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2006年05月

2006年05月28日

否定はできない

初めて「お?」と気づかされたのは、
確か24歳のときだったと記憶している。
『モントレー・ヒストリック・オートモビル
・フェスティバル』を観戦しにいったときに、
ラグナセカ・スピードウェイの屋台で
先輩に命じられたミルクシェイクを買っているとき、
そこの売店の明らかに自分より若い女の子に
プエルトリコ人の子供だと思われたのだ。

さらにその夜、モントレーのホテルのバーで
ブラジル人の未成年だと一方的に判断されて、
部屋までパスポートをとりにいって見せるまで
ビール1杯たりとも出してもらえなかった。

次に「お?」と思わされたのは、
5〜6年ほど前の渋谷駅での出来事だった。
ホームで電車を待っているときに
背後から「カルロス! ……カルロス!」と声をかけられ、
もちろん自分が呼ばれてるとは思ってもいないから
黙って立っていたら、ガッと肩をつかまれて
「カルロス!」と顔を覗き込まれたのだ。

もちろん俺がカルロス君であるはずもなく、
その男はハッとして落胆したような表情を浮かべたのだが、
聞けば一緒にブラジルから出てきた友達が
1年ほど前から行方が判らなくなっていて、
ずっと探していたのだという。

可哀想な話ではあるが、
俺にしてみれば「うーむ……」な話でもあった。

それ以降は、おそらくラテン・アメリカ系と思しき
外国人にいきなり母国語と思われる言葉で
話しかけられたことが何度かある程度で、
たいしたことがあったわけでもないのだけど、
つい先日、メイルに貼付されてきた写真を見て、
俺は「こっちもあったのか……」と
ガックリと膝を折りながらも、
妙におかしくなって笑い出してしまった。

だって……これだもの……。

聞けばとあるインドの雑誌の広告ページらしいが、
ほぼ同じなのは髪型だけで、目も眉も鼻も口も
ひとつひとつはちっとも似てないのに、
全体として見たら「うーむ……」なのだ。

試しに俺の顔を嫌というほど知ってる
親しい人達に黙ってメイルを転送してみたら、
爆笑の嵐だった。そのレスポンスの速いこと速いこと。

人間、誰しもこの世にそっくりな人が3人はいるというが、
今回ばかりは自分でも、
とてもじゃないが否定のしようがない。

うーむ……。


2006年05月27日

ああ、後遺症


『ジャパン・ヒストリック・カー・ツアー』は、
先導者である『0号車』のドライバーだった俺としても
存分に楽しい想いを抱くことができたイベントだった。

だってさぁ、イベントの特設ブログを見てもらえば
クルマ好きなら誰だって「そうだよなぁ」と
納得してもらえることだと思うけど、
参加車輌の顔ぶれを見て欲しい!
こうしたクルマ達をナマで見ることができて
サウンドまで楽しめちゃうのだから、
「ああ、いってよかったなぁ」と素直に思えるわけだ。

それに何といっても、走ったコースの素晴らしかったこと!
とりわけ山梨〜長野〜群馬辺りの高原〜山岳ルートは
「この国に生まれてよかった」と心から思えるほど、
美しく心に染み入ってくるほどのものだった。

だが先導車の役割は、そう楽なもんじゃない。
参加車輌と同じだけの距離を、いや、場合によっては
トラブル発生時のヘルプ部隊としても機能するために
密かに一部引き返したりすることもあるわけだから、
走る距離は参加車輌よりも長くなるわけで、
しかもそれでも参加車輌に先を往かれるということは
基本的には許されないという難しい問題を抱えてる。

参加車輌は決して遅くない。
ワインディングなどではウカウカしてると、
すぐに後ろにピッタリとつかれてしまう。
スタート時間の決まっていないステージでは、
道中の渋滞を懸念してこちらが想定してるよりも
1時間近くも早めにスタートしていく車輌があったりする。
慌てて朝食を切り上げて出発するのも、
昼食を置き去りにして走り続けるのも「普通のこと」だ。
スピード競技じゃないからペースはそれなりだが、
先導車はとにかくドライビングに気を抜けないのである。

昨年の経験があったおかげで、気合いを入れる意味でも
ドライビング・シューズを新調していったのだが、
……うむ、これは正解だった。
とりわけ2日目なんて道中の半分以上の区間が
ステアリングの操作をしっぱなしといった状態で、
それはつまりペダル操作もちっとも暇じゃないということ。

