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2006年12月

2006年12月26日

マ……マジすか……?


おわーっ!? とのけぞった。
きっと目をひんむいたような表情をしてたことだろう。
だって目の前にいるおっさんが逆に驚いてた。

冷凍ペリカン……。

冷凍ペリカンってことは、凍ったペリカンである。
冷凍のカニだとか冷凍のエビだとか冷凍のマグロだとか、
そんな生易しいモノじゃない。

冷凍ペリカン……。

【中に『冷凍ペリカン』が入っている】と
固い感じで書かれた生真面目な文が、本気を感じさせる。
【冷凍ペリカン在中】とか【冷凍ペリカン入り】だとか、
そういう素っ気なさを感じさせるものではないし、
【冷ペリ有】みたいな軽佻浮薄な感じもない。

冷凍ペリカン……。

冷え切ったペリカン。
カチコチに固まったペリカン。
氷づけのペリカン。
ぶあつい霜にまみれた生気のないペリカン。
いろんな“冷凍ペリカン”の姿が頭の中に浮かんでくる。

冷凍ペリカン……。

いったいどういった事情があって冷凍にされたんだ?
ペリカンの身にいったい何があった?
輸送するときに暴れさせないため?
冷凍→解凍→生命の復活……の実験のため?
動物愛護団体にバレたら大変なことになるんじゃないのか?
そもそも冷凍ペリカンの行き先はどこだ?
それ以前に送り主はどんなヤツなんだ?
あ。もしかして、時期が時期だけに、
エビやカニと同じで御歳暮の品なのか……?
疑問もとりとめなく、次々に湧き出してくる。

冷凍ペリカン……。

ふと視線を感じて振り返ると、おっさんが俺を凝視してる。
俺は財布からわざと1万円札を出して手渡した。
そして、おっさんがツリをとりに姿を消した瞬間を狙って
手早くパパッとケータイで写真を撮り、
おっさんからツリを受け取ってそそくさと逃げ出した。

冷凍ペリカン……。

夜が明け、昼が来て、出前のうどんを喰った今となっても、
疑問は何ひとつ解決していない。

投稿者 T.Shimada : 13:43 | コメント (17) | トラックバック

2006年12月14日

ガメラをつくった男


造形作家の市川拓さんが、
わざわざ年末の挨拶に来てくださった。
彼の作品は自分の部屋に飾ってあるから
ほとんど毎日のように見ているのだけど、
お会いするのは数ヶ月ぶりだ。

彼は今でこそ自動車好きが高じまくって
独特の世界観を持った自動車モチーフの立体作品を創る
アーティストとして知られているけれど、
実はなかなかオモシロイ経歴を持った人なのだ。

ガメラを造った男、なのである。

元々はアパレル・メーカーのカタログだとか
雑誌の表紙などのための立体作品を造っていて、
途中からその才能が認められたようで、
ガメラだとかウルトラマン・シリーズだとかの
着ぐるみをはじめとする
怪獣の造形を受け持つようになった。
初めてお会いしたときに彼の作品の写真をおさめた
ファイルを見せていただきながら、
そんな話をうかがったことを思い出した。

もちろん彼の仕事は怪獣だけじゃなくて、
名前をいえば誰もが知ってる企業のための美術造形とか
景観装飾とかも手がけてこられたのだけど、
俺の目にはそれらはほとんど入っちゃいなかった。
怪獣の着ぐるみにクギヅケにさせられたからだ。

トゲトゲが体中から何本も突き出た黄金色の茶バネ系とか、
岩石とゴリラをたして2で割ったお人好しっぽいヤツとか、
ドリル付きの戦車がねぷたの櫓に変身したようなヤツとか、
それこそ見知ったガメラそのものだとか──。
それらは当然ワンオフのハンドメイドなわけなのだけど、
とても作り物には思えないリアルな質感がある。

いやー、マジでスゴイ。

怪獣と市川さんが並んで立ってる記念写真とかもあって、
「何だよ、こういう怪獣ってのは身長120メートル、
 体重45トンとかじゃねーのかよ」
というツッコミを入れたくなったりもしたが、
「うらやましいじゃねーか……けっ!」
というのが正直な気持ちだったのも間違いはない。
男の子としてポコンと生まれ落ちたからには、
怪獣と記念写真を撮るくらいのことはしたいじゃないか。

そういった経緯があるせいか、俺の中ではどうしても
“怪獣出身”の印象が拭えない市川さんだが、
彼の創ったクルマをモチーフにしたレリーフも
なかなかいい味を出しててかわいらしい。

表情豊かにデフォルメされたモノ好き系のクルマ達。
平面かといえば立体、立体かといえば平面。
なんとも上手く言葉で表現しにくいのだけど、
とにかく……まぁココを見てみてみて

