2006年1月 9日

1050円の小さな幸せ


今年の正月休みは大掃除と手帳の整理以外
考えてみれば印象に残るようなことはほとんどなく、
呆れるほど無為に過ごした休日だった。
いわゆる正月料理とも縁はなく、どこにも出掛けず、
バチ当たりなことに初詣にすらいかなかった。

何もしないで過ごす休日というのは贅沢このうえない。
それは去年の夏に得た素晴らしい人生の教訓だ。

だが、全国的にひたすら休日が続いてるさなかだってのに
予定は何もなし、とーぜん色っぽいお誘いも皆無ってのは、
40を過ぎたオトナの独身男としてどうよ?
と旧くからの友達に小馬鹿にされたりもした。

その辺り、ティーポの契約ライターにして
レース・アナウンス名人、45歳をとっくに過ぎてるけど
まるで聖職者か求道者のように色っぽい話と縁がない、
“ミスター腹式呼吸”ことナカジ〜辺りは
いったいどう考えてるのか聞いてみたいもんだとも思うが、
自分としては「まぁ今年はこれでオッケ」ではあった。
浮き世と自分を隔絶した、ある種快適な精神的引きこもり。
2005年はあまりにも頭の中身の振幅が激しかったし、
こうした「ぼけ〜っ」と「のほほん」こそが
いつもの自分を取り戻させてくれるように思えたからだ。
……ん? いやいや、その“いつもの自分”ってやつが
いいかどうかってのは別としてね。

ともあれ、どこか世の中から置き去りにされながら、
過ぎ去りつつあった冬休みの最終日──。

明日からまたバリバリと仕事だ……という現実を前に
「今夜は美味いモノ喰って気合い入れるべ」と考えた俺は、
極上のおでんでもこしらえるつもりになって、
毛糸帽とスウェット姿にサンダル履きという
おおよそ「気合い入れる」とは段違い平行棒の恰好で
通い慣れた近所のスーパーマーケットへと足を踏み入れた。

入口を入ると見慣れない特設ブースができあがっていて、
そこには映画のDVDがズラリと並んでいた。

……なにぃ? 1枚1050円均一だと?
なになに? 『この価格、本日限り』だって?

俺は立ち止まると、いきなり物色をはじめた。
新しめの映画のタイトルは見当たらなかったが、
過去に一度観たことがあるか何度も観てるか、
あるいは観たことはなくとも名前くらいは知ってる、
そうした世界の名作系がワンサカとあった。
それが1枚1050円である。

たっぷり30分の時間を費やして3枚を選び出し、
気味の悪いくらい愛想のいい兄さんに3150円を手渡すと、
俺は満足してスーパーマーケットを後にした。

……さーて、どれから鑑賞しようか。

オードリィ・ヘップバーンが主演をつとめる、
前からいずれ買おうと思っていた『ローマの休日』、
それに『シャレード』という2つの作品。
子供の頃に食い入るように観た『オズの魔法つかい』。

『ローマの休日』は何度も観てるから、まず外した。
残りの2作は過去に1〜2度は観たことあるが、
両方とも同じように大雑把な流れしか覚えてない。
悩んだ結果、俺は『シャレード』を選んだ。
幼い頃に憧れたお伽噺の世界への郷愁よりも、
幼い頃からほのかに憧れ続けている美しい女性の
見慣れぬ衣装を身につけた見慣れぬ姿を見たいという
男としての正直な興味が勝った瞬間だった。

『シャレード』は1963年のアメリカ映画。
翌1964年の英国アカデミー賞で
オードリィに女優賞をもたらした作品である。
主人公であるオードリィの夫の謎めいた死から始まる
連続殺人を巡ったサスペンス……といわれてるが、
台詞のひとつひとつや登場人物の仕草風体が
とってもイノセントで洒落てるし、
タッチがどことなくコメディ仕立てだったりもして、
ひとことでサスペンスと類別することはできないような
様々な魅力のある作品だと感じた。
展開、リズム、ロケ場所、大道具、小道具、そして役者。
コンピューターや特殊技術のない時代に
創意工夫と手間暇をふんだんにかけ、
知恵とセンスでこれだけ“魅せて”くれるモノに
仕上げているのだから、昔の映画というのはスゴイ。
最近の映画によくあるインスタントな印象はどこにもなく、
シーンごとに人間的な温かみすら感じられる。
いい映画だな、と素直に思えた。