新たに手に入れて……というか足を入れてみたピロティ
スパイダーというドライビング・シューズは、
歩きやすくてフィット感も適切だから、
運転してない時間もそれなりに快適に過ごせたのだが、
やはりその性能(?)を最大限に感じられるのは
ドライビングでペダル操作を繰り返してる時間。
ソールはしなやかながら確たる剛性もあるし、
かかとの回り込み方やその形状が適切なおかげで、
ペダル操作のしやすさには全く文句のつけどころがない。
レーシング・シューズと比較すれば
ソールがやはり厚めだから皮膚感覚という面では劣るが、
それでもスリップオン・タイプとは
比べものにならないほど操作もしやすければ
伝わってくるインフォメーションの面でも優れてる。
スニーカーほどではないけれど、
レーシング・シューズと比べれば歩いていても疲れない。
つまり運転をするための普段使いのシューズとしては、
大満足といえるほどのなかなかに優秀なブツなのだ。

そんなわけで俺も含めて運営スタッフ一同
ヘロヘロのクタンクタンになりながら
晴れやかな気分で東京に戻ったわけだったのだが、
しかしっ! その日の夜から様相は一転する。

顔面が痛くてたまらなくなったのである。

その原因は、『0号車』として活躍してくれた
ディーゼル・ユニット搭載の
メルセデス・ベンツCLKカブリオレのトップを、
景気よくズバッと開け放ったまま走り続けたからだ。
すなわち、日焼けである。
俺の顔の構造上の問題なのかも知れないが、
眉毛の上の辺りのおでこと鼻筋が一発で判るほど赤くなり、
顔面の真ん中で『T』の字を描いてる。

現場にいるときからすでにヒリヒリ痛みはじめていて、
他のスタッフには「笑わせたら怒るからな!」と
矛盾に感じられそうなことを宣言していたのだが、
「編集部Tだから顔もTの字なんすか?」という問いに
怒りを覚えたときにもおでこがピキッと痛んだから、
笑っても怒ってもどっちにしてもアウトである。

結局、東京に戻ってから2日の間に2回ほど脱皮し、
ようやくそっちのほうは落ち着いたが、
そのときには3日間ほど東京を留守にしていたツケで
事前にこなしきれなかった仕事と
いない間にたまっちゃった仕事が山積みになり、
こっちのほうが全く落ち着かない状況に突入していた。

今、やっと原稿書きに入れるぞ! というところまで
何とか漕ぎ着けることができたのだが、
ふと時計を見ると今日もすでにこんな時間になっている。

だが、俺はがんばって原稿を書くんだーっ!
……明日からね。

2006年05月18日

ドライビング・シューズを新調した理由


この週末は、いよいよ毎年恒例となった
『ジャパン・ヒストリック・カー・ツアー』の開催である。
神奈川・静岡・山梨・長野・群馬をまたにかけて
総走行距離およそ750kmを走破する
ヒストリックカーを基本とするラリー・イベントだ。

参加車輌は1975年までに生産された
スポーツカーとサルーンカー。
そして、それ以降のスーパーカーと呼べるクルマ達。
この『走る自動車博物館』ともいえるイベントは、
20日(土)の13時に横浜赤レンガ倉庫をスタートする。

参加してるドライバーとコドライバーにとっては
3日間で700kmオーバーの道のりを走るわけで、
ヒストリックカーにとってもスーパーカーにとっても
アドヴェンチャーとすらいえる行為だが、
これ、観てる人にとっては様々な年代の様々なクルマに
1カ所で遭遇することができるわけだから、
クルマ好きにとってはたまらなく楽しい時間となるだろう。

ギャラリーにとって最もゆったりクルマを観られるのは、
やはりスタート地点となる横浜の赤レンガ倉庫。
土曜日の朝9時頃からクルマが整列しはじめ、
スタートの旗が振られる13時まで、
ずっと会場にずらりと展示されることになるからだ。
俺を含めたティーポ・スタッフのほとんども、
朝からスタートまではずっと会場にいるので
見かけたらどうか声をかけてくださいな。

が、「遠くて赤レンガ倉庫まではいけないよ」、
あるいは「うちの近くを走るならぜひそっちで観たい」
という人も少なくないだろうと思う。
そこで走行ルートに近いところに住む人のために
おおまかな見物ポイントになりそうな場所を連記すると、
20日の土曜日は16時頃から甲府舞鶴公園、
21日の日曜日は10時頃から白樺湖、
12時頃から上田東急インホテル、
15時半頃から丸池スキー場駐車場、
17時頃から松代ロイヤルホテル、
22日の月曜日は7時半頃から松代ロイヤルホテル、
11時頃から山中湖交流プラザのゴール、
といった辺りがいいんじゃないかな? と思う。

