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2008年10月

2008年10月31日

結構イヤなヤツに思える俺達

えー、本日……いや、厳密にはもう昨日になっちゃったけど、
とにかく本日発売の『週刊オートスポーツ』誌、
72〜73ページを御覧いただきたい。

そこに、ティーポ編集部の韋駄天野郎こと コゾー310と、
ティーポ編集部のゲソ天野郎(嘘だってば!)こと俺のふたりが、
雁首揃えて登場しているのだ。

なぜかといえば、それは上の写真のとおり、
日本一のモータースポーツ専門誌であるオートスポーツ誌の
取材を受けたからに他ならない。

どういうことかといえば、例の『マツダ・フェスタ2008』、
メディア対抗ロードスター4時間耐久レースで勝つためのコツ?
みたいなモノを教えて欲しい、という連絡をいただいたのだ。

「なるほど。そうですか。わかりました」

と、3連覇を成し遂げたチームの監督としてお応えしたのだが、
考えてみたら……俺に判るわけないじゃん、そんなもん。
だって、今年は海外出張に出なきゃならなくなって
現場に行くことすらできなかったわけだけど、
もし現場にいたとしてもひたすらゲラゲラと笑ってるだけで、
知ってる人はもうとっくに知ってると思うけど、
何もしないでただ見てる、というのが俺の大切な仕事なのである。
マジメに質問されたってマジメに答えられるわけもない。

なので、当日はドライバーでもある コゾー310も同席し、
オートスポーツ編集部の中野一史さんと楽しくお話しをした。
というか、俺達は楽しかった。
うむ。何せ勝ってるからね。どうにでもいえるもんで。

ただ、中野さんとしては「このやろ!」と思うことも
あっただろうなぁ……と思う。
だってさぁ、別に悪意はこれっぽっちもなかったのだけど、
表沙汰にできることはいろんな意味で限られてるから、
そうなるとテキトーにはぐらかしたり
おちょくったりすることぐらいしかできることなくてねぇ……。
それでも中野さんはとてもフェアにまとめてくれてるのだが、
ページに書かれている俺達の発言、
どんな読み方をしてもやっぱり『イヤなヤツ』である。わはははは。

だけど他意はないのだ。心から傲ってる、というわけでもない。
ただ、3連覇までしちゃっといて今さら初々しいフリしても、
誰も温かな眼差しで見てくれるはずがないのは判ってるからねー。
このギョーカイの人達、「クルマで勝負!」となると、
どうにも異様にオトナ気なくなるもんで。

そういうわけで、どうせなら来年の来たるべき
“ロードスター生誕20周年” を前に
さらに皆が熱く燃え上がることができるよう、
来年の『マツダ・フェスタ』がもっともっと盛り上がるよう、
再び注意深く “憎まれ役” を演出してみたわけだ。

それにしても……何度読んでもイヤなヤツらだねぇ、俺達。
これを見たら、ムカつくよなぁ、普通。

にも関わらず、何をしても何をいっても怒りを露わにすることなく、
丁寧に接してくれたうえにフェアにまとめてくださって、
田中さん、どうもありがとうございました。
いろんな意味で感謝! あなたは編集者の鑑です。
来年の4耐はレギュレーション含めてまだどうなるか判りませんが、
また一緒に盛り上げ役になれるよう、互いに頑張りましょう。
といっても、俺はひたすら見てるだけなんですけどね。

ここを見てる皆さんも、まだ手に取っていないなら
速攻で本屋さんに走っていって今ならまだ棚に並んでる
『オートスポーツ』誌を見てみてみて。
きっとイヤなヤツらだなぁ……と思えるはずだから。

2008年10月25日

もてぎにおいでよ

俺は今、栃木県の “ツインリンクもてぎ” の
パドック辺りをうろうろしてる。

そう。今日と明日の2日間、
『ヒストリック・オートモービル・フェスティバル・イン・ジャパン2008』
(なげーなぁ、名前)というイベントが開催されるのだ。

心配されてた空も今は綺麗に晴れていて、
俺が数年前に体質改善して
もはや雨男をすっぱりヤメてることが証明されたわけだが、
おかげで盛り上がりを見せることは確実だ。

写真のような普段ならまず見られないクルマもスタンバイしていて、
俺なんて仕事で来てるっつーに
すでにニヤニヤしちゃってるもんねー。

そんなわけだから、
みんな、急いでもてぎにおいでー。

俺は今日も明日もパドック辺りをうろうろしてるから、
見かけたら声でもかけてよね。

いきなりラリアットとか喰らわすのは禁止だぞ。
それこそ本格的な “場外乱闘” がはじまっちゃうから。

2008年10月22日

ああ、クルマ離れ……

「そういえば、おまえさぁ、ちょっとコレ見てみろよ。
 こんなにクルマ離れが進んじゃってるんだから」

とケータイをかざしてこの写真を見せてくれたのは、
その筋ばかりテンコ盛りの自動車カメラマン業界の中にあって
一番の “厄介” 系と本人以外の総てが認める
佐藤正勝カメラマン、通称“まさかっちゃん”である。

「ホテルに着いてさぁ、部屋の窓から外を見たらコレだから、
 おおおっ! ってケータイで撮ったんだよ」

まさかっちゃんはスーパーGTシリーズのオートポリス戦の仕事で
九州に数日間ほど飛んでいたわけだが、
宿泊したホテルの部屋から見える駐車場の異様な光景に、
急いでケータイのカメラ機能を起動して撮影したのだという。
まぁ考えてみたら駐車場はとっとこ逃げ出したりはしないし、
プロのカメラマンなんだからちゃんとしたカメラで撮れよ、
ってな気もしないでもないのだが、
痛いところを突いて暴れ出すと厄介なので黙っておくことにしよう。

ともあれ、写真を見ると、駐車場の地面に書かれているのは……?

