2006年3月15日

La toletta d'italia.

北イタリアのとある街にあったとある場所で、
俺は極めて難しい選択を迫られていた。
あぶら汗がただでさえじわりと滲み出てきてるのに、
一刻も早く決断しなければならない状況。

……ど……どっちだ?
いったい、どっちなんだ!?

簡単に結論なんて出せるはずもない。
なにせ、こんな問題に直面したのは初めてなのだ。
俺は頭を抱えてしゃがみ込みたくなった。

けれど、しゃがみ込むことはできなかった。
男としての誇りが賭かっていた、と言えなくもない。
人はパンを喰ってさえいれば生きていける、
という単純な生き物でもないのだ。
昔の人は尊い言葉を残したものである。

だが、しゃがみ込めないのには、
もっと切実な理由があった。

俺は前を向いてしゃがめばいいのか、
それとも後ろを向いてしゃがむべきなのか、
さっぱり判らなかったのだ。
しかも、俗世間とその個室を隔てる扉には、
鍵というものが最初から存在してなかったのである。

俺が前を──あっち側を向いてしゃがんだとする。
もしそこで誰かがドアを開けて入ってきたとしたら、
いったいどうなる……?
慌てて振り返って凄んだとしても、
そういう状況で即座に立ち上がれるものでもない。
まるで「どーぞ、ケツでも蹴っていってください」
とでもいわんばかりの無防備さである。

ならば逆に後ろを──こっちを向いてしゃがんだとしたら?
誰かがドアを開ければ一瞬にして目が合うわけで、
その侵入者は次の瞬間には確実に視線を下に降ろすだろう。
にもかかわらず覆い隠してくれるものは何もなく、
ものの見事にむきだしの丸見えなのだ。
そんな状況でニコやかに「チャオ!」と手をあげても、
バツの悪い想いはますます深くなる一方だろう。
ならばいっそのこと最初から斜に構えて腕組みでもして、
いつドアを開けられても大丈夫なように
あらかじめ睨みを効かせて準備をしておくべきか──?

俺はとりあえずジャケットを脱ぎ
ドアの内側にあるフックに引っかけた状態で、
ジーンズのボタンに指をやったまま苦悩した。
あぶら汗が少しずつ濃くなってきている。
何となく時計に目をやると、すでに10分が経過していた。

そこで俺は素晴らしいことに気がついた。
土壇場で活路を見出したような気分だった。
個室に入ってから10分が経過してるのに、
他の人間の気配がしたことは一度もなかったのだ。
ということは、立地条件なのか流れる“気”なのか、
いずれにしてもここは基本的にあまり人が立ち寄らない、
そういう場所であるに違いない。
うん。きっとそうだ。そうに決まってる。

空に被さっていた雲がパッと消え去ったような気分で、
俺はボタンを外し、しゃがむ準備を整えはじめた。

──ああ、これで悩みや苦しみから解放される。
本能と誇りの狭間で、もう押し潰されることもない。
神々は小さな喜びを至福の瞬間に昇華させるために、
ときに苦しみという名の試練を与えるのだ。
うむ。生きるっていうのは素晴らしい。

そしていよいよ膝を曲げようとした瞬間──。
「○△$×*◇♪#▽?」
「△▽@○*%□◇&▽×○$#△!」
というイタリア語の巻き舌な会話とともに、
ガゴン! ともうひとつ外側にある扉が開いて
ふたりの男が入ってくる気配がした。

俺は3秒で身支度を整え直してジャケットを手にとり、
カチャッと扉を開けると、ツカツカ急ぎ足で外に出た。
真冬の北イタリアは、シャツ1枚なら凍死できるほど寒い。
だが、あぶら汗はちっとも引いていこうとしない。

再び、俺の長い旅が始まった。

思えばこれが、風邪をこじらせ、
気管支炎に倒れるきっかけだったのかも知れない。
全部がこんなだってわけでもないのだが、
だから俺はイタリアのトイレが嫌いなのだ。

コメント (0)

ティーポの嶋田でーす!:

ackさま。
別にそんな偉い生き物でもないし、
よっぽど仕事が切羽詰まってたり出張に出たりしてないかぎり、
普通にお返事させてもらっちゃいますってばぁ(^^;)
膝はねぇ、雨がじゅくじゅく続いたりすると重〜く痛むのと、
ピロボールの噛み合わせ(?)が悪い状態で重心かけちゃうと悲鳴が上がります。
最近はクルマと同じで安全性の問題を考慮して大きく重くなってることもあって、
足周りにのる荷重も大きくなってるから先が思い遣られます。とほほ……。
今度ともちょこちょこと書き込みしてくださいね(^^)v

ぱぱん殿。
なつやしや、電動スーパーセヴン(^^)
そういえば今日、日本自動車大学校の学生さん達がつくった
30型カローラのEVに乗らせてもらいました。
ミッションは元のを活かしてるし、よく走るし、かなり感激しちゃいました。
それはそうと、全自動トイレ。
きっとデパートとかで遭遇したら、俺はまたどうしたらいいのかわからず、
散々フリーズしたうえで風邪をひくことになるかも(^^;)
やっぱりスタンダードなのがいいなぁ。