本当は実際に手にとってシゲシゲ眺めてもらうと
一発で感じ取ってもらえると思うのだけど、
車種ごとにひとつひとつコダワリどころが違っていて、
まるで上手な人のマッサージを受けてるときの
「あー、そこだそこだ! そのツボそのツボ!」
という感じに近い喜びがある。
見てるだけでニンマリとした顔になってくる。
写真のランチア037は非売品だけど、
このオタクっぷりを見せてもらったときなんて
嬉しくなって声をあげて笑っちゃったほどなのだ。

実はコレ、ぜんぶハンドメイドなのである。
ベースとなる最初の立体をコツコツ創ったのも、
型を造ったのも、型にポリエステル樹脂を流し込むのも、
それに色を塗っていくのも、ぜぇーんぶ市川さんの手作業。
だから……ということもあるのだろうけど、
とっても人間的で温かみがあるんだよねぇ。

ほら、そろそろクリスマス・プレゼントの時期でしょ?
ハンドメイドの自動車アートにしては値段はリーズナブル、
これでモトがとれるの? って心配になるほどだけど、
買う方にとってみれば嬉しいことには違いない。
クルマ仲間にプレゼントするにも手頃だし、
オタクかたぎの市川さんだけに車種は増えてくだろうから
今からコンプリート目指して集めておくのもいいし……と、
そんなことを思いついたので紹介してみたのだった。

今、手元にアルピーヌとディーノがある。
次はアルファGTAかセヴンか、あるいはLP400か──。

人間、こういうところからも幸せを感じられるのだよね。

怪獣もこうしたクルマのアートも、
俺達に夢を与えてくれるっていうのでは同じこと。
ガメラをつくった男はとってもシャイで木訥な人だけど、
少年の夢を大切にするその道の伝道師……なのかも。

投稿者 T.Shimada : 08:08 | コメント (10) | トラックバック

2006年12月08日

チンクェチェントの気持ち


年に一度、よっぽどのことでもないかぎり、たった一度。
たった一度だが、それでもどーしても耐え難い出来事に
直面しなければならない日というのが必ず来る。
それも、向かってくるなら逃げたいくらいなのに、
自分からわざわざ出向いていかなきゃならない理不尽。
毎年、この出来事を避けることができるなら
どんな小さな理由だって拡大して利用してやる、
理由がなければでっちあげる、とすら思ってるのに、
決まって何も思いつかないまま迎えてしまう、恐怖の1日。
頭が弱いことを、これほど恨めしく思うことはない。

健康診断、である。

いや、体重を量られることなんて怖かーない。
んなものは痛くも痒くもない。ただ不愉快なだけで。

注射──。

注射である。血液検査や胃の検査のために、
俺の腕にブスブスと突き刺さってくるあの注射である。
俺は注射が大嫌いなのだ。ピーマンより嫌い。

だが今回は、その大嫌いな注射の時間が迫った
病院の待合室にいても、恐怖心は湧いてこなかった。
常日頃からの修練がいよいよ実を結んてきたのである。
といえればいいのだが、とんでもない。
俺はそのとき、実は別の痛みに耐えていたのだ。

ギックリ腰、である。

24歳で華々しくギックリ腰デビューを飾って以来、
年に数度は悩まされ、数年に一度くらいは
立てなくなったりするほどの長く深いオツキアイ。
今回は病院横の有料駐車場でクルマから降り、
助手席の荷物をとろうと屈んでカバンに手をかけたときに
──ぴきん! と来てしゃがみ込んじゃったわけだ。

立てないほど酷くなかったのは幸いだったし
注射への恐怖心を和らげてくれる効果には感謝するが、
肝心の注射の痛みはちっとも緩和されなかった。
腰がズキンピキンと痛んでいても、
やっぱりあの「──チクッ!」という
みみっちいくせに異様な存在感を持つ忌々しい痛みは、
しっかりと俺を襲ってきたのだ。

それだけだったらまだしも
バリウムを飲んで変な台の上で横になったり
身体をひねったりするあの検査、
あれをかなり無理して唸りながら受けちゃったものだから、
ますます痛みが悪化して脂汗が止まらなくなった。

しかし、本当の恐怖はその後にやってきたのだった。
バリウムを飲めばその後に下剤も飲むわけで、
下剤との相性が抜群に優れている俺の身体は
即座に反応を開始する。しかも効果の持続性もかなり高い。
つまりトイレの扉をノックする回数も並じゃないわけだ。

慣れというものがあるので、それが洋式であれば
座ったり立ったりするのは大した問題じゃない。
困るのはメインとなる作業が終わってから
後方に手を伸ばし、拭き降ろすときだ。
「それは“拭き降ろす”じゃなくて“拭き上げる”だ!」
と憤慨する人もいるかも知れないが、
俺は作法としては“拭き降ろす”が正しいと思ってるので、
当然、一連の動きの中で腰に力が入る瞬間が生じる。
そのときに、平然と上体を支えていることができない。
右手で局部を押さえたまま、へたへたと崩れていく上体を
左腕の微妙なチカラ加減だけで抑え込んで、
痛みが強くならないようにコントロールせねばならない。
それを短時間に何度も繰り返すことになるわけだから、
左の腕は段々プルプルしてきて
仕舞いには上体を起こすときにチカラ加減が狂って、
静寂に満ちた個室の中で「うおっ!」と叫ぶことになる。
扉のあっち側で壁に向かって用をたしてたヤツは、
さぞかしビックリしたことだろうと思う。
マトを外さなかったことを祈るばかりである。

腰の痛みは、人間からすべての気力を奪い去っていく。
経験のある人なら即座に同意してくれることだろう。
だが、だからといって仕事をサボれる状況でもない。
ひとつひとつに日頃の倍から3倍くらいの時間はかかるが
何とか必要最低限のモノだけは……と頑張ろうとした。

机とトイレの往復にやたらめったら時間がかかる。
俺としては全開で歩いてるつもりなのだが、
活気に溢れてるとは言い難いし足取りはよたよたしてるし、
おそらく普通の人の半分くらいの速度がやっとだろう。

クルマ雑誌の編集部が居並ぶネコ・ビルの3階は、
人が多いうえに通路は狭い。しかも先生が走るくらいの
季節だから雑誌屋ごときが走らずにいられるはずもない。

俺が歩くと、つまり後ろに渋滞ができるということだ。
そして少し通路が広くなると、まるで
スリップ・ストリームから抜け出たレース・カーのように
スパッと抜き去ってスッ飛んでいく。……速いなぁと思う。
ついでに生きる速度について考えてみたりもする。

フィアット500の気持ちが、少しだけ解った気がした。

投稿者 T.Shimada : 07:22 | コメント (12) | トラックバック

2006年12月06日

ダメ人間の矜持

第1回目は↑この写真が
目印……である。

俺も含めたティーポの連中はデジタル嫌いじゃないくせに
どうにも今イチ……いや、明らかに得意とはいえない。
毎月、締切週間に入ると必ず誰かが「うぉーっ!」っと
雄叫びをあげるのが聞こえてくるのだが、
アンチMac派であるヘルメット坂上を除けば、
大抵の場合は使ってるMacのトラブルだ。
それも余計なアプリやソフトをブチ込んでみたり、
シロート目にもあまり正しいとは思えない使い方をしたり、
そうしたヒューマン・エラーであることが多かったりする。

まるでシャコタンにしたらコーナーが速くなると思って
いきなり鉄ノコでバネを切っちゃうだとか、
排気音がでかければでかいほどエンジンの馬力が上がる
と思い込んでタイコに穴を開けちゃうだといった、
愚直なまでのまっすぐな情熱だけで
クルマをモディファイする男達のようだ。

そういうわけだから“Web Tipo”なんぞをやっていても
解らないことばっかりの連続で、
「できる!」と考えていたものができなかったり、
「こうすればこうなる!」と信じてしたことが
まるっきり逆の方向に進んでしまったりして、
計画通りに進まないことが山ほど……なのである。
皆さんにはダメ人間の集まりだと思われてることだろうな。

うん。そう。ダメ人間の集まりなのである。

だが、見くびってもらっちゃー困る。
俺達は確かにダメ人間だが、
ダメ人間にはダメ人間の矜持というモノがあるのだ。

……なぁーんて話をはじめるとキリがなくなるのでヤメた。
とにもかくにも、ほとんど初めてといえるのだけど、
ようやく誌面で予告したとおりにスタートできた。

なにが……って?
ちょっとばかり前から“Web Tipo”の中に開店した
Webセレクトショップ『Corso Tipo』の中の
商品開発ストーリー』ブログである。

んー。詳しくはココには記さない。
記さないから、とりあえずあっちを見てきてみて。

こっちの『随筆』は『随筆』として、
あっちのブログはブログとして、
これからは閉口し……じゃなくて並行してやっていくので、
お暇なときにはこっちもあっちも御覧あそばしてみてね。

本誌にはスペースの都合で書き切れないことも、
とりわけあっちの方では
想像以上にたくさん展開することになりそうだ。

よろしく哀愁。
……ってちょっとだけ古いかぁ。

投稿者 T.Shimada : 04:36 | コメント (9) | トラックバック



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