「……また……つち? ……またつち、って何だ?」
「きっと “軽” って書きたかったんだろうけどさ。軽専用の」
「わはははは」
「あんれまー。こんなにいっぱいクルマ離れが進んじゃってよー」
「わはははは」
「俺はもうどうしようかと思って焦っちゃったよ」
「これにクサカンムリつけたら、クキじゃん “茎”」
「わはははは。なんだよ。“茎” 専用パーキングってか」
「わはははは」
「“茎” ってどうやって駐車するんだよ。横たわるのか?」
「わはははは」

とまぁ、だいたいそんな感じでゲラゲラ笑っていたわけだが、
そのときその場にいた人間はといえば、
GT300クラスのトップ・ランカーである
レーシング・ガライヤの設計者にしてチーム監督、
以前から仲良くしてもらってる apr の代表・金曽裕人さん、
自動車ジャーナリストの河口まなぶくん、
それからまさかっちゃんとウチのヘルメット坂上と俺。
いずれも死ぬまで “クルマ離れ” できそうにない面々だった。

その直前までロータス特集に絡む取材をやっていて
マジメにクルマ離れを憂う話とかもしてたのだけど、
まさかっちゃんのオカゲで笑いながら場を締めることができた。

さすが、歩く “笑いの殿堂” である。

それにしても、クルマ離れ──。深刻といえば深刻である。
何せクルマのことを好きでも何でもない人が
一流企業というだけで自動車メーカーに就職をして、
クルマの開発に携わっていたりもする時代だ。
もちろん全員がそうじゃないしそれが悪いともいわないけれど、
クルマ好きとしては “何だかなぁ……” という感じではある。

やっぱりココはひとつ、クルマ好きが全員で立ち上がって、
「クルマってカッコイイじゃん!」
「クルマって楽しいじゃん!」
ということを声高に叫んでアピールしていくしかないだろう。

だから──とコジツケをするつもりもないのだけど、
ふと気づいたら『あなたが選ぶ カー・オブ・ザ・イヤー』の
インターネット投票が始まっていた。

もう御存知の方も多いとは思うのだけど、
コレは専門家がシカツメらしい表情をして選ぶモノではなくて、
ちょちょいと登録さえすれば誰もが選考委員になれて、
「俺はコレだ!」「私はコレよ!」と1票を投じることのできる、
いわば民意によって選ばれるカー・オブ・ザ・イヤーだ。
間口を狭めることなく、立場も経験も年齢も何もかも関係なく、
サイトで情報を得ることもできるし
リアル・イベントで今回エントリーしてる全ての実車を
全部まとめてジックリと眺めることができる。
俺達クルマ好きにはただそれだけで楽しい催しだけど、
これはクルマ離れの抑制につながるかも知れないとも思う。

今年は前回までとちょっと趣向が変わって、
11月16日まで続く投票期間の間の11月10日まで、
皆さんの投票結果を反映した途中結果が毎日更新で公開される。
これが日によって変わったりするからオモシロイのだけど、
最後の1週間はそこが目隠しされ、
11月14日から16日に横浜赤レンガ倉庫での
全車展示やトークショーなどのリアル・イベントを経て、
その結果が17日に同じく赤レンガで発表されることになる。

俺はねぇ、ついさっき、もう投票をすませちゃった。

おそらく赤レンガでのイベントには3日間ずっと出てるだろうし、
もしかしたらステージみたいなところで
何か “芸” でもやれといわれる可能性もあるけど、
ほけ〜っとサイトを見てたら、つい投票したくなって……。

各部門の “一番” のチョイスには困難を極めたけど、
やっとの想いで終わらせたらちょっと肩が軽くなった気分だ。

みんなもとっとと今のうちに投票をすませて、
リアル・イベントが近づいた辺りでココで投票談義でもしない?


2008年10月19日

美しさは罪、だと思う

どうにも外せない用事を果たすために
アルファ・ロメオ147のステアリングを握り、
「やっぱツインスパーク・エンジンは永遠にブラーヴォだなー」
なんて思いながら恵比寿の駅に差し掛かったときのこと。

ぽわぁーーーん!

いきなりドクンと心臓のビートを弾ませるような
素晴らしいサウンドを奏でながら、
隣の車線から1台の曲線美が追い越していった。

トヨタ2000GT ──。

誰がどう説明するまでもないだろうが、
まだ日本の自動車業界が
クルマというものの存在に大きな夢を託し、
クルマの未来を信じて疑わないでいられた、
とても幸福な時代に生を受けた稀代の名車である。

このクルマが生み出された1960年代は、
もちろん時世なりの苦難はあっただろうけれど、
今より遥かにモノゴトがシンプルで、
強いられる抑圧の種類も数も少なくて、
クルマづくりに賭ける情熱を
もっと自然にストレートに燃やすことができた時代、
だったんじゃないかと思う。

クルマの開発に従事する “今” の人達が
総てそうだなんて思ってるわけじゃないけれど、
モチベーションをキープするのに大変な努力を要する時代、
へこんでたり何かを諦めちゃったりしてる人も
少なくないんじゃないか?
今のエンジニア達は昔と比べて不利だよなぁ……、
なーんて余計なことまで考えさせられちゃったりする。

2000GT はそのくらい、強いオーラを放ってた。

日本のエンジニア達は優秀だから、
技術はまだまだ遥かに進歩していくだろうし、
新しいカタチの夢が現実になることもあるだろうけれど、
いずれにしても、これほど美学に溢れたクルマは
今後もそうそう簡単には生まれないだろう。

綺麗だなぁ……。
本当に美しいフォルムをしてるなぁ……。

なぁーんて見惚れていたら、一瞬、ブレーキが遅れた。
別に何も危険なことはなかったし、
恐らく自分以外の誰も気がつかないレベルだっただろうが、
あまり褒められたもんじゃないのは確かである。
……不注意でした。ごめんなさい。

