造形作家の市川拓さんが、
わざわざ年末の挨拶に来てくださった。
彼の作品は自分の部屋に飾ってあるから
ほとんど毎日のように見ているのだけど、
お会いするのは数ヶ月ぶりだ。
彼は今でこそ自動車好きが高じまくって
独特の世界観を持った自動車モチーフの立体作品を創る
アーティストとして知られているけれど、
実はなかなかオモシロイ経歴を持った人なのだ。
ガメラを造った男、なのである。
元々はアパレル・メーカーのカタログだとか
雑誌の表紙などのための立体作品を造っていて、
途中からその才能が認められたようで、
ガメラだとかウルトラマン・シリーズだとかの
着ぐるみをはじめとする
怪獣の造形を受け持つようになった。
初めてお会いしたときに彼の作品の写真をおさめた
ファイルを見せていただきながら、
そんな話をうかがったことを思い出した。
もちろん彼の仕事は怪獣だけじゃなくて、
名前をいえば誰もが知ってる企業のための美術造形とか
景観装飾とかも手がけてこられたのだけど、
俺の目にはそれらはほとんど入っちゃいなかった。
怪獣の着ぐるみにクギヅケにさせられたからだ。
トゲトゲが体中から何本も突き出た黄金色の茶バネ系とか、
岩石とゴリラをたして2で割ったお人好しっぽいヤツとか、
ドリル付きの戦車がねぷたの櫓に変身したようなヤツとか、
それこそ見知ったガメラそのものだとか──。
それらは当然ワンオフのハンドメイドなわけなのだけど、
とても作り物には思えないリアルな質感がある。
いやー、マジでスゴイ。
怪獣と市川さんが並んで立ってる記念写真とかもあって、
「何だよ、こういう怪獣ってのは身長120メートル、
体重45トンとかじゃねーのかよ」
というツッコミを入れたくなったりもしたが、
「うらやましいじゃねーか……けっ!」
というのが正直な気持ちだったのも間違いはない。
男の子としてポコンと生まれ落ちたからには、
怪獣と記念写真を撮るくらいのことはしたいじゃないか。
そういった経緯があるせいか、俺の中ではどうしても
“怪獣出身”の印象が拭えない市川さんだが、
彼の創ったクルマをモチーフにしたレリーフも
なかなかいい味を出しててかわいらしい。
表情豊かにデフォルメされたモノ好き系のクルマ達。
平面かといえば立体、立体かといえば平面。
なんとも上手く言葉で表現しにくいのだけど、
とにかく……まぁココを見てみてみて。
本当は実際に手にとってシゲシゲ眺めてもらうと
一発で感じ取ってもらえると思うのだけど、
車種ごとにひとつひとつコダワリどころが違っていて、
まるで上手な人のマッサージを受けてるときの
「あー、そこだそこだ! そのツボそのツボ!」
という感じに近い喜びがある。
見てるだけでニンマリとした顔になってくる。
写真のランチア037は非売品だけど、
このオタクっぷりを見せてもらったときなんて
嬉しくなって声をあげて笑っちゃったほどなのだ。
実はコレ、ぜんぶハンドメイドなのである。
ベースとなる最初の立体をコツコツ創ったのも、
型を造ったのも、型にポリエステル樹脂を流し込むのも、
それに色を塗っていくのも、ぜぇーんぶ市川さんの手作業。
だから……ということもあるのだろうけど、
とっても人間的で温かみがあるんだよねぇ。
ほら、そろそろクリスマス・プレゼントの時期でしょ?
ハンドメイドの自動車アートにしては値段はリーズナブル、
これでモトがとれるの? って心配になるほどだけど、
買う方にとってみれば嬉しいことには違いない。
クルマ仲間にプレゼントするにも手頃だし、
オタクかたぎの市川さんだけに車種は増えてくだろうから
今からコンプリート目指して集めておくのもいいし……と、
そんなことを思いついたので紹介してみたのだった。
今、手元にアルピーヌとディーノがある。
次はアルファGTAかセヴンか、あるいはLP400か──。
人間、こういうところからも幸せを感じられるのだよね。
怪獣もこうしたクルマのアートも、
俺達に夢を与えてくれるっていうのでは同じこと。
ガメラをつくった男はとってもシャイで木訥な人だけど、
少年の夢を大切にするその道の伝道師……なのかも。
|