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2007年09月

2007年09月15日

たいしたことない俺たち……いや、俺


昼間は暑くてだら〜んと崩れ落ちてしまいそうだった、
まだほんの2週間ほど前の話である。

俺はお気に入りのハワイアン・シャツに短パン、
そしてオール・ゴム製のピンクのビーサンという、
いうなれば究極のクール・ビズといえる出で立ちで、
とある公共の建物の中にいた。

健康のために水を飲むことを欠かさないうえ、
体温調整が苦手なくせに冷房大好きな俺としては、
何ていうか……まぁ、もよおしてくるわけだ。次第に。

我慢する理由もないので欲求に素直に従うことにした。
そこのトイレはさすがに公共の建物だけあって
掃除も行き届き、実に清潔である。かなり好印象だ。

ふむ。これなら気持ち良く用をたせる。
俺も家に戻ったら掃除をしないといかんなぁ……。

そんなふうな心持ちで上機嫌に白い巨塔へと歩み寄り、
足を広げて男らしい不動の姿勢で立った俺の目に、
とあるモノがいきなり飛び込んできた。

マト、である。

人間はマトを見ると本能的にそこを射ちたくなる、
という深層心理を利用して水分の場外乱闘を防止する、
ここんところやたらと幅を効かせてる例のヤツだ。
効果は非常に高いようで、バカ売れだったのだそうな。

だが、悪いが俺は自他共に認めるヘソマガリである。
「こうしなさい!」と強要されると、
無意識に逆のことをしたくなって仕方ない。

その手になんかのるものか! という気分で
マトよりだいぶ上のほうを目指して、
いたいけな蛇口を解放することにしたのだった。

「うむ……。ふぅーっ……。……。……おおっ!?」

くそっ! 許さんっ! このマトめっ!
ちくしょー。罠にかけやがったな。
オマエがそこに居座ってるせいで、俺の両手の甲がっ!
なまあったかい飛沫でしっとり濡れたじゃないか!!

もしかしたらコイツを思いついたヤツは、
きっとこうした事態を予測しつつ悪意を持って、
俺のようなヤツが現れることを期待しながら
商品開発をしたのかも知れない。
俺はザブザブと手を洗いながら、そう思ったものだった。

そして、それから1週間後──。
ティーポの編集部を卒業してそれぞれ別の世界に発つ、
ニュージンジャーとノーーージマ♪の送別会で、
俺達は自由が丘の焼き肉屋でとぐろを巻いていた。

夜の風に秋めいた気配が混じることがあっても、
まだまだ汗ばむ残暑の名残り。
やっぱりクール・ビズが気持ちいい。
そういうわけで、またしてもハワイアン・シャツに短パン、
それにビーサンというカッコで出撃した。
ビールにもめちゃめちゃマッチするだろうし。

一緒に仕事をした仲間がいなくなるのは寂しいけど、
あちこちで笑いが爆発し、なかなか楽しい雰囲気でもある。

そんな中にいるわけだし、元々が大のビール好きだ。
自然とビールはクピクピとノドを流れていく。
となると……まぁ、もよおしてくるわけだ。次第に。

ジョッキをカーッと空けて、悠然とトイレに向かう。
ドアを開けた瞬間、俺の目に飛び込んできたモノは──。

氷、である。

この店では、あんなしゃらくさいマトなんかじゃなくて、
おそらく納涼の意味を込めて、
氷をたっぷりと白い巨塔の中に流し込んであるわけだ。

これはなかなかセンスがいい。風流じゃないか。
よーし。俺の情熱でとかしてやるぜ。

そんなふうな心持ちで上機嫌に白い巨塔の前に立ち、
足を広げた男らしい姿勢で、身体の一部のチカラを抜いた。

「うむ……。ふぅーっ……。……。……おおっ!?」

短パンにゴムゾーリでここに来たのは間違いだった。
氷のあちこちから乱れるように跳ね返る冷たい飛沫が、
俺のスネと足の甲をしっとりと濡らしたのだ。

手洗い場に足を持ち上げてジャブジャブと洗いながら、
「解っちゃいたけど、たいしたことねーなぁ、俺」と
頭の中でボンヤリ考えていた。なぜか笑いがこみ上げる。
まぁ、しょせんはこんなもんなのだ。

それにしても、10日たらずで2回も……。
うむ……メガトン級の「たいしたことねー」である。

投稿者 T.Shimada : 00:58 | コメント (30) | トラックバック

2007年09月05日

続・たいしたことない俺たち


キッカケが何だったのか、実はよく覚えてはいない。
おそらく7月4日からのチンクエチェント試乗会で、
他の日本人参加メンバー達より遅れてトリノ入りした俺が
ヴィットリオ・ヴェネート広場までいこうと考えて、
ホテルのフロントで道を尋ねてるときのことだったか。