その瞬間、とあるイベントでお会いした
ランボルギーニ・ミウラのオーナーの方の話を思い出した。

彼が交差点で停まってたときに
隣の車線の斜め前のクルマにドバーンとオカマを掘った人がいて、
聞けばその人の事故原因は完全なヨソ見運転。
つまりミウラのリア・ビューに見惚れてた、というわけだ。
まぁ……気持ちは解る。よーく解る。

美しさというのは、どうにも罪なのだ。

そーゆーわけで俺は再び安全第一運転に徹し、
今日も1日無事に過ごすことができたわけだが、
皆さんもクルマの運転中に
他のクルマに見惚れたりするのはもちろんのこと、
例えば駅から仕事場へポクポクと歩いてたりするときに
前方で美しく揺れる女性の曲線美に目を奪われて
電信柱に激しくクラッシュしたりすることのないよう、
くれぐれも、どーかくれぐれもご注意あれ。

何しろ事故原因は周囲にはなぜかバレがちで、
かなり恥ずかしいからね、あれって。
いや、恥ずかしい “らしい” だな。“らしい” だ。うん。
そう。あくまでも “らしい” なんだからね。

2008年10月16日

ふとした拍子にモーリス・マイナー

今日の昼メシは、実に満足度が高かった。
やんごとなき方々が「余は満足じゃ」と言い放つのは、
おそらくこんな心持ちのときなんだろうな、と思う。

昼と夜が逆転したまま生活のダイヤルがどんどん後ろにズレ、
ついに世間一般の標準時間にピッタリと戻った今日。
俺は、あり得ないことに、午前9時ちょい過ぎくらいには
仕事場でちゃかぽことキーボードを打ち鳴らしていた。

ので、時計の針が12時をさす頃合いを迎えたときには
飢えに起因する暴れたい欲望がほとんどレッド・ゾーンに達し、
頭の中でバルブ・サージングが始まって、
もうちょっとでボムッ! とブロウしそうな勢いだった。

空腹とは人間を凶暴にする最大のファクターである。
みんな、やっぱり朝ゴハンはちゃんと食べような。うんうん。

ともあれ、山本キョクチョー、ナカジー、JT斉藤に
俺を加えたハラペコ4人衆は、紅一点でありながら
食いしん坊ということでは人後に落ちない JT斉藤の提案で、
歩いて10分ほどのところにある “某店” に向かうことになった。

ちなみに JT斉藤の “JT” とは、嬢トンカツの略らしい。
まぁ何ちゅーか、ナパ三宅の女性版みたいなものだ。たぶん。

もうひとつ “ちなみに” を許してもらうと、
“某店” と店名を伏せてる理由はもちろん美味かったからで、
他の部署のスタッフに知られて混んじゃうのが困る、
というわれながら思いやりに欠ける理由による。

とりわけシャチョーにだけは知られるわけにはいかない。
わずかばかりの憩いの時間にばったりと出くわして、
44歳にもなって説教と一緒に苦くなったゴハンを飲み込むような、
そんな事態に陥ることだけは避けたいからだ。やっぱり。でしょ?

閑話Q題。……で、向かったわけだ。

こんなところにこんな店があったのか……と、
社内で最も御近所さんなくせに存在すら知らなかったその店は、
おねーさん達も感じが良くてメニューのバリエーションも豊富で、
その時点で “はじめて組” だったキョクチョーと俺は
だいぶ気に入っちゃったのだった。

俺は、注文を取りに来てくれたおねーさんに
「今日の文句なしのオススメ、今日メニューにある中で
 いちばん美味しいモノはどれですか?」と尋問し、
「絶対ですね? 絶対ですね?」と念押しまでして、
『季節の特別弁当』をチョイスすることに決めた。

キノコと栗の炊き込み御飯、タコとマグロの新鮮な刺身が計8きれ、
身のパンパンにつまった牡蠣フライふたつ、
チキン・ソテーのしめじと野菜あえ和風ソースがゴロン、
それに野菜の煮物がゴロゴロと10きれほどに漬け物2種類、
さらにフランボワーズのプチ・ケーキがひとつ。

これで1090円也。
1日20食限りの特別メニューらしい。

俺の選んだメニューが見るからに断トツだった。
先日の日本グランプリでのフェルナンド・アロンソどころじゃない、
ウルトラ級のブッチギリでトップ。
キョクチョーもナカジーも JT も、認めざるを得なかったようだ。
しかもオナカはパンパン。チョー幸せ、である。

逆にワリを喰ったのは、山本キョクチョーだった。
キョクチョーが頼んだ『ポーク・ソテー』は実に上質な豚肉を使い
それはそれは美味しそうな香りや照りを放っていて、
付け合わせの野菜類もなかなかのモノだったが、
ポーク自体は手のひらの半分くらいのサイズ。お上品である。
「ライスはおつけしますか?」には当然「はい」なわけだが、
いざ会計をするときにそれが別会計だったことが判明し、
俺と同じ1090円に加えライス代まで払わなきゃならなかったのだ。

まるで先日の日本グランプリでポイントを獲得して
来期につながるか……と思って期待を持ったら、
どう見ても相手に問題があったようにしか思えないアクシデントで
理不尽なペナルティを喰らいポイントまで召し上げられちゃった、
セバスチャン・ボーデのような気分だったに違いない。

キョクチョーのあまりの落胆ぶりに
俺達は明日もその “某店” で昼メシを喰うことを決め、
限定20食は何時頃までなら手に入れられそうなのか、
ということをまたしてもおねーさんに問い詰めた。
プロの取材能力を見くびってはいけない。
変な客だと思われたかも知れないけど。

ともあれ席を立って、来たときと別のルートを辿って帰る道。
いきなりキョクチョーとナカジーが「おー!」と声をあげたので
ナニゴトかと思って指さす方向を見てみると、
やっぱり御近所さんのくせに存在すら知らなかったカフェの店先に、
愛嬌のある丸っこいノーズが飛び出していた。

モーリス・マイナーである。

しかもグルッと回って見に行ってみたら
それは後席の代わりに荷台があるピックアップ・ボディで、
その荷台がギリギリで収まるようガレージにも工夫がしてあった。
店の中からは丸っこいルーフが見えて目が楽しいだろう。
同じ敷地内には懐かしのホンダ CB350 なんてのが停まってる。
ふむ。このカフェのスタッフの人達、かなりの好き者と見た!
ここにも一度はメシを喰わせてもらいに来なければ!

