現ちゃんの思い出 その2
上田 現ちゃんにまつわる昔話つづき。前回、前々回でも書いた「カツ丼」の夜に二人で試行錯誤したもう1つのモチーフが、永くレピッシュがライヴで演奏しているスカ・ナンバーの1つ、「MAD GIRLS」のサビ部分です。私が持ち込んだのはサビ部分のメロディ・ラインそのもので、現ちゃんはそれに生ピアノでコードを割り振ってくれました。当時の現ちゃんの部屋にはティアックのオープンリールがあり、前回書いた「水門」のベースラインと共に、録音したことを覚えています。この「MAD GIRLS」のサビ部分は、この後2年間ほど、現ちゃんの部屋で惰眠を貪ることになります。
その後、現ちゃんが率いたバンド、「エレベーター」は自然消滅、紆余曲折を経て、現ちゃんはレピッシュに加入することになりました。これでベーシストが私である以外は(これが大問題ですが…)、メジャー・デビューした時のメンバーが揃うことになったのです。時に1984年末のこと。これ以降、現ちゃんはレピッシュという媒体に相応しい楽曲を少しずつ書いていくことになりますが、ここではくだんの「MAD GIRLS」という曲がいかに生まれたのかを書いておこうと思います。
実はこの曲は、当時私が書いた「MAD DOG」というスカ・ナンバーが元になっています。この曲、ライヴでも1~2回演奏した記憶があるのですが、曲も詩も当時のバンドの方向性と微妙に合わず、私自身が「お蔵入り」にしようと決めた曲でした。しかし現ちゃんが、「俺がこの曲を直してみる」と言ってくれました。そしてコード進行やメロディなどを根本的に見直してきてくれたのです。その直したバージョンを最初に聞かされたときに驚いたのは、「カツ丼」の夜に二人で録音し、そのまま放置していた例のメロディとコードを、サビ部分に持ってきてくれたことです。「これ、以前に録音したのをサビに持ってきた…」と現ちゃんは言いました。
「元々は山田の曲だったんだから、山田のカラーでまとめてやりたい」と現ちゃんは考えてくれたのでしょう。そのことが大変嬉しかった思い出があります。そしてこのバージョンに、ヴォーカルのMAGUMIが詩をつけて完成したのが、「MAD GIRLS」というわけです。この曲はこれまでに発売された、どのレピッシュのCDにも結局収められておらず、ライヴ専用チューンとして永く演奏され、ビジュアル・ソフトにのみライヴ版で収められました。
レピッシュを離れてから、15年近く経ったある日、「MAD GIRLS」が非売品の懸賞プレゼント用として、シングルCD化されたことを知りました。それからややあって、ドラムの雪好君を介してそれを入手。ジャケット裏のクレジットに、「作曲:上田現 & 山田剛久」の文字を見たときは、現ちゃんや他のメンバーの義理堅さに感謝する気持ちでいっぱいでした。
それから更に10年近い時間が経過してしまいました。かつての新宿ロフトも渋谷センター街の屋根裏も今や遠い昔の話。しかし、四十路を半ば過ぎた今でも、あの頃のことは大事な経験として自分の中にしまってあります。そしてまた、私のようにフェイドアウトすることなく、ずっとステージに立ち続けてきたかつての仲間たちは私の誇りでもあります。つまらん大人にはならんと意地をはっていた昔。あの頃の私は今の私を見て、なんと言うのでしょうか。


