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2005年06月21日
Q:フランク・ミュラーの人気モデル「ヴェガス」の構造ってどうなっているの?
A:実は計算され尽くされた非常にシンプルな機構なのです。

1999年に発売され、ルーレット機構という奇想天外な発想で瞬く間に世界中の注目を浴びたフランク・ミュラーのヴェガス。しかし、コレほどまでに注目されるヴェガスもその機構については意外と知られていない。そこで、恐れ多くも分解を敢行し、その驚愕のシステムを解説しよう。
<ルーレットのデバイスの仕組み>



ルーレットデバイスのプレートは技術者によってひとつひとつ丁寧にペルラージュ仕上げを施されている。ジャンパー類もビーチ材(ブナの木)のディスクを使った鏡面仕上げの面取りがされ、高級ブランドの名に恥じない仕上げだ。こういう仕上げはひとりの技術者で1日に10~20個が限界。スイスの時計工場では日本と違った時間がゆっくり流れている。


ルーレットを作動させるプッシャーを仕込んだ特殊なプッシャー付きクラウン(リューズ)ですべての操作を行う。これは巻芯と同軸上に位置する【上写真2点】。


プッシャーを押し込むと【写真左】にあるスターターが押し込まれる。押し込まれることによりスターター先のフレキシブルな爪はスターホイール下部のカナを勢いよく瞬時に一段だけ送る。ジャンパー【写真右】によってテンションをかけた状態にあるので勢いが付くのだ。



その際に長く伸びたスターホイール【写真左】の6枚の歯先の内1枚がルーレット針の固定されたローテーションディスク下に取り付けられた歯を勢いよく送って回転させるのだ【写真中&右】。ベアリングの力も加わって凄いスピードで回転し始める。



スターターにはルーレットの針を停止させるための爪【写真左&中】があり、プッシャーを手放すとローテーションディスクの歯と噛合い瞬時にストップさせる。ローテーションディスクの歯は文字盤上のルーレットの数字分けが37個であることに由来し37枚の歯が設けられている。この数を合わせることによって、ストップさせた際にルーレットの針先が行儀よく文字盤上の数字枠に納まる設計だ。
注目すべきは、送った爪がスムーズに元に戻るようにスターター上にスプリング【写真右】を利用した『逃げ』が細工してあることだ。私はこのさほど重要でないにもかかわらず、わざわざ無垢材から削り出されたスプリングのコストのかけ方に驚いた。平らなスプリングで済ませればどれだけ安く済むだろうか? この部品の作りはジュネーブシールの時計製作の厳しい規格をも満たしている。



ひと通り機構を解説してきたヴェガスのルーレットデバイス一式【写真左】は、ベースとなるムーブメントの文字盤側に2階建て構造で取り付けられている。【写真中&右】
以上が、世界を熱狂させたヴェガスのルーレット機構のシステムだ。いつもながらフランク・ミュラーが作り出す付加ファンクション時計は、10数点のパーツで複雑な技をこなす。まったくもって感心させられるものだ。
2003年秋の時点で自らの名を冠した社を退いたとされるフランク・ミュラー氏。しかし、その後もクイレジーアワーズなど、遊び心に満ち溢れた時計を発表し続けていることは、我々腕時計愛好家にとって嬉しい限りである。
投稿者 watchsensor : 2005年06月21日 17:47

