自宅でコーヒーなど淹れて読書をしてた、珍しく落ち着いた夜。
ケータイにいきなり電話がかかってきた。しかも英語で。
俺は何とかカタカナ ──それも相当オソマツ君なレベル── で
応答したのだけど、その内容はこんなモノだった。……たぶん。
「トモユキ、久しぶりだね。どうせ元気なんだろう?
実はさ、僕は日本に来てる。驚いただろ?
今、成田のホテルにいるんだけど、明日帰っちゃうんだ。
約束どおり着いてすぐに電話しようと思ったんだけど、
君の電話番号、今になってやっと見つかったんだよ。
メモを荷物のいちばん奥に入れちゃってたみたいで、
お土産を詰め込もうとバラバラにしてたら出てきたんだ。
明日の朝、会えるかい?」
こいつ、俺のこと、暇人だと思ってるだろ、絶対に。
この男はとある国の同業者みたいなもんで、初めて会った日から
「日本に行ってみたいんだ。行ったら絶対に連絡するから」
と言っていた、日本に妙な興味の持ち方をしてる変なヤツだった。
仕事では要職に就いてるくせに、俺と仲良くなっただけあって、
どことなく……というか多方面に向かってヌケている。
「PC 持ってるならメイルくれたらよかったのに」
「おー! それはいいアイデアだ」
「俺のやってる雑誌の名前を覚えてたなら、
本屋さんで番号を見て、仕事場に電話すればよかったじゃん」
「おおお! そういう方法もあったね」
いったいどこまで本気でどっからヌケてるんだ? と不思議に思う。
でも、さすが母国語はもちろん英語も完璧に話し、
フランス語とイタリア語も日常会話程度は楽にできる語学の秀才、
数ヶ月前に出逢ったときは「こにちは」「ありがと」くらいだった
日本語が、ちょっとばかり話せるようになっている。
俺をビックリさせようと思って電話では英語で通したみたいだが、
出張にひっかけたお忍び旅行のこの3泊4日の滞在の間、
彼はなるべく日本語を使うように心がけたらしい。こんな具合に。
「わたし、ガイジン、みんな、だから、やさしい」
文法とかはめちゃくちゃだし、ときどき意味不明で妙ちきりんだが、
俺と一緒のときだって誰に対しても日本語で質問しようと試みるし、
解らない言葉が出てきたらニコニコしながら判るまで訊く。
「これ、どうする、つかう、ですか?」
「……ん?」
「えっと……わかる、したい…… How to use……」
日本語の「えっと」の使い方をマスターしてるのには
ヒックリ返りそうになったのだが、
こうした努力が自然にできるということにはただただ感服、である。
そうじゃないから、俺はいつまで経っても、
ちっとも英語を話せるようにならないんだな、と思った。
努力をしてない自分を反省しなければならない。うんうん。
だってこの男、英語はともかくとして、
他の言葉は全て独学で身につけてきてるのだ。
というわけで、もうすでにお判りのように、
朝もはよから成田空港の第2ターミナルまで
その男に会いに行ってきたわけだが、
分かれる直前にお茶を飲んていたあるカフェの前で、
俺はちょっとばかしオモシロイものを発見した。
そのカフェはフランス風の雰囲気とメニューが売りで、
味もなかなか悪くないのだけれど、
店内と店の前の通路に飾られた “パリの風景” を描いた絵、
それを見て、彼はいきなりニヤニヤ笑い出したのだ。
日本語と英語のちゃんぽんによる彼の弁を要約すると、こんな感じ。
「トモユキ、これはシャンゼリゼ通りに思えるんだけど、
きっとパリにいったことのない人が想像で描いたんだろうね。
だって、凱旋門が中世の石の城みたいな雰囲気だし、
シャンゼリゼは道路であって広場じゃない。
全体の雰囲気としてはパリっぽいけど、細かいところは全然違う。
だいたい、今のシャンゼリゼ……いや、パリのカフェで、
アコーディオン弾きなんて見たことあるかい?」
確かに彼の言うとおりかも。メトロの車内のゲリラ演奏家か
ちゃんと認可を受けて駅の構内で演奏してる人くらいしか、
俺はアコーディオン弾きを見かけたことがない。
少なくとも、昼間のカフェにはまずいない。
だが、実のところ、俺は別のモノに目を引かれていたのだ。
通路の絵のかたわらに飾られていた、1枚の写真である。
おそらくそれは30年近く前に撮影された、
明らかにシャンゼリゼ通りから凱旋門を眺めた風景。
そこに写っているクルマ! これがとても興味深かったのだ。
一番上の写真パネルがそれなのだけど、
手前をこっちに向かってきてるのは、ルノー・キャトル。
そして……。
車線の真ん中辺りを凱旋門に向かってるのはシトロエン GS だろう。
道路のド真ん中に駐車(!)してるのは、 CX に違いない。
それに中央の向かって左側……。
ゴルフの GTI の左側は、すげー! サンク・アルピーヌだ!
