ちょうど1週間ほど前の3連休のド真ん中、
俺は殺人的な人ゴミの中を歩かにゃならないハメに陥って、
晩秋だというのに脂汗を浮かべてた。
日曜日の昼間に原宿の竹下通りに出向くことなんて、
普段の俺ならば絶対に考えられない。
この道の両サイドに居並ぶ店には用なんてまずないし、
そもそも人ゴミってのが得意じゃない。
せっかちな方じゃないからワガママなだけなのだろうけど、
自分のペースで進めないことがまず嫌だし、
周囲からゴンゴンと手だの肘だの荷物だのといったモノが
ところ構わずぶつかってくるのも好きになれない。
正月の初詣あたりならともかく、この竹下通りなんかだと
周囲から聞こえてくる言語がまたツライ。
外国語だったら耳を素通りしてくれるからまだいいが、
同じ日本語なのにどういうわけか理解できない
妙な若者言葉が耳に飛び込んできて苛々させられるからだ。
普遍的に正しい日本語、なんてものが存在しないことは解ってる。
例えば江戸時代と今が異なっているように、
言語が時とともに変化していくのは自然の流れなのだ。
だから「言葉が乱れてる」なんて責めるつもりもさらさらない。
ただ、ちょっとばかり疲れるだけで。
じじぃ、だな。これじゃ。まるで。うん。じじぃ、だ。
ともあれ、周囲にいる人達のおよそ70%が10代の若者という中を
周りに合わせてノロノロと這うようにして進み、
左側にセブンイレブンがあるところを右折する。
これが置かれてる建物の前に出て、少し落ち着いた。
ここの4階が目的地、『 Parms Luxe 』。
友人のやっているヘア・サロンである。
そう、俺は髪を切ってもらいにいったのだった。
ここの経営者でありトップ・スタイリストでもあるのは、
海外では “トシ・ソメヤ” として知られている染谷 太さん。
某大物女優さんが都内のテレビ局で仕事をするときには
必ず本人から呼ばれてヘア・メイクを担当したり、
名前を言えば誰もが知ってて誰もが驚く
ヨーロッパの “超” 有名ブランドから指名されて
パリ・コレクションやミラノ・コレクションで
スタイリングを担当したりと活躍そのものは華やかだけど、
自身はよっぽどのことがない限り
声をかけられてもテレビ番組などに出たりはしない。
「美容師ですから」という口癖に誇りと分別のこもった、
地面にしっかりと足がついている人である。
だから、どこかで見たようなタレントさんやモデルさんが
お忍びで来てるようなサロンなのに、
俺のようなフツーのオヤジだって分け隔てをしたりしない。
彼はいわゆる “カリスマ美容師” のひとりなのだが、
彼のそれはメディアによる御都合主義の無意味な称号と違い、
技術と人柄を慕う莫大な数の後陣達の中から
自然発生的にその呼び名が浮かび上がってきたことによる。
写真の向かって左から2番目がソメヤさん。
実はスゴイ人だったというのは親しくなるに従って
ジワジワ実感したことで、彼は俺のクルマ仲間なのである。
ソメヤさんは頑張って稼いだ分を、
きっとほとんどクルマに注ぎ込んでる。
所有してるのは 348ts にスーパーセヴンに、E36 M3、
レース仕様に仕立て上げた 200PS オーバーのカプチーノと
同じくレース仕様のアルト・ワークス。
911 はナローと 930 と 964 を乗り継いでたっけ。
そうそう。忘れちゃいけない。ダイハツ・ミゼットが足だった。
彼は10代の頃にオートバイのレースをやっていたこともあり、
今ではクルマのサンデー・レースに思い切り熱中してる。
BMW カップでは M3 でクラス・チャンピオンにも輝いた。
スーパーカー世代であり、目標はカウンタック、なのだそうだ。
ただし、一度カウンタックの購入が見えてきたタイミングで、
彼はスッパリそのチャンスを見送っている。
ロンドンで開催される世界最高峰のヘア・ショーの主催者から
「出場してくれ」と連絡が入り、
上級のスタッフ達には大きな舞台の現場での経験を積ませるため、
若いスタッフ達にはロンドンのモードを勉強させるため、
20人近くをイギリスに連れていき、滞在させ、
カウンタック予算の大半をそっちに回すことにしちゃったからだ。
「惜しいことしちゃったねぇ」
「いえいえ、こんな大きな舞台はそうあるもんじゃないですから。
スタッフ達には “今” 勉強できるチャンスが大切ですけど、
カウンタックは一生に何回でもチャンスがあるでしょうし」
うーむ。これがカリスマと呼ばれる理由なのだな、と思った。