「カルロス! ヘイッ! カルロース!」

どこかのカルロス君を呼ぶ声が背後から飛び込んできた。
場所はイタリアである。しかも国際試乗会の舞台だ。
スペイン辺りでは珍しくもなさそうな名前だから、
カルロス君がその辺にたくさん転がってても不思議はない。
だが、あまりに連呼するので振り返ってみると、
その声を発していたのは自動車ジャーナリストの西川 淳氏、
通称 ボンジョルノ西川だった。
彼は俺の数年前の出来事を知ってて笑ってるわけである。
御丁寧かつとってもとっても親切なことに、
そのときに彼が一緒にいた人物相手に解説までしてる。
少なくとも、火種ができたのは、この瞬間だった。

翌日、実際に新型フィアット500のステアリングを握った
俺達は、ほとんど全員が上機嫌だった。
めちゃめちゃ愉しい体験だったのだから、当たり前である。
となれば、夜の宴も上機嫌。
みんなでワインをパカスカと開けて簡単にできあがる。

そのとき俺達の周りにいた顔ぶれはといえば、
件のボンジョルノ西川氏に俺。
それにジャーナリストでは河口まなぶ氏と渡辺敏史氏。
クルマ雑誌の編集者では姉妹誌ロッソの桜井健一編集長、
ル・ボランの伊達男・吉田 聡編集長。
フィアット・グループ・オートモビルズ・ジャパンから
広報部長である、お馴染みサラ・セレリさん。

口火を切ったのは、おそらくボンジョルノ西川氏だった。
俺を「カルロス!」と呼んだのだ。たしかそうだった。
そこで俺がこんなことを言ったんじゃなかったか──。

「お。かわぐちぃ。そーいえばオマエ、あのとき、
 やたら気持ちよーくゲラゲラ笑ってたじゃねーか」
「そんなことないっすよ。カルロスさん」
「お。なんだか挑戦的じゃねーかコノヤロー。
 オマエなんか……ティーポで仕事してくれなくて結構。
 えーっとえーっと、ねぇねぇ、サラさん。
 “さよなら”とか“バイバイ”ってイタリア語だと──」
「アリデヴェルチ」
「そーだそーだ。オマエはなぁ……今日から……えーっと、
 アリデヴェルチ河口だ。“さよーなら”河口。わははは」
「……何なんすかそれはぁ」

そこから次第に悪ノリの輪が広がりはじめた。
ボンジョルノ西川、カルロス嶋田、アリデヴェルチ河口。
カタカナの名前を持たされた男達が、
周囲を仲間に引き込むべくジワジワ魔の手を伸ばしていく。
しかも襲われた男は次の瞬間には襲う側に転じるのだ。
ゾンビが増殖していくのと一緒である。

ロッソの桜井編集長はどういうわけか、グラッツェ桜井。
この辺りでは、まだみんなもぬるかった。
ジャーナリストの渡辺敏史氏はモッツァレラ渡辺。
まぁ確かにモッツァレラっぽい男ではあるけど……。
次には離れたテーブルにいる人達が、
彼らの知らないところで次々と血祭りに上げられていく。

「ナビの加藤さん(加藤哲也編集長)は?」
「ボナセーラ加藤でいいんじゃない? 夜の男風で、
 ボナセーラ(=こんばんわ)っぽいから」
「ぎゃははははははは」
「んじゃ、オートカーの中尾さん(中尾仁編集長)は?」
「どこでも女の子をこっそり口説いてそうだからなぁ。
 アモーレ(恋愛)でいいんじゃない? アモーレ中尾」
「どうせ中尾 仁(なかお・じん)なんだから、
 Na“Ciao !”Jin でいいんじゃねーの?」
「ぎゃーーーっはははははは」
「あれ? そーいえば! まだじゃん!」

……と、話題がまたこっちのテーブルに戻ってくる。

「吉田さん(ル・ボラン編集長)、まだじゃん!」
「あ。そーだそーだ」
「いや、俺はいいよぉ」
「んー。……あれだ! プロント吉田でいいじゃん」
「何だよぉ。俺は“もしもし”吉田かよぉ……」
「ぎゃーーーっはっはっはっはっ」
「お? いかんいかん。ヤツを忘れてたヤツを」

俺の指さした先には、あの男がいた。
ちょっと前までティーポにいて副編集長をやっていた、
カー・マガジン編集部の上田純一郎、通称 ウエっち

「オッタンタチンクエ(85)とかは?」
「それじゃちょっとナマヤサシイだろーに」
「んじゃ、チッチョリーナ! チッチョリーナ上田 !!」
「ぎゃはははは。ポルノ女優かよ」
「ウエっちがポルノ? きもちわりぃーっ」
「いっそのこと、ウエッチョリーナは?」
「ぎゃーーーーーーーっはっはっはっはっ」

誰がどの台詞をいったかを公にすることはできないが、
売れっ子の自動車ジャーナリストといっても、
自動車雑誌の編集長といっても、
実態をあかせば、しょせんはこんなもんなのである。

投稿者 T.Shimada : 21:35 | コメント (9) | トラックバック



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