田舎に帰るたびに楽しみにしていたことの1つが、「あやめ団子」を食べることだった。「みたらし団子」同様、場所によって異なると思うのだが、私の故郷、富山の「あやめ団子」とは、少しあぶった団子に黒糖の蜜をまぶしたものである。とりわけ、自宅の裏にある餅屋が作るものが好物だったが、独り者だった店主がが少し前に亡くなった。他の店のものをいろいろ試してみたが、「あの味」ではない。とは言え、黒糖の味そのものが好きなので、黒糖と聞くと取り敢えず試してみたい衝動にかられる。
そんな折、知ったのが京都紫野の老舗料亭「和久傳(わくでん)」の和菓子「西湖(さいこ)」である。西湖はレンコンを精製した蓮粉、和三盆、和三盆糖蜜で作られた弾力のあるゼリーのような食感の菓子。熊笹で包まれており、香りも良い。
名も無きあやめ団子と比べられては銘菓も甚だ迷惑だろうが、自分の中で失われた「あの味」を満たしてくれたのは西湖であった(西湖は東京でも百貨店で手に入ります)。


