ノートルダムからメリー・クリスマース!
Merry Christmas!
聖し、この夜。
みんな、楽しい夜を過ごしてるかな?
そろそろワクワクしながら枕元にクツシタをぶらさげて、
ベッドに潜り込んだりしてる頃なんじゃないか?
まさか間違えて、使用済みのちょっと濃いめのヤツとかを
ぶらさげちゃったりはしてないだろうか……?
ちょっと心配だったりする。
ティーポでもお馴染みの “自動車生活コンシェルジュ” 、
“永遠の自動車ジャーナリスト見習い” であるイマイは、
日本にいるときですら「穴があったら埋めてやりたい」
と思わせる実力の持ち主だというのに、
ひとりぼっちのイヴを都内で過ごすのがイヤだったのか、
今はちょうど台湾ひとり旅に出ているようで、
わざわざ海へ行って波に飲み込まれてもんどりうったり
足を負傷したりとインターナショナルに笑いを振りまき、
“永遠のサーファー見習い” に変身してるが、
俺はといえば、イマイの喧しさとは180度趣を異にして、
今、とっても敬虔な気持ちを胸に湛えながら、
おそらく世界で最も有名なカソリックの大聖堂の前にいる。
パリのシテ島にある、ノートルダム寺院である。
年末進行の締切をあたふたと片付けて、
それから大急ぎで成田に向かい、
乗り遅れそうになりながらも何とか飛行機に乗って
イヴの日に間に合った。
街が教会だらけのパリでは、このイヴの晩、
日付けが変わりそうになる時間帯を迎えると
あちこちから美しい鐘の音の輪唱が聞こえてくる。
とりわけ教会密集地といえるカルチェ・ラタン辺りでは
トーンの異なる幾つもの鐘の音が
あちこちから渦のように混じり合って、
立ち止まって目を閉じてみたりすると
呆気にとれられる以外にできることがないほどの
美しい混沌に放り込まれる。
それを聴くためだけにここまで飛んでくるほどの価値がある。
「忙しいぞぉー」とか言い放つだけ言い放って
この “随筆” の更新が滞っちゃっていたのには、
実はそんなワケがあったのだ。黙っててゴメンなー。
ともあれ、この時期のノートルダム大聖堂の前の広場には、
毎年恒例の大きな大きなクリスマスツリーがそびえ立っている。
写真で見るとちんまいミニ・ツリーみたいに思うだろうが、
これでも高さ20mくらいはあるのだ。
この大聖堂がどれほど巨大か、一発で判ろうというもんだ。
ゴチック建築を代表する建物の外観はもちろん、
ここは中に入ってもどこもかしこも荘厳で、
訪れた人間に “教えはかくも崇高なものである” ということを
威圧感をもってして植え付けようとし続けてる。
宗教はこうして民を絡め取ってきたのだな、と感じたりもする。
今、クリスマスツリーの前にいるのは、
ほとんどが俺と同じツーリストばかりである。
地元の人達は、イヴは自宅で家族と一緒に過ごすことが多い。
日本の元旦と似ているかも知れない。
イヴの日は大抵の店が休業するか、
あるいは午後になると店じまいをして聖なる夜に備えるので、
俺のような異邦人は若者達のために開けているカフェや、
違う信仰を持った国をルーツとする人達のための店に入って、
イヴの晩のディナーをとることになる。
いずれにしても、目の前にいる他国から来た家族連れや
カップル達は、とても幸せそうだ。
めちゃめちゃ寒いのに、誰もが微笑みを浮かべてる。
この場所だけでなく、誰もが微笑みながらイヴの晩を過ごし、
ちょっと羽を休めて、またがんばるぞぉー!
とポジティヴな気持ちになって再び歩き始められたらいいな、
と心から感じてる。……なぁーんてね。
……ウソ。
真っ赤なウソ、である。わはははは。
何せほんのちょっと前までネコ・パブリッシング・ビルの5階、
できることなら入りたくない社長室にいたくらいだし。
いや、呼び出されて怒られてたわけじゃないんだけどね。今回は。
とにもかくにも、今、俺はこうして東京都の目黒区の片隅にある、
途方に暮れるくらいに散らかり放題な自宅で澱んでる。
写真は2月にレトロモビル取材のためにパリに寄ったときに
パパッと撮ってきたもんなのだった。実のところ。
だって、11月半ば過ぎくらいから2月の半ば過ぎくらいまで、
ずっと飾りっぱなしなんだもん、このツリー。
ちなみに今夜はまったくもってイヴの晩なのだが、
俺はキリスト教史の一部にはちょっと興味を持ってるものの
個人的な信仰が具体的な宗教の中にはないってこともあるし、
お祭りとしてのイヴの晩を楽しもうにも手遅れで、
ディナーはパッパと手早く野菜を刻み、
生姜醤油に浸けておいた豚肉を焼いてすませた。
オナカいっぱい。気分はだいぶポジティヴである。
なぜこんな簡単なモノがこんなにも不味くつくれるのか、
わがことながらどんなに考えても理由が判らないのだが。
ともあれ、メリー・クリスマス。
少しだけ羽を休めたら、今年のラスト・スパートだ。
きっつい時代だけど、みんな、がんばろーなー。