ほんのちょっとしたことだけど、新しい発見が妙に嬉しかった。

自分のすぐ身の周りにあるのに、歩いたことのない道。
そんなのは山ほどある。

でも、時には “いつも” からちょっとだけオフセットして、
新しい気分で歩いてみるのも大切なんだな、と思った。

それが散歩であれ、人生であれ──。

2008年10月15日

いくら 2CV が農耕馬系でも──

「嘘つきめ!」

──というメイルが、友達から飛んできた。
何だとコノヤロー! と何も考えずに反射的に返信したら、
そのまた返す刀の一撃で、俺はザックリと斬殺された。

「パリ・サロン “で” 気になったクルマ3台を、
 2回に分けて紹介するんじゃなかったのか?」

……おー。そーだったそーだった。
確かに2回に分けて3台を紹介しはしたけれど、
そのうちの1台はパリ・サロンの展示車両じゃなくて、
まるで何の関係もないヒストリックカーだった。
話の中にフィアット 131 スーパー・ミラフィオーリが出てきて、
俺はそれを無意識に1台とカウントしちゃったのだろう。
われながら切なくなるほどの頭の悪さだと思う。

嘘つき呼ばわりされたままでいるのもナニなので、
ここでもう一発! とばかりに、
注目株がゴロゴロいる中から俺が選んだ1台は……。

シトロエン 2CV エルメス、である。

いや、全然ウソでもホラでもないんだってばさぁ。
ほんとに展示されてるんだから、2CV。

実は 2CV、このパリ・サロン開催中の10月7日に
めでたく60歳の誕生日を迎えたのだった。
それを祝って、説明不要なほど有名なあのエルメスと
シトロエンのコラボで生まれたのが今回の展示車なのだ。

まぁ……エルメスって、そのルーツを辿っていくと、
ナポレオン3世だとかを顧客にしてた馬具工房として
そもそもはスタートしてるわけだし、
2CV ってクルマはいわば農耕馬みたいなモノだから、
そういう意味ではピッタリかも知れない。

この “記念車” は1989年式の 2CV 6スペシャルをベースにして、
エルメスが内外装をコーディネートしたもの、
といっていいだろう。

パッと見ではちょっと華やかなブラウンにペイントされた、
キレイにレストアの施された 2CV という感じだけど、
白眉といえるのは、このインテリア。

おおよそ考えつく可能な限りの箇所に、
エルメスの得意技といえるウルトラ級のレザー処理が
あしらわれているのである。
このステアリングやドアをはじめとする内張りの革の上質なこと!
細工のていねいなこと! ただただ驚くしかないでしょ。

シートだってこのとーり。
俺が持ってるどの革製品よりも高級なナチュラル・レザーと
エルメスならではのグレイ・ベージュ色をした
コットン・キャンバスのコンビネーション。
写真で見ただけでも座り心地がよさそうに思えてくる。

もちろんリア・シートだって同じこと。
それと、グリップの部分にも注目ね。

細かい部分にも手抜かりなんかひとつもなくて、
このシフト・ノブもウインカー・レバーも、
ワイパー・レバーもバック・ミラーも、
こんなふうに見事としかいえない
繊細で美しい革細工が施されてるわけで……。

室内側のドア・ハンドルなんて、
ノーマルは……確かビニールの紐じゃなかったっけ?

ドアの内張にはこんな小物入れがあったりするのだけど、
これ、エルメス製のポーチみたいなもんでしょ? 
もしかしたら、この小物入れひとつの値段で
2CV が1台買えるんじゃないか、と……?

普通の 2CV ならやっぱりビニール製だったはずなんだけど、
この幌の部分もシートと同じグレイ・ベージュの
エルメス製コットン・キャンバスになってたりして……。

──とまぁ、細かい部分まで見れば見るほど
溜息が出ちゃうような、別の意味で超ド級の展示車両。
内装だけ見てたら 2CV だとは思えないよねぇ。
かかる手間暇とコストを考えたら
とてもじゃないけど売るに売れないわけだけど、
もちろんコイツはいうまでもなく非売品。
たとえ中古のフェラーリ1台分の対価を支払ってでも欲しい!
と思う人は、きっとたくさんいるんだろうなぁとも思う。

“小さな高級車” とは、まさしくこのこと。
こういうことを考えるだけじゃなく実行しちゃうトンチの効き方と
その出来映えのセンスの素晴らしさには、
ただただオソレイリヤノブンザエモンなのである。

さしづめイタリア版の 2CV はといえば2代目フィアット 500、
ということになるのだろうけど、
この際60歳の誕生日ウンヌンというのを横に置いとくとして、
チンクエチェントでコレをやったらどんなにカワイイだろ……?
なぁーんてことまで想像しちゃったりして。

クルマでレザーでイタリアで……ときたら、
自然に思い浮かんでくるのはやっぱりあのスケドーニなのだが、
次に現在の当主であるマウロ・スケドーニさんと会うときに、
「洒落で1台つくってみてくださいよー」なんて
臆面もなく提案しちゃいそうな自分が……ちょっと恐い。