ミュージアムに入っていても不思議じゃないくらいの
貴重なクルマ達の姿を観ることができるだけじゃなく、
何とエキゾースト・サウンドまで楽しめてしまうわけで、
こりゃやっぱり観ておかないと損だよなぁ。うんうん。

……へ? 何だよ、宣伝かよって?
いや、違う。そうなんだけど違う。
今回の『随筆』で俺がいいたいことは別にあるのだ。

実はねぇ、ドライビング・シューズを手に入れたのである。
それも手前味噌なはずなのに何と初めて!
このホビダスを利用して。わはははは。

俺が手に入れたのは、ピロティスパイダー
ドライビング・シューズでありながら
街中ではスニーカー代わりにも使えそうなヤツだ。

どうしてコレを選んだのかといえば、
ピロティの機能的な部分については何人かの人から
なかなかの評判を聞いていて興味を持っていたのだが、
どうにも比較的派手めの彩色が多くて躊躇してたところ、
なんとなーくホビダスの買い物ページを徘徊していたら
この白のスウェードを基調としたシックなモデルに遭遇し、
ついつい『カゴへ』のボタンを押してしまった。

実際に手元(足下?)に来て試してみたら、
フィット感も実際の機能に関しても具合がよさそうで、
早く外に履いて出たいなぁとワクワクした気分になった。
子供の頃に新しい靴を買ってもらって、
嬉しくなって待ちきれず、家の中で履いて歩いて怒られた、
という素直だったお子ちゃま時代を思い出したほどだ。

……へ? 何だよ、話がつながらないじゃないかって?
それがちゃんとつながるのだ。
その『ジャパン・ヒストリック・カー・ツアー』の
参加車輌達の先導車というか露払い役というか、
いわゆるWRCなどのラリーでいうところの『0号車』を、
昨年に引き続いて担当することになったのである。

競技の参加者じゃないんだから楽なんでしょ?
と思ったキミ、それはあんまり正しくない。
参加車輌よりも1分だけ早くスタートをするものの、
俺達もコマ地図だけを便りにコースを走ることが
(どういうわけだか)強いられていて、
しかも参加者の皆さんのために各種の確認作業をしながら、
やっぱり一番最初にチェックポイントやゴールに
到着していないとイケナイ……のである。
その過酷さは、前回の経験で頭に刻みこまれている。
昨年なんて、抜かれた覚えも間違えた覚えもないのに
どういうわけか参加者が先に着いていた、
なぁーんてこともあってまるっきり気が抜けない。
かなり真剣に走らないと存在そのものに意味がなくなる。

そんなわけでドライビング・シューズを新調しよう、
と考えたのである。気合いを入れる意味も含めてね。

ピロティ・スパイダーのインプレッションは、
『ジャパン・ヒストリック・カー・ツアー』終了後に
ここで報告するからね。

とにかく、まずは赤レンガで逢いましょう……だね。

2006年05月17日

さすがに2回目ともなると……


これが犯犬のハナちゃん。
写真提供・佐藤正勝氏

男は、確かに寝しなに酒を飲んでいた。
基本は寂しがり屋であるからして、
酔えばフランスからだろうがドイツからだろうが
世界の果てからだろうが電話をしてくることもあるが、
その晩は俺のケータイが鳴らなかったので、
いったいどれほど酒を浴びていたのかは定かじゃない。

男はそろそろ眠ろうかと考え、
階下の居間から階上の寝室へ向かうために
階段の手前にある毛足の長いマットを踏みしめて、
のっしのっしと階段を登る。

──純白の寝具に包まれる瞬間。
それは男の最も幸福な時間と呼べるもののひとつだった。
普通の勤め人とはやや勝手の異なった、
不規則で肉体を酷使するハード・ワークを繰り返す日々。
愛する家族が寝静まった後に一杯ひっかけ、
穏やかに眠りにつく幸福は何物にも代え難い至福であった。

1日の仕事を無意識に振り返り、
自らの作品ともいうべきものの出来映えを思い浮かべつつ、
寝具をめくりあげてゴロリと横になる。
男の意識が途切れるまでに、
それほど長い時間はかからなかった。

そして翌朝──。
彼は『ゴジラ』の愛称で呼ばれる息子のただならぬ声で、
眼を開かされることになった。
「うわっ! ハナちゃん、マットの上におもらししてる!
 うわっ! しかも誰かが踏んでるよぉ!」

……マット? ……踏んでる?
……もしかしてっ!