その後ろにチラッと写ってるのは、アルファ・スパイダーか?
もちろん声を出して騒いだりはしない。オトナだから。
だが興奮してたのは確かだから、もしや顔が変わっていたのかも。
隣にいた彼が、たどたどしい日本語で、こう言った。
「トモユキ、日本語は、これ、のときは、
あなた “へんたい”、という、正しい、ですか?」
「ん……んん………」
マジメに日本語を勉強してる “ガイジン” に、
誰だか知らないけど、変な言葉を教えるなよなぁ……もー。
と言うか、誰かに「あなた、へんたい」といわれた君は、
いったい日本まで来て何をしてたんだ?






コメント (11)
変態ブラザーズ弟殿。
ごめんごめん。コメントもらってたのに気がつきませんでした。
外国人に「こなさん、みんばんは」と教えるなんざぁ、
ちょっとただ者ではないですな。
俺はドイツ人に「日本語で一番便利な言葉を教えてくれ」といわれ、
「うーん……“どーも”だな」と教えたことがあります。
今でも正しいことをしたな、と確信しております。
投稿者: Tipoの嶋田でーす! | 2008年11月25日 15:09
日時: 2008年11月25日 15:09
と言いつつも昔怪しい日本語を外国人に教えた事があります(笑)
イギリスからやってきたミュージシャンのブラザー達に、伝統的な日本のギャグだと言って『ガチョーン』や『コマネチ』などを教えたり。
スネークマンショー的なMCの『こなさんみんばんは、いうこそよらっしゃいました』なども教えました(笑)
投稿者: 変態ブラザーズ弟 | 2008年11月23日 10:15
日時: 2008年11月23日 10:15
AOP.サトウさま。
そういうことにかけては日本のレース界は最高峰みたいなもんで、
毎年ウデを見込まれて海外からやってくる若手ドライバーは、
大抵の場合、簡単に餌食にされます。
昔、某選手権の開幕戦の決勝前のグリッドで、
すれ違う女の子という女の子に、かなり爽やかな表情で、
「おっきい、お●ぱい、たべたい」と挨拶(!)してた
外国人ドライバーがおりました。……かわいそーに。
きっと「挨拶の言葉を教えてください」って誰かに訊いたら、
それを教わっちゃったんだろうなぁ……(^^;)
レース界にはそういう冗談が好きな人、多いんです。マジで。
投稿者: Tipoの嶋田でーす! | 2008年11月22日 18:29
日時: 2008年11月22日 18:29
うちの会社でも、へんな日本語(誰か教えた?)
を話す外国人います。変態なんかあたりまえ、
(SUKEBE)など、○禁な言葉まで話しますもんね
こりゃー教えるほうがわるいわな~
誰だこんな日本語教えたのは~~!
投稿者: AOP.サトウ | 2008年11月22日 12:37
日時: 2008年11月22日 12:37
いち殿。
ウチのナカジー辺りは手を切ったりすると緑色の血が出てくるので、
間違いなく彼は“へんたい”だと思うけど、俺は違います。
ただ、ヒトよりちょっとクルマが好きなだけで。
それに俺は “不良中年” ではないけど……いいねぇ、スパイダー。
俺も大好きです。アルファ・スパイダーは全般的に。
で、何年式? もうオーダーしたの?