2008年10月12日

ヨーロッパ・ドライブ・ツアーに出た理由──

昨日の夜、というかちょうど24時間くらい前の、
25時ちょい過ぎくらいに俺達は東京に戻ってきた。
総走行距離は2日間で1500kmくらいだったと思う。
これくらいは時々ある、というレベルの距離を走ったわけだけど、
時々あるからといって楽なドライブ・ツアーとはいえないし、
それだけ走ればどんなクルマで行っても大なり小なり疲れるもんだ。
現行ロータス・ヨーロッパは、おそらくオーナー以外には
ちょっと想像することはできないくらい快適! だったのだが、
さすがに肩と背中はコリがひどい。

家に帰って風呂に少しぬるめの湯を張って、
普段よりやや贅沢といえる類の入浴剤を振りまいた。
読みかけの文庫本でも開きながらノンビリと浸かり、
身体のコリをほぐしてから横になろうと思ったのだ。

が、結論からいうならば、
ゆうべ風呂でゆっくり温まることができた幸福者は、
その入浴剤だけだった。
ヤツはあまりに心地よかったせいか湯に溶けきってたほどである。
俺自身は帰ってきたときの服装で、なぜか腕組みをしたまま、
ソファに座ってどんよりと曇った朝を迎えたのだった。

くっそー。

妙な眠り方をしたせいで、肩も背中ももちろん、
首筋までコリがひどくなっちゃったじゃねーか。

ともあれ、2日間にツメ込んだ取材そのものは上手くいって、
編集部で断トツのトラブルメーカーである
ナパ三宅と一緒に行ったにも関わらず頭を抱えることもなかった。
とても楽しかったし、とても勉強になったし、
とってもとっても美味しかった。んー。美味しかったなぁ……。

で、いったい何をしに行ったのかといえば、
ひとつは次号のロータス特集の記事作りである。
もうひとつは……うーむ。いえねーいえねーまだいえねー。
何しろ機密事項ってのがあるもんでね。

だけど……あー。考えてみたら機密事項はあるにはあるんだけど、
それはたまたま俺達が知っちゃったというだけで、
記事作りにはそれは全く関係ないんだった。
だから、ちょっとばかり写真をお見せしちゃうことにしよう。

まずは、目的地。一番上の写真の場所に行ったのだった。
その一部をクローズアップしたのが下の写真である。

そこで俺とナパ三宅は、こんなことを体験させてもらった。

何をしてるのか……と? うぬ。決まってる。
コレが料理をしてるようにでも見えるか?
職人さんに教えてもらいながら、ミシンを使ってるのだ。
もちろん上手くなんてできっこなかったのだが。
やっぱり本当のプロの世界ってのはスゴイもんだ、と思った。

で、その後は下の写真のような、
遠い目をしちゃうほどバカ旨なうどんをたらふく喰らって……。

次におじゃましたのは、
こうしたモノが使われている秘密工場のような場所。

きっとコレそのものにはほとんど馴染みはないだろうが、
コレを使うことでできあがったブツは、
おそらくほとんどの人は触れたことがあったり、
そうでなかったとしても、確実に知っていることだろうと思う。

さーて、っと。ここで問題ね。
せっかくここまで根気よく頑張って内緒にしてきたのだから
まだ秘密のままにしとくことにして、
それを皆さんに推理してもらうことにしちゃおう。

俺とナパ三宅は、いったい何ていう街にいって、
いったい何をしてきたのか。

正解者はまず出てこないだろうから強く出ちゃうけど、
もしそれに近い答えをしてくれた人には、
俺のクルマ周りコレクションの数々のアイテムの中から、
何かひとつをプレゼントしよう。

んっふっふ。今、気がついた。
俺ってけっこー意地悪だったんだな。うはははは。

やっぱり変わり者揃いのスタッフ達に鍛えられたから、
なんだろうな。うんうん。


2008年10月 9日

いま……

走行距離は東京を出てから600kmほど。
身体を姿勢とかで上手く合わせることができなくて
腰の粉砕が心配だったシートの問題は、
腰周りにちょっとツメモノをしただけで解決。
交通量の関係で速度域がのんびりなこともあり、
あまりに快適で眠くなりそうだったから、
俺はひたすら iPod にあわせて歌いっぱなし、である。

のど、いたい。

……へ?
んー、目的地はまだ秘密だな。
ヒントは写真の中にあるんだけどね。
試食しようとして手を伸ばしたら、
コンとツメの音がした。
ただの模型じゃねーかっ。くっそー。

今日の終点までは、あと100kmぐらい。

また後でねー。

えーっと……

いってきまーす。

今日の相棒はロータス・ヨーロッパ。
まだ編集部を出発してからたった80kmほど。
身体がシートに合ってない感じなので
腰に爆弾を抱える身としてはちょっとばかり不安だけど、
今のところはしなやかなアシに助けられて
何とかだいじょーぶかなぁ……って気がしてる。

……へ?
ああ、行き先はまだ内緒。
また後でねー。

2008年10月 7日

パリ・サロン現地(に行けなかった)レポート其の弐

日本でにあたふたしてたからプレス写真でゴメンなのだけど、
今回のパリ・サロンで俺が一番気にしていたのは、
実はこのクルマだった。

GT by CITROEN 』──。

固定観念を軽々と飛び越えたところにあるかのような
強烈な存在感を放つ、衝撃的なスタイリング。
パッと見た瞬間から誰もがプロトタイプであることを疑わない、
そのシルエットとディテールは大胆にして繊細だ。

でも、このスーパーカーはちゃんと走るのだ。
いや、それどころか、キミ達自身が走らせることだってできる。
サーキットだろうが街中だろうが、それもレーシング・スピードで。
話は簡単だ。“プレイステーション3” と
グランツーリスモ5プロローグ” のソフトウェアを
手元に用意しさえすればいいのである。

そう、コイツは “グランツーリスモ5プロローグ” という、
レース・ゲームというにはあまりにリアルな
あの“超”有名なドライビング・シミュレーターの中を、
美しく速く駆け抜けるために開発されたマシン。
パリ・サロンで初公開されて世界のド肝を抜いたこの車体は、
それをヴァーチャル・ワールドから引っ張り出したモノなのだ。

けれど、ただ “どうせゲームの中だから” ってな具合で
カタチだけ好き勝手にでっち上げたような半端な模型、ではない。
どうやら、シトロエンとしてのフィロソフィを根っこに据えつつも
新しい時代のスポーツカーとしてのあり方を追求し、
かなり真剣にデザイン&デベロップメントが行われたようなのだ。
このクルマが現実の世界で走り出す日も、近いかも知れない。

“グランツーリスモ” シリーズの開発で世界的に知られる
ポリフォニー・デジタル = ヴァーチャル・ワールドの頂点と、
シトロエンという実際の自動車メーカーが手を組むことで生まれた、
前代未聞の発想とプロセスを持つ『 GT by CITROEN 』。

夢のある話だとは思わないか?