それにしても、オードリィ・ヘップバーンの美しいこと。
というより、美人だどうだを述べる以前に、
めまぐるしく変わる表情がとっても魅力的なのだ。
彼女のように表情が豊かな女性が目の前に現れたとしたら、
間違いなくメロメロになるなぁと改めて感じた。てへへへへ。
これほどの女優さん、そうそういるもんじゃない。
彼女を眺めてるだけでも充分に価値はあると思う。

加えて、背景に登場してくるクルマの面白さだ。
例えばオードリィとその相手役が一緒に乗るタクシーが
シトロエンDSだったりするわけで、
それ以外にも端々にチラッと写るクルマが、
舞台となったあの時代のパリの路上を象徴している。
古い映画を観るときにこうした部分まで楽しめるのは、
クルマ好きだけの特権みたいなもんだろう。

というわけで、俺としては退屈知らずの2時間を過ごし、
1枚たった1050円の映画のおかげで大満足な一夜だった。
おでんの具を買い忘れて帰ってきたおかげで
ひもじい想いをしたことを除けば、だが。

それに後日、本屋さんを回って捜し物をしたときのこと。
同じDVDが何と1枚500円!
それぞれ、たった500円で販売されていたのだ。
いったい何が『この価格、本日限り』なものか。……けっ!
俺はスーパーマーケットの策略に、
綺麗サッパリはめられていたのである。

でもまぁ気分がよかったから許してやることにする。
ああ、愛しのオードリィ……。

コメント (6)

くるきち:

>嶋田さん

参考までにこちらのリンクを貼っておきますね。

http://www.brother.co.jp/jp/mymio/mymio.html

あと複合機もいろんなモノがありますので、お暇な時に
電化店にいかれるとよいと思います。

嶋田でーす!:

くるきち殿。
名画鑑賞ってほど高尚なもんでもないんだけどねぇ(^^;)
ただ、発作的に見たくなっただけでござんす。
プリンター? そういえば俺、持ってないや。
プリンターとスキャナーとFAXが兼用のヤツってなかったっけ(・_・?

くるきち:

名画鑑賞ですか。いい過ごし方ですね。

正月の間新春セールを狙ってプリンタ選びしてました。
年末に今まで使っていたのが壊れました。
5件くらいまわって15000円でそこそこいいのを見つけ
て、それを買いました。

嶋田でーす!:

ぱぱん様。
いやー、こんな過ごし方ができるのって年に数えるほど。
でもね、独り者ってそう悪くもないとは思うけど、
ごくごくたまーに誰かと一緒に暮らしたらそれはそれで楽しいかも、
なぁーんて思うこともあるんですけどね。まぁ無いモノねだりってヤツ(^^?

じぇりー様。
なるほど(^^) 電車で動く日があったら、探してみます。
んーで、じぇりーさんがマジメに仕事してるかチェックする(^^)
でも時間に余裕を持って……っていうのが、ちょっとなぁ(^^;)

じぇりー:

ぱぱんさんの言う通り『値段』じゃないっしょ?!(笑)
この連休もそのJRの某回る飲食店で走り回っていたので、自分
で決めた事とはいえ、そんな時間自体が私も羨ましいです。
年末29日から始めた事も今度の週末は「ご挨拶回り」でお休み。
なので、つい訳ありで土日と12時間勤務という暴挙を働き、昨日は
身体のキレが悪い事、この上なし!
3日間おにいにお迎えをしてもらいながらも、ちょっと年甲斐も無く
無理しちゃったみたい。f(^^;;
基本的にお昼頃から夕方6時までは(日によってはエンドまで)います
ので、冷やかしお待ちしております。
ただ、混むお店だから時間に余裕持って来てね!!(笑)

ぱぱん:

なんの用事も無くても、子供に追いまわされている家族持ちには
羨ましい過ごしかたですね。
まあ、他でもっと安いのは買う機会が大事で、値段は気にしない
と言うことで良いのでは?
私も一昨日安いと思ってMP3プレーヤーを買いましたが、いつ
でも買える値段でした。どうせなら容量の大きい方を・・・。
まあでも、きっかけが無いと買わないので良かったなと思う事に
しました。(無理やり納得??)
そういえば話は変りますが、ふとしたきっかけで買った我が家の
アルファはライトのスイッチが接触不良で本国から部品到着待ち
になってしまいました。いや~初めての経験(故障?)がいっぱ
い出来る車です。

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