投稿者: Tipoの嶋田でーす! | 2008年11月21日 19:41
日時: 2008年11月21日 19:41
嶋田変酋長 どの
変態バンザイ!
Tipoの作り手・読み手は間違いなくヘ・ン・タ・イです。
あ、チーム不良中年のワタシ、アルファスパイダー(Sr3)買うことにしました~。
投稿者: いち | 2008年11月21日 18:13
日時: 2008年11月21日 18:13
変態ブラザーズ弟殿。
いやー、自らを「変態」と名乗る君に“へんたい”扱いを
されると複雑な気分になりますな(^o^)
ちなみに彼は、他にも悪い言葉をどこかで教わってきたらしく、
先行きがちょっと心配になりました。
でも、実に教養も高いし何せ頭がいいくせに努力家なんで、
いずれマトモな日本語をぺらぺらを話すようになるでしょうね。
ヨネルト君。
実は君のブログでのチンクエチェント探しが頭にあって、
それで壁の写真を眺めちゃったりしたようなところはあります。
俺は年齢的には避けようもないくらいオトナなのですが、
少年から学ぶこともたくさんあるんだなぁ……と思いました。
くるきっつぁん。
実のところを明かすと、これ、ここ2〜3日の出来事じゃないんです。
それに、今はまだまだ“校正作業”にかかれるほど
進行してる時期でもないんです。ウチの場合。
ところで、俺は“不良中年”ではないので何ともいえませんが、
いよいよ次の愛車が納車になるんですね? おめでとさんです。
……で、いったい何にしたの(・。・?
マリコさま。
世界的な「へんたい」(・◇・? 俺が、ですか(@_@?
いやー、そうだったのかぁ……知らなかった……。
そーだったのかぁ……。
投稿者: Tipoの嶋田でーす! | 2008年11月21日 01:59
日時: 2008年11月21日 01:59
嶋田さんにはナイスなフレンドが
いるのですね~(^o^)
私も会いたかったな!
突然の連絡と会う約束は少し大変ですよね☆
お疲れ様でした!!!
私のところにも10月に
ドイツからドイツ人の友人が来て、
名古屋を案内したら・・・
とてもくたびれました・・・
嶋田さんは世界的に「へんたい」なのですね(^o^)
大丈夫です!!「変態」は誉め言葉ですから☆
嶋田さんにとってとても名誉なことです(^o^)
私も今度嶋田さんのケイタイにお電話する
予定です☆(番号は知りませんが)
(ところで、前回の書き込みは
「カローラ」ではなくて「クラウン」の
間違いだったかと・・・
トヨタは今大変らしいです・・・)
投稿者: マリコ | 2008年11月21日 01:04
日時: 2008年11月21日 01:04
この時期に自宅で、ゆっくりできるということは、今月の校正作業はスムーズにいってるということでしょうか?
外国で日本の文化が間違って認識されてるように、日本も外国の文化を間違って認識しているかもしれませんね。
来月中旬、新たな変態(不良中年)候補車が我が家にやってきます。
投稿者: くるきち | 2008年11月21日 00:52
日時: 2008年11月21日 00:52
もちろん声を出して騒いだりはしない。オトナだから。
…僕の場合は、なんでも声が出てしまうのでまだまだ子供なんですね(^^;
あっちの写真は凄いですよね。変態なクルマばかり写っていて。むしろそれが普通なんですね。
投稿者: ヨネルト(元695SSです) | 2008年11月21日 00:00
日時: 2008年11月21日 00:00
そりゃ変態だ(笑)
それにしても、外国の方々ってたまぁに突拍子もない日本語を使うときがありドキッとしますね。
投稿者: 変態ブラザーズ弟 | 2008年11月20日 21:06
日時: 2008年11月20日 21:06