースが飛び交った
直後ゆえ、どこにいってもサイン責めの握手責め、
彼はひとりで自由に移動することもできなかったため、
「はい、ここまでねー」「あー、ちょっと通してください」
と阻止する役目を笹本シャチョーから仰せつかったのだ。
起用の理由は、どうやら“人相”と“風体”だったそうな。
まぁわれながら似合ってたとは思うが。……うむ。

それだけのことで「俺が琢磨を育てた」なんて
凄まじいことをいうつもりはサラサラないが
(ふはははは。よくいるじゃん、そういう“俺が”系)、
完全なるウエット・コンディションの中、
様子見のために1ラップをゆるりと走った後、
2ラップ目からは見てるこっちが
ポカンとしながら鳥肌を立てるという状況に追いやられる
とても現実とは思えない走りを披露してくれた琢磨選手は、
俺の中で完全にレーシング・ヒーローのひとりになった。
いや、あれを間近で見せられちゃったら当然だと思う。
彼は「職業:F1ドライバー」ではなく、あの時点で、
人としてとっくに「ファイター」だったのだから。

最も“戦っている”F1ドライバーのひとりである
琢磨選手をBARホンダが起用しないとなったとき、
「にゃろ、ホンダめぇ」と思った人も多いことだろう。
その後、各所からの中途半端な発表と
それをきっかけとした噂だけがひとり歩きし、
俺達ファンは日々やきもきしていたわけだが、
まだ確定とはいえないまでも、
こうして明るい兆しが現実味を伴って見えてきたのである。
これを嬉しいと感じずして、何を嬉しいと感じればいい?

俺はバカだから、極端なことをいってしまえば、
実は勝ち負けなんてどうだっていいのだ。
ただただ、あの痺れるような走りを見ていたい。
理屈じゃなく、身体の芯から震えが来るようなあの感覚を、
味わっていたいと思うのだ。
F1ドライバーとしてやはり俺達をワクワクさせてくれた
鈴木亜久里さんのチームで彼が走ることになれば、
その喜びは2重にも3重にも膨らむと思わないか?
気持ちもグイグイと投影できると思わないか?

まだまだ高いハードルが、いくつもあるだろう。
けれど、無責任は承知だが、ひとりのファンとして、
どうか頑張って俺達に夢を与えてくださいと
心からお願いしたいと思うのだ。

……うーし、今夜は飲むぞぉ。
うははははははは。