だって単にビジネスとしての経済的側面だけを考えたら、
こんなことは絶対にできっこない。
ナマな話をするならプロトタイプ1台をカタチにするだけだって
1000万円や2000万円の投資じゃまるで追いつかないわけだし、
それでいてコイツをバンバカ売ってモトをとるってわけでもない。
そこにあるのは “信念” だけなのだ。
「世界中の子供達やクルマ好き達に大きな夢を!」
と心から願ってるような真のカー・ガイ達が
本気でチカラを合わせでもしない限り、
計画がスタートすることすらあり得なかっただろう。
ビシッと1本通ってるその気概に、俺は感動さえ覚えたほどだ。

日本ではまだそれほど報道はされてないようだが、実際のところ、
現地では “フィガロ” をはじめとした新聞の一面を飾るなど、
かなり高い評価を得ているようだ。

このプロジェクトそのもののコンセプトからはじまって
スタイリングまでを手掛けてきたのは、
シトロエンのデザイナーである山本卓身さん。

俺が知る限りでは銀河系で最もスチャラカな男といえる
古くからの友達の紹介で出逢って以来、
彼の住むパリで何度かメシを喰ったり酒を飲んだりしながら、
クルマの話だとか仕事の話はいうまでもなく
互いのかなり個人的な話なんかもするようになって、
俺は彼の朴訥な人柄とその内に潜む熱さみたいなものに惹かれ、
今では勝手に友達だと思ってるようなところがある。
彼の方が遙かに若いのに学ばされることばかりなのは、
だいぶ情けないところではあるのだけど。
まぁ、そこはやっぱりダメ人間ってことで。

ともあれ今年2月のレトロモビル取材のときに
とある韓国料理屋さんで一杯ひっかけながら聞いた、
「今は何も話せないんですけど、すごい計画が進んでるんですよ。
 ものすごくしんどいけどものすごく充実してます」という言葉。
そのときにはどう探りを入れてもニコニコと笑顔を返すだけで、
彼は何ひとつとして教えてくれはしなかったのだけど、
その “すごい計画” は3月のジュネーブ・ショーで、
シトロエンのジル・ミシェル社長が発表することで明らかになり、
今回、こういうカタチとなってお披露目された。

パリ・サロンのプレス・ディが終わった後に届いたメイルには
「当日は5分刻みぐらいに取材があり嬉しい悲鳴でした。
 正直ものすごい疲れました」と充実したふうが書かれてるだけで、
彼は自分の手柄をひとつも主張したりはしてなかったのだが、
ポリフォニー・デジタルの山内一典プロデューサーや
ミシェル社長をはじめたとした多くの人の心を動かしたのは、
間違いなく彼、彼の熱意だったのだと思う。

その想いの、ひとまずの着地点。
俺はそれを、この目で見たかったんだけどねぇ……。

そうした個人的な思い入れがあることは否定しないけれど、
ひとりの男の情熱がこうして実を結ぶまでのストーリーを、
11月6日発売のティーポのどこかでレポートすることに決めた。
現場にいなかった俺にはどうすることもできないから、
パリ在住の南陽一浩くんにインタビューをしてもらってもいる。
だから、ここでダラダラと俺が書くことはしない。
もう立派にダラダラしてるじゃん、といわれたら返す言葉はないが。
まぁ、そこはやっぱりダメ人間ってことで。

そんなわけだから、どうか楽しみに待っててね。

追記:ホビダスオートのニュースで『 GT by CITROEN 』が
 サラッと解説されてるので、そっちも見てみてね。
 こっちはショー会場の写真あり、だよ。

2008年10月 4日

パリ・サロン現地(に行けなかった)レポート其の壱

今頃、パリ・サロンの会場は盛り上がってることだろう。
何せランボルギーニが初の4ドア・サルーンのコンセプトカーを
ちょっとしたティーザーをしただけで突如として発表するし、
フェラーリは例のカリフォルニアをようやく世界公開した。
アバルトは500のエッセエッセ・キットを正式アナウンスし、
アストン・マーティンは史上最強のアストンとなる
One-77 というモデルの実物大モックアップ(?)をブースに置き、
ボディ・カバーを少しだけ捲り上げる “チラ見せ” をしてる。

やっぱり無理してでも行けばよかったかなぁ……。

実はチャンスはあったのだけど、見送ることにしたのだ。
せいぜい現地2日の1泊4日になっちゃうし、
前のヨーロッパ出張から帰ってきて10日くらいしか経ってなくて、
行ってる場合じゃないくらいにあれやこれやと立て込んでる。
明日の日曜日には、どうしても外せないおめでたい席もある。
そりゃ諦めるのが賢明でしょ、やっぱり。

なのでホビダスオートの “パリ・サロン2008” 特集を見たり、
スーパーカー系の美味しそうなネタはとっとと報告するだろう
姉妹誌『 Rosso 』のスタッフ・ブログを見たりして
「ほぉー」などとやってるわけだが、
身内も含めて大抵のクルマ系のサイトのレポートは
どうしても大物だとかプロダクション・モデルが優先事項になり、
オタクめいたネタについては先送りになるか
無視せざるを得ない状況にある、ということも判ってる。

そこで俺は現地に飛んでる Rosso 編集長の平井をはじめ
いろんな人に電話をかけまくったりメイルを投げまくったりと
あれこれ情報を漁ったわけだが、
そうした “きっと後回し” 系のクルマ達の中にも
俺達の興味を惹くモデルがたっくさーんあった。やっぱり。

ティーポは発売日の関係でこの6日発売の号には間に合わず、
「早さで勝てないなら “ねっとり” でいこう!」的なレポートを
11月発売号でお届けしようと考えてる。
が、その前哨戦として、俺がかなり気になってるクルマ3台を、
2回に分けて先に紹介しちゃおう。

今日はコレだ。
ルノー・メガーヌ・トロフィ。

新型メガーヌがパリ・サロンで発表されることは
しばらく前から判っていたのだけど、
クーペが同時にデビューするかどうかは微妙だったし、
まさかそのクーペをベースにしたコイツが一緒に出てくるなんて、
俺は考えてもいなかった。

コイツはもう旧型になっちゃったメガーヌにもあった、
ワンメイク・レース用マシンの最新版である。
『メガーヌ』を名乗ってはいるし、
メガーヌ・クーペのイメージをたっぷり残してはいるけれど、
中身はちっともメガーヌじゃない。

パイプ・フレームでガッチリとした骨格をこさえて、
そのミドに360馬力にまでチューンナップした
日産ベースの 3.5リッター V6 を
パドル・シフトのセミ AT と組み合わせて搭載した怪物である。
多くの部分を前のメガーヌ・トロフィから持ってきてるとはいえ
ボディ自体は全く新設計、空力もビンビンに効いてるようで、
コースを走らせると、ポルシェ GT3 と
ほぼ同じくらいのタイムで走るくらいに速いらしい。
ちなみに、コイツを使ったレースは2009年から行われるそうな。

いやー、もうほんと、チョイ乗りでいいから乗ってみたい。
コレでレースに出てみたい、なんていわないから。

そうしたパフォーマンスの部分もさることながら、このカタチ!
パッと見からしてすっごくカッコイイと思わない?
前のメガーヌ・トロフィもとんでもない姿をしていて仰天したが、
コイツはそれを遙かに超越してる。

ルノー、やっちまったか!! って気がしてこない?
いやー、すげーすげー。

コイツをもっとガンガンと育てて発展させ、
DTM にでも出てくれたらいいのにぃ……、
と荒唐無稽なことすら考えちゃうほど嬉しくなった。

そんなわけで、「さすがルノーだ。デザイン、やるときゃやるぜ」
ってな具合に異様な迫力を放つ複雑なフォルムを思い浮かべながら、
この夕方、とっても休日らしく遅めの昼メシに出たのだが、
目黒通りをポクポクと歩いてる最中に、
俺は走り去っていく1台のクルマに目を奪われた。

フィアット 131 スーパー・ミラフィオーリ。

まさかあんな綺麗な状態の “アバルト・ラリー” じゃない 131 が
生き残ってるとも思ってなかったし、
咄嗟だったからケータイのカメラすら向けられなかったから、
こうしてプレス写真で見てもらうしかないのだけど、
俺は声にこそ出さなかったもののこんなふうに思ってたのだ。

「うほー、やっぱ、見事な箱。まるっきり真四角じゃん。
 昔のシンプルなデザインって、なごみがあっていいなぁ」

われながらホントに勝手である。

2008年10月 3日

魔界・墓・共同墓地──

昼メシを思う存分ハラに収め、
本屋さんで資料漁りという名のプチ・ヴァカンスを決め込んだ後、
シブシブと仕事場へ戻る駅前の道──。
10月の風物詩ともいえる、若く明るい──というと
まるで『青い山脈』のテーマ・ソングのようだが、
まぁ年代がどうの……という話はともかくとして、
若く明るく希望に満ちた中学生達の声が、
前方のあちこちからサラウンドで聞こえてきた。

「赤い羽根共同募金、よろしくお願いしまーす」

彼ら彼女達の溌剌とした輝かんばかりの表情が、
どんよりショボショボなオトナとして日々を過ごしてる俺には、
ひどく眩しいように感じられる。

俺にもあったよなぁ、ああいう時代。……たぶん。

わが身を振り返って、自然とうつむきたいような気分になった。
どこまで汚れたオヤジになっちまったんだ? ……と。
卑屈になって無視を決め込むこと自体、清く正しくはないわけだが、
これ以上みじめな気持ちにさせられたらたまんねーとばかりに、
俺は急いでその前を通過しようと試みた。

「赤い羽根共同募金、よろしくお願いしまーす」

俺はこうした場合、どーゆーわけかヒジョーに捕まりやすい。
まぬけヅラをして歩いてるのだろうな、ほぼ間違いなく。
インドの路上をベルギー人とスイス人とアメリカ人とイタリア人と
皆一緒に歩いてるときだって、物乞いの皆さんは俺に集中した。
日本でも繁華街を歩くと、いつの間にか、
俺の手元にはチラシとかが何枚もたまってるし。

「赤い羽根共同募金、よろしくお願いしまーす」
「よろしくお願いしまーす」

3人組の女子中学生の前を通りかかったとき、
そのうちのひとりと目が合った。となれば覚悟を決めるしかない。

俺はジーンズのフロントのコイン・ポケットに、
買い物をしたときのオツリをポイッと入れる癖がある。
さっき煙草を買ったときのオツリ、170円ほどが入ってるはずだ。
今どきの “赤い羽根共同募金” の相場が
いったいどれくらいかは知らないけど、だいじょーぶかな?