ボンヤリ霞んでいた意識が一瞬にしてクリアになる。
ガバッ! と掛け布団をはね除けて半身を起こすと、
男は自分の足下に目をやった。

「うおぉーーーっ!」

天使の羽のように純白だった掛け布団と敷き布団の
男の太い足が触れていたはずの場所は、
モノの見事に、やんごとなき色に染まっていた。

「……。………。…………」

ところどころかすれたそのまだらな軌跡は、
まるで書の達人が半紙の上にしたためた抽象文字のように、
もしかしたら美しかったかも知れない。
なにせ「実はさぁ……」と語る電話での男の声は、
そう思わせるほど明るく、そして嬉しそうに聞こえたのだ。

この事件が誰に巻き起こったことなのか、
俺には名前をクチにすることができそうにない。
だが、ただひとついえることは、
俺はこうして42年近くも生きてきた中で、
たった1週間の間に2回も“踏んでしまった”人とは
出逢ったことがない、ということである。

2006年05月12日

まさかっちゃんの話


ティーポでも活躍してくれている、
このギョーカイでも有名な佐藤正勝カメラマン、
通称“まさかっちゃん”の話をしよう。

あ。そうそう。あらかじめお伝えしておくけれど、
内容にちょっとばかりナニな表現があったりするので、
とりわけこれから食事をしようと考えてる人は、
もしかしたら読まない方が身のためかも知れない。

ん? いやいや、何もまさかっちゃんが品のない人だとか、
まさかっちゃんが食事前に会うには不適切な人だとか、
そういうわけではないので、念のため。
彼はむしろ俺の知る人の中でトップ・クラスの清潔派。
何せ趣味は掃除。癖も掃除。気がつけば掃除。
仕事が終われば速攻で着替え、サッとコロンを振る。

それ以外の彼の特徴を記しておくことにすると、
「顔が恐い」「身体がいかつい」「クチが悪い」の3拍子、
加えていうなら、撮る写真がとっても美しい。
見てくれや言動はどう考えても“厄介系”なのだが、
その印象とは逆にとても風流なところのある人なのだから
人間ってのは解らないモノである。
懐かしのサンリオのキャラクター『ごろぴかどん』を
コワモテにしたような屈強な男が、
あんなにも美しい写真を撮るアーティストだなんて、
いったい誰が想像できるだろうか……?

そのまさかっちゃんに、事件が起こった。

今週の月曜日の午後のことだった。
まさかっちゃんはしとしと雨が降る中、
目の中に本当に入れたらきっと痛いんだろうけど、
目の中に入れても痛くないと言い張りそうなくらいに
可愛がっている愛犬の『ハナちゃん』を、
動物病院に連れて行った。
続く話が俺にとっては余りにも衝撃的だったので
話のディテールは見事にスッ飛んでしまってるのだが、
確かハナちゃんの検診と聞いたように記憶している。

ハナちゃんはキュートなお尻で体温までも計ってもらい、
病院は終了。まさかっちゃんはとっても上機嫌になって
再びハナちゃんと一緒にクルマに乗り込み、
途中、スーパー(だったと思う)に立ち寄って
買い物まで済ませていこうと考えた。

雨で濡らせるのを可哀想に思って車内に残した、
ハナちゃんを思い、彼は急いで買い物をすませて戻る。
顔は恐いしクチは悪いのだが、優しく温かな人なのだ。

隣のクルマとの間隔が異様に狭い駐車場だったため、
ドアを細めに開けてカニ歩きをするように
車内に背を向けそろそろと尻から侵入を試みる。
尻でボディの拭き取り掃除などしないよう、注意深く進み、
ようやくストンとシートに腰を降ろすことに成功。
ハナちゃんがチョコンとしてる助手席の足下に
買ってきたモノを置いたまさかっちゃんは、
ハナちゃんの頭を撫でようと彼女の名前を呼んだが、
彼女はいつもと違って素直に膝にのってきたりはしない。
ちょっと様子がオカシイ……と心配になる、いかつい男。
すると、次の瞬間──。

……ん? ……ぬおぉーーーーーーーーっ!

この温かさはいったい何だ!? なぜこうも温かい!?
いったいなぜ尻の下が温かいんだぁーっ!?

慌ててクルマから降りて運転席の座面を確認すると、
そこにはハナちゃんのプリチィなヒップが生んだ
うんにょが広がっていた。
まさかっちゃんは、うんにょの上に座っちゃったのである。

あまりのことに呆然とし、
しばし途方に暮れて立ち尽くしてた、まさかっちゃん。
……ハナちゃんに責任はない。
体温計を差し込まれて、きっとゆるくなっちゃってたのだ。
彼女の異変に気づかなかった自分が悪い。

顔は恐いし身体はいかついしクチもひじょーに悪い男だが、
彼はそう考えてハナちゃんを叱るようなこともせず、
再びそのままシートにぺっちゃりと腰を降ろすと、
ブーンと家に帰ったのであった。

「ってなわけで家に帰って運転席と助手席のシート外して、
雨が降ってるっつーに家の前でザブザブ丸洗いして……。
ゴールデンウィーク明けの月曜の午後だぜ。
ただでさえ近所からは“あの人、なにやってる人?”って
胡散臭く思われてるのに、ダメ押しだよ。まいったよ」

そういいながらも、どこか嬉しそうな表情である。
この男、顔は恐いし身体はいかついしクチは悪いし、
どう見ても悪役商会系としかいいようがないのに、
ハナちゃんには滅法弱いのだ。俺には滅法強いくせに。

やっぱりしとしと雨だった一昨日の早朝、
612スカリエッティの撮影を終えた横浜の街の路傍で、
しっぽり濡れながら一服してるとき、
「ほらな?」とまさかっちゃんが開けたドアからは、
まごうことなき洗剤の香りが流れ出てきたのだった。

ちなみに写真が、まさかっちゃんである……はずはなく、
まさかっちゃんの愛するハナちゃんである。
まさかっちゃんにどこか似てるのが妙にオカシイ。

2006年05月03日

打倒、ヘルメット! 其の弐


編集部で最も若い、かわいこぶりっこのヘルメット坂上
俺達世代にとっては1980年代の後半に
ヤングジャンプ誌で連載されていた
伝説の『ナマケモノが見ていた』に登場していた
ベビーフェイスの腹黒系、“レッサーパンダ”くんを
どことなく彷彿とさせるこの男が、
どうやら再び俺に対抗しようとしてるらしい、と耳にした。

俺が『Roots』の『アロマブラック』を買って
アルピーヌA110と8ゴルディーニを
もらってきたのが悔しかったのか、
俺がまだ手に入れることのできていない
メガーヌ・トロフィをどこかで見つけ出して手に入れ、
俺に見せびらかす機会を淡々と窺ってるのだという。

ヤツはブラック・コーヒーがそれほど好きじゃない。
一方で俺はといえば、シュガーのないコーヒーなら
1日に15杯は確実にいってるコーヒー好き。
俺にはコーヒーも嬉しいしオマケのモデルカーも嬉しいが、
ヘルメット坂上にとってはあくまでも
単なる“オマケ欲しさ”のようなものである。

その昔、“仮面ライダー・カード”欲しさに
『仮面ライダー・スナック』を買いあさったはいいが、
スナックの袋が通学路に大量に捨てられるという事態が
全国的に勃発して社会問題になったことがあった。
きっとヘルメット坂上のような子供が、
もったいないオバケを敵に回すのを承知で
ライダー・スナックをポイポイ捨てていたに違いない。
まぁ……確かに美味しいとはいえなかったが……。

ともあれ、ヤツがそういう手で対抗してくるのなら、
俺も大人としてキッチリと叩きのめしてあげるしかない。

俺がまだ若かった頃には
「このオヤジめ。若者の目を摘むんじゃねーよ」と
心の底から反発したものだったけれど、
今になってみれば、それは大きな勘違いだったと思う。
近頃の若いヤツは……などという気もないが、
人に優しくできる大人に育ってもらうためには、
挫折の味の苦さというヤツを
ときには味わわせてやらねばならない。

というわけで、メガーヌ・トロフィを手に入れてない
俺としては、こうして先を越されてしまった以上、
別の手段を考える必要がある。

コンビニエンスストアに足を運んで腕組みをした俺は、
真剣に考え込もうとしたが、
答えはすぐ目の前に転がっていた。

フェラーリである。

編集部から最も近いところにあるそこは、
ローソンだった。
今、ローソンでは飲料メーカー6社とタイアップして、
対象商品を2缶買うとフェラーリのミニチュアがひとつ、
手に入れられることになっているのである。
しかも! これまたパッケージの外側から
中身の車種が判るようになっている。

んっふっふっ。

250GTO、ディーノ246GT、512BB、
テスタロッサ、F40、F50、エンツォ・フェラーリの
6車種の中からディーノとBBを選び、
俺は『UCCブラック無糖』4本とともに
仕事場に持ち帰って、自分の机の上に飾っておいた。

ゴールデンウィークがあけて、
北海道のホンダのテスト・コース近くにあるという
実家から帰ってくるヘルメット坂上は、
それを見ていったいどんな顔をするのだろうか。

……なんだか、上手くキャンペーンに
のせられてるような気もしないでもないが、
俺は勝利を確信している。
冷たいコーヒーを飲み過ぎてオナカを壊したのは、
誤算といえば誤算ではあったけど……。