ぱぱん:

嶋田さん
うちが買ったのが多分出初めだと思いますよ。
EV7日本一周の時に、田口さんが泊まりに来た時には既に有りましたから結構昔ですね。
最近では、デパートのトイレなんかで使われてたりしますので、探してみて下さい。

ack:

編集長からコメントいただけるなんて感激です!そうですか、へんしゅーちょーも膝に爆弾持ちでしたか。それでチンクからフェラーリまで、さすがです。それでも酷使はよくないようですよ。正座と”和式”はご注意ください!ちなみに昨年行った新FISCOは洋式でほっとしました。来週末に鈴鹿チェック予定です。

ティーポの嶋田でーす!:

事情通に聞いたところによれば、
このトイレはどうやらこっち側を向いて座るのが正しいらしい。
というのも、まずはほら、トイレットペーパーの位置。
むこうがわを向いてたら、後ろに手を伸ばさないとダメでしょ。
バランス崩して尻餅つきたくないもんね。
それからもひとつ。こっちのほうが重要なんだけど、
イタリアって日本よりもやっぱりどうしても治安の部分ではよろしくない。
背中を向けてたら襲われやすいってのが一番の理由みたい。
ああ、普通にしゃがんでおけばよかった(^^;)

マリコさま。
ダリオさんってダリオ……誰よ?
風邪、早くよくなるといいねぇ。

あき様。
そうそう。だだっぴろいトイレって落ち着かないよねぇ。
つい挙動不審になっちゃうその気持ち、よーくわかるよ。うはははは。

ピロナオさま。
ぜ……全自動(・_・? そんなのがあるの、俺は知らなかった。
俺は旧い人間なのか、ウォシュレットでさえ抵抗あるくらいだもん。
それにしても、流し忘れるってのは……マズイっすよねぇ。
桃太郎じゃないんだから、ドンブラコって浮いてたら……。

特・名機某さま。
いや、あのね、全部が全部こうだってわけじゃないんですよ。
ホテルなんかだとちゃんと、いわゆる洋式だし。
たまーにコレに当たるとギョッとするけど(^^;)

ぱぱん様。
えぇーーーっ!? 10年も前から全自動って存在したの?
俺ってもしかして……かなり遅れてる(^^;)?
いや、別にトイレで進んでなくても一向に悔しくはないんだけど。
いやー、そうかぁ。そうだったのかぁ……。

ackさま。
はじめまして……かな(^^)?
俺も武道やってた頃に故障して、バイクで大転倒してますます酷くして、
膝間接のピロボール部分は実はいまだに完璧ではないのでした。
日頃は日常生活にはそれほど不便を感じないでいられるのは幸せですが、
無理したりして曲げ伸ばしが結構きびしくなることが年に1〜2回あります。
そんなときに和式にあたると……やっぱりツライっす。
まるでコザック・ダンスを踊ってるような気分になるもん。
でも、アルファV6でリハビリだなんて、素直に頭が下がります。
これからもクラッチ・リハビリ、楽しみながらがんばって続けてくださいね(^^)

ack:

左膝の悪い僕は大腿四頭筋のリハビリが必要と言われていました。AlfaV6のクラッチを踏むこと数年、少し調子よくなってきました。でも未だにトイレは洋式オンリー、ってイタリアって洋式じゃないの???!!!

ぱぱん:

なぜか共通点の多いピロナオさん・・・。
我が家のトイレも自動です。まあ、手違いで高いのが付いてたのですが・・・。
10年前から使ってますが、その頃はあまり見かけなかったので、遊びに来た人の反応が面白かったですね。
そうそう、慣れると忘れちゃいますね、気をつけないと!

特・名機某:

嶋兄ィ
イタリアのトイレには○かくしというのは無いんだね。
こりゃ日本人ニャ使いづれぇトイレだこと。

ピロナオ:

ぶはははははー(^_^)
緊迫したスリリングな文章の最後に実際のトイレの写真が出てきて
このプロットの巧みさに笑い、感動です!

実はウチ、トイレにはちょっとお金がかかっています。
自動でフタが開き、事が済むと勝手に水を流してくれる全自動のヤツです。
便利だしとっても気に入ってるんですが、コレに慣れてしまうと
人ン家のトイレに入ったときなんかによく流し忘れちゃうんスよね~(>_<)

あき:

写真見ましたが、これじゃ、私もどっちを向いていいのか
迷いそうです。

お手洗いと言えば、数年前に、個室で広さが2畳位で、
小石が敷き詰められ、日本庭園かと間違えるように、
小川が流れ、小さな松が植えられ、獅子嚇しが
飾られている所に入った事がありました。
「自然の中」と言う感じは無く、緊張しました(--;

マリコ:

大変でしたねm(__)m
イタリアで困ったら
ダリオさんに聞けばいいと思います(^o^)
私も風邪で本当に困っていますm(__)m
嶋田さんもお大事にしてくださいね(^o^)

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