「えーっと……ポケットに入ってる小銭ぜんぶでいい?」
「はい。ありがとうございます。もちろんです」

おー。すっごく素直だ。屈託もない。目がキラキラしてる。
社会だとか未来だとかに大きな希望を抱いて疑わない笑顔。
よしよし。そのまま真っ直ぐ育つんだぞ。

……誤解のないように申し上げるが、
俺にはロリコン系だとか制服系の趣味ないからな。

「じゃあ、これ。少ないけどゴメン。みんな、がんばってな」
「わー! こんなにいいんですか? ありがとうございまーす」
「すごーい! ありがとうございまーす」
「ほんとだー。ありがとうございまーす」

たった170円でこんなに喜んでくれ……ん? ぬおおおおおっ!

彼女たちに向けて差し出した俺の手のひらの上には、
500円硬貨が1枚余分にのっていた。
思い返せばついさっき、俺は小銭を持ってなかったから、
1000円札で煙草を買ったのだった。

赤い羽根1枚に670円……。
だが、オトナがコドモにウソをつくわけにはいかない。
それだけは絶対にしちゃいけない。……くぉーっ!

「あ。これ。裏のシートをはがして左胸に貼ってくださいね」
「御協力ありがとうございましたー!」
「ありがとうございましたー!」

俺は少女達にニコッと穏やかな微笑みを向けたつもりだったが、
きっと引き攣ってただろうな、大なり小なり。

ふむ……。でも、まぁ、あれだな。
ネタを670円で買ったと思えば安いもんだろ。うんうん。
そう考えた俺は、さっそく昔からの悪友に今の出来事を電話した。

「あー、何? もしもし? 魔界・墓・共同墓地? って何なんだ?
 あのさー、つきあってる暇なんかねーんだよ。ばーか!」

……ヤロー。いったいどーゆー器用な耳をしてる?
どうすれば “赤い羽根共同募金” が、そう聞こえるんだ?

呆れながらとぼとぼと仕事場まで戻った俺は、
たまたま通りかかった姉妹誌『 NEKO 』の編集部にあった
靴下にゃんこ』のオデコに赤い羽根をペン! と貼り、
旗本退屈男=サオトメモンドノスケに変身させて気を晴らすと、
席について黙って大人しく仕事をすることにした。

素晴らしい1日だった。うん。……うんうん。

2008年10月 1日

おもしれーじゃねーか!

うむ……くっそー。
80点にも到達できねーのかぁ……くっそー。
どうにも日本車系の、それも新しめのネタとかがくると、
ちょっと呆れるほどダメダメだよなぁ……くっそー。
指が太いから、焦ってボタンを押し間違えるし……くっそー。

……いや。

クチ汚く悪態をついてるからといって、
機嫌が悪いわけじゃない。
むしろ、どっちかっていうと、俺は楽しんでる。

何をって?

ケータイでアクセスしてチャレンジできる、
『クルマだいすき検定』である。

キッカケは実に俺らしく、ハッキリと “出来心” だ。
この締切ウィークの間、忙中閑ありというか、
まぁ現実逃避だな、現実逃避。正直に白状するならば。

ちょっとした調べ物をしたくて
ホビダスオートのトップページを開いたときに、
いきなり目に入ってきた右側にあるバナー。

チャレンジャー募集中! クルマだいすき検定

なにぃ? と思ってクリックしちゃったのが運の尽きだった。
半月前に換えて、機能が多すぎて使い方が解らないケータイで
何とか目的のQRコードを読んでアクセスをして、
お試し問題にトライしてみたら1問だけ間違えた。
それが悔しかったから本格的に登録して、
いきなり “検定” とやらにチャレンジしてみることにした。
最初は初級編なわけだけど、その結果が冒頭の悪態なのである。

初級編なのに……80点にも至らない。
ダメじゃん……俺……。

この『クルマだいすき検定』は、
それこそクルマが好きならばさすがにこれくらいは知ってるだろ?
というような実に初歩的な問題から
「マジすか?」と驚くトリビア的な難易度の高い問題までが
レベルに合わせて次々と出題され、
毎月1回チャレンジできる “検定試験” の結果次第で
自分のランクが上がっていく、というモノだ。

その内容は歴史的な事柄や国内外の自動車メーカーに関すること、
交通、メンテ、モータースポーツ、人物などなどかなり幅広く、
自分の得意分野と苦手分野がハッキリ判るのもオモシロイ。

肩ナラシ的練習問題としての “ドリル” だとか
本格的な勉強としての “ジャンル別問題集” なども用意されていて、
それを4択から解いていくだけでずいぶんと勉強になる。
……ということは、いきなり検定にチャレンジした俺は
ウツケ者もいいところだった、ということだ。
得点が思いのほか伸びなかったのは、
この太い指のせいだったってこともあるのだし。

かなり楽しいし、クルマ好きゆえ意地にもなる。
悔し楽しいから続けてみようかなぁと思う。
ケータイで遊べるわけだから、
移動中なんかでもコッソリとアクセスできるわけだし。
1ヶ月315円の有料課金サイトではあるけれど、
考えてみたら缶コーヒー3本ぶんより安いしなぁ。

それにしても結構マニアックなクエスチョンもあって、
これをつくったヤツらはオタクに違いないと思ってたら、
何とっ! マジメにビックリしちゃったのだけど、
“監修 ネコ・パブリッシング” って文字が
画面の下の方に書いてあった。俺はちっとも知らなかった。
フジテレビ系のモノなはずなのに、どーして?

……と、社内の裏ネットワークを通じて調べを入れたら、
ホビダスオートの編集長であるエド新井が
クエスチョンをつくるのを手伝ってたらしいことが判明した。

あの男、無駄にモノ知りだしなー。
ひっかけ問題を簡単につくりそうな意地の悪さも持ってるし。
おまけに的中率およそ93%の強烈な雨男だし。

そんなわけでしばらくの間、
エド新井の意地悪+太い指と戦うことにしたわけだが、
これ、マジメにおもしろいから皆も一緒にどう?

ちょっとマジメにオススメしたい気分になった、
締切ウィークの現実逃避タイムなのだった。