こういう人物の下ならヒトは育つ。
だからソメヤさんのところのスタッフの皆さんは
ホントに気持ちよく接してくれるし、仕事も実にていねいだ。
通っているうちに彼らがいろんな意味で伸びてるのも判る。
ちなみに、俺なら迷わずカウンタックを選ぶ。
だからウチのスタッフは……うむ……ヤメとこーっと。
みんな好き勝手に育ってるし。たぶん。
そういうわけで、髪を切ってもらっている間、
ソメヤさんと俺はほとんどずっとクルマの話ばかりしてる。
飽きることってのがないのだな、これが。
仕事でするクルマの話ももちろん楽しいし幸せなのだけど、
プライベートな時間にするのはその何倍も楽しい。
俺にしてみれば身だしなみを(しかも一流の人に)整えてもらえ、
たっぷり楽しい時間をも過ごすことができるわけだ。
ソメヤさん。いつもいつも、どーもありがとう。
次はムラサキウニみたく針が長くなっちゃう前におじゃましますね。
普段は夜、人ゴミがなくなった頃合いばかりなのだけど、
こういう時間って大切だな、といつも感じる。
ホコテン解除で近くまでクルマで入れる時間帯と違って
俺にとっては人生の荒波より厳しい人ゴミに揉まれ、
行き倒れするかと思ったが、でも辿り着いた甲斐はあった。
そういえば髪を切ってもらってソメヤさんの店を出た後、
俺にしては恐ろしく珍しい場所にいるので、
“マドギワ通信” 用のプロフィール・カットでも撮るか……と
ケータイの内側カメラを起動したのだが、
自分に向けてシャッターを押そうとした瞬間、
後ろから何かがドカッとぶつかってきて、
おかげで写真はこんなである。
くっそー。頭の先しか写ってねーじゃねーか。
やっぱり俺は、人ゴミは大嫌いだ。






コメント (4)
変態ブラザーズ弟殿。
おりょ(・。・? ソメヤさんを御存知?
こりゃまた美容マニアですなー(^o^)
俺自身は“美容”とか“ファッション”だとかには縁もなければ
ちっとも詳しいわけでも何でもないんですが、
どういうわけか“美”の関連の仕事をしてる人物とは
やたら縁が強かったりするんですよー。それも個人的な関係で。
よかったらソメヤさんのサロンにもいってみてくださいな。
くるきっつぁん。
えー、俺の髪型は大抵の場合、ソメヤさんにオマカセなのです。
ばっさり切ってもらうか整える程度にしてもらうかを
決めるくらいで、あとは「よろしくおねがいします」って感じで。
今の佐藤正勝カメラマンいわく“弱火”頭あらため“ウニ型”も、
ソメヤさんの魔法のカットのみでカタチができてます。
俺は髪を洗った後にジェルをつけるだけ。
なので、伸び放題に伸びちゃうとカタチは崩れ、
まずそうな不揃いのムラサキウニ、みたいになっちゃうわけです。
昔、ロン毛にしてたのは、忙しくて切ってもらう時間がなくても
あんまり世間様にはバレないですむ、という理由からでした。
今はもう、それができなくなっちゃった、というワケですな。
ヨネルトくん。
俺は高校生ぐらいのときには人ゴミ、嫌いじゃなかったですよー。
トシをとって「ヘンクツだねー」といわれるようになった頃から
嫌いになったみたいです。
キミも「ヘンクツ親父」になれる才能、たくさん持ってそうですね。
ちなみにハイエナ・ザガート、乗ったことありますよー。
動きが軽くてさらに速いデルタ・インテグラーレ、
というような印象でした。で、何より……カッコイイ!
投稿者: Tipoの嶋田でーす! | 2008年12月 2日 00:46
日時: 2008年12月 2日 00:46
人ごみは大が付くほど嫌いです。
…いや所有してる車が凄いです。。。
カウンタックもいいですが・・・・ハイエナザガートもいいです♪
最近とても気になる1台です
投稿者: ヨネルト | 2008年11月30日 22:00
日時: 2008年11月30日 22:00
嶋田さんの髪型は匠の作品だったんだ・・・。
本当に凄い人は自分の仕事ができるだけでなく、後輩を育てることもできるということですね。
そんな染谷さんなら、またいつかカウンタックを持つ日がくると思います。
嶋田さんも後を背負ってたつ人材を育てないと。
投稿者: くるきち | 2008年11月30日 21:21
日時: 2008年11月30日 21:21
あの巨匠とお知り合いなんですね?
スゴいです。
しかもいかにも好き者な選択の車歴ですね。
投稿者: 変態ブラザーズ弟 | 2008年11月30日 15:26
日時: 2008年11月